地を駆けて。
私の日常が、誰かの非日常で。
私の非日常が、誰かの日常だったりする。
この世の中は、不思議な能力にあふれてる。
他の世界を知らないから、今の世界が変わってるかどうかなんてわからないけれど。
皆が何かしらなんかの力に秀でてて、それでいて羨ましかったり妬んだりしてる。
自分が無意識に欲しがったものが自分の能力になるから、たまに思うんだ。
「これって本当に私が望んだの?」
って。
でも望まなかったら形にならないし、やっぱりどこかで何かの切っ掛けで望んだんだろうなって思う。
分別もわからないままの純粋な幼いころの願いが形になったこの世界。
明日何が起こるのかわからないのがある意味醍醐味。
交渉能力にたけてる人を、交渉管理者。
言語理解に長けてる人を、言語管理者。
視力に関係なく、能力の限界までを視て認識する人を、視認管理者。
視認管理者には2つの系統があって、見るだけしかできない人と(視覚管理者)、それがなんであるかを知ることができる。
つまり認識することのできる人(視認管理者)っていうのがある。
私の周りでは管理者って呼ぶけれど、
それが別の地域や人々によっては管理者じゃなくって能力者ってよばれるって、誰かが言ってた。
要は、見るのか感じるのか知るのか、与えるのか受け取るのか。
自分は与える方なのか、与えられる方なのかで、色々と言葉が変わってくる。
日常もきっとちょっと変わってくる。
だから、これは私にとって単なる日常の続きでしかなかった。
友人が私の腕を引っ張る。
「ねぇ、地図のこの辺りで、なんか変なものから追っかけられてる人いるよ。
助けに行くんだったらその人先に助けてきてよ。もしかしたら探してる【視認管理者】の能力持ってる人かもしれないよ」
最近なぜか空からゲームとかで出てくるうようよとした。。。スライム とか呼ばれてるものが落ちてきてた。
だから【視認管理者】によって、それがどういうものなのか、どうして降ってきてるのかを知りたがってたんだけれど、残念なことに私の周囲には視覚管理者はいても、視認管理者はいなかった。
だから誰かそういった能力持ってる人知らないー?って聞こうかって話をしてた屋先に、都合よく困ってる人を、友人は空間認識能力で認識したらしい。
空間認識能力っていわば、常に地図を持ち歩いてなくちゃあんまり意味がないんだけれど。
私には単なる平面の地図に見えるものが、友人にはそれは立体的な箱庭に見える。って言う寸法。
その地図の中で何が起きているのかを漠然にしることができて、人を案内する事が出来る。
人によっては、指揮管理能力とも呼ぶらしいけれど、友人曰く「私は人に指示するだけの感知能力はないよ」って笑ってた。
どう違うのかよくわからないけれど。
「うん、わかった。ちょっと行ってくるよー。拾ってきたらまたここに戻るか、合図するねー」
じゃ、行ってきますって、友人に手を振って全速力で駆けた。
困ってる人がいるっていうなら、助けなきゃだし、その人を助けたら今度は私たちを助けてくれるかもしれないし。
私は友人のように、何が起こってるのかを感知する事は出来ない。
逃げてるらしき人のように、視ることもできない。
私ができるのは、ただ倒すだけ。
針から鉄パイプからサイズや重量って関係なしにそれを武器にしてしまえる能力。
先端が尖ってなくても触れて描いた通りにその先端が鋭利なものになったりとか倒すとか貫くにはいいけれど、普段生活するにはなんかあんまり役に立たない。
そりゃ、競技会での射的とかつまり的を当てて何かする系のものには、備品が必要ないからって、結構省エネタイプだよね。っていわれたりするけれど。
でもそれを当てるには、PTを組んでくれる視覚系能力者が居ないと話にならないから、やっぱり私の能力は、中途半端。
教えてくれた友人とは別の友人の声が聞こえる。
その友人の声はどこにいても通じる。脳裏に響くってこんな感じなのかなって思いながら、その声を聞く。
どうやら、空間認識能力で得る大体の位置関係を声で教えてくれるらしい。
「ほんと、便利だよね。”どこにでも伝わるSOS” って思えば。」
これから向かう場所にいる人も、いい人だといいなと思った。
空間認識能力で最大の弱点がある。
地図をベースに考えるから、その地図が古かったりすると、新しい道ができてたりするとそこまでご丁寧に修正してくれない。
だから最新の地図を持ち歩く必要があるって言うらしいんだけれど...
今回の場合もまたちょっと裏目に出たらしくって。
―直前になって大体その辺りっぽいけれど正確な場所は地図の範囲外だった―
って連絡がきた。
「ああもうやっぱりそうだよね、だからここからは探さなくっちゃ。私が私なりの目と勘で」
聴能力者には絶対に勝てないけれどそれでも、音を聞く訓練はしてきた。
どこから何が聞こえるのかとかずいぶん分かるようになってきた。
だから、私にとってのこの日常の延長線上で
誰かにとっての非日常的な現象がどこでできてるのかを適当にあたりをつけて突っ走る。
「待っててね、今から助けに行くから。 そして私たちもついでに助けてくれると嬉しいな」
走ることに集中し過ぎて目的の人物からおしかりを受けるまであと数十m。