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親友松島とGO配膳ロボット

 私という人間が何者であるか、もう少し知りたい人がいるのではないか、いたら嬉しいなと思うこの頃。

 

 最近の出来事を語ることで、私の輪郭をはっきりとさせていこう。

 

 これは人によっては最近の話。私は松島とファミリーレストランで向き合っていた。松島というのは、良く言えば私の分身、悪く言えば私の右腕だ。

 

 我々2人には期末試験が近づいていた。

 私の感覚では近づいているのは私たちであり、期末試験はそこにあるだけだ。

 

 松島の感覚は分からないため、最悪私が期末試験に近づき、期末試験が松島に近づこうとしているという構図になる可能性もある。

 

 もし、そこから期末試験を取ろうものなら私は松島のストーカーだ。そう考えると、期末試験を取らずとも、私は期末試験の陰から様子を伺うストーカーなのではないか。

 

 一方で私は松島のストーキングをする期末試験を捕まえようとする警察官という見方もできる。ならば喜ぼう。一気に公務員だ。


「みいこ、期末の勉強する気ねえだろ」

 松島は口が悪い。


「勉強する気にさせてみなよ」


「私の邪魔さえしなけりゃ、勉強してもしなくてもどっちでもいいよ」


「どっちでもいいなら勉強しようっと」


「ああ、するんだ。ちょっと見直した」


「見直すなら問題を全部解き終わってからにして」


「黙れる?」


 いかがだろう。この一連の会話から私という人間がどのようにして生まれ育ち、今に至るか理解してもらえただろうか。

 

 そんなことを話している間に、注文していた料理が運ばれてきた。可愛い猫のロボットがテーブルの横に止まり、私の頭上辺りを見つめている。私は幸せな気分になり、この時間が永遠に続けばいいと思った。


「早く取ってよ」


 松島はロボットの胸部から、ポテトが盛り付けられた皿を取り出す。すると、ロボットは私たちに飽きたのかすぐに向こうへ行ってしまった。

 

 松島のことを優しいと思った。


 私とロボットが相対していた時間は確かに幸福だった。けれど、このまま60年が経った後、ロボットが遠くに行ってしまったら、残された私は途方に暮れ、野原を彷徨するだろう。


 それは楽観視しすぎか。


 このファミレスが60年後もある保証はない。このファミレスを取り壊すことになった場合、私にファミレスの破片がぶつかって痛い思いをするかもしれない。

 

 松島は私にそんな辛い思いをさせないために、私とロボットの関係を絶ち切ってくれたのだ。悪者になるのは苦しかっただろうな。


 ロボットが自動扉を抜けて店から出ていくのを見届けてから、松島に向き直った。


「あのロボット可愛いな」


 私が言ったのかと思ったが、私の口は動いていなかった。まだ腹話術の可能性は残されている。


 松島と私の感想が同じことは珍しい。どれくらい珍しいかっていうと、今から譬えを考えるから、お茶でも沸かして待っといて。


 やっぱり思いつかないから言わない。


「どれくらい可愛い?」


「目に入れても痛くない位」

 絶対痛いのに強がっている松島は可愛かった。


「入れるなら鼻にしなよ」


「鼻はないだろ」


 松島はコンタクトレンズを装備しているから、目の中に何かを入れることに私ほど抵抗がないのかもしれない。私だったらどこに入れるか考えて、そんな答えの出ない問いを考えても無駄だと思ってやめた。

 

 松島は勉強を始めてしまう。私はポテトを一本つまんでから、天に向かって大きく腕を伸ばした。伸びをすると一仕事終えたかのような満足感が襲ってきて、勉強を十分した気になれた。


「私寝るね」


「何しにきたんだよ」


 その後は本当に寝てしまった。寝たくて寝たんだから、しまった、なんておかしいんだけどね。

 

 夢では松島とロボットが手を繋いで踊っていた。それを私は心から祝福する。目からは涙が溢れてきた。涙が落ちる先にジョッキを置いといたらすぐにいっぱいになってしまった。すぐに新しいジョッキと取り換えてくれたから良かったけど。


 その時、あの配膳ロボットには手がなかったことを思い出して、これが夢だと悟って瞼を開けた。

 

 私の横には配膳ロボットが停まっていた。


「呼んでおいたよ」


 GO配膳ロボットってこと?


 松島は拍手をしている。本当にワクワクさせてくれる相棒だこと。私の存在は松島なしには語れない。

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