初めまして、みいこです
3人の友と教室でジャンケンをしていた。グーとチョキとパーの3種類で勝敗を分かつあれだ。
ジャンケンのルールをいちいち説明するなんて、私も焼きが回ったな。
私とは誰か。紹介遅れた。高校2年生、みいこと申す。名字はまだない。
私にはジャンケンをする人たちがいる。そこには感謝をしなければならない。しかし、別の問題が現在進行形で発生している。
カラスが泣いていた。私だって泣きたいけど、カラスが泣いてくれるなら涙を我慢できると思った。私は泣かない虫だ。
一体何が起きているのか説明が欲しい。おそらく読者もそう聞きたいだろうけど、先に疑問を口にした私の勝ち。今の瞬間、話し手はあなたに変わる。主導権を譲ろう。
なんだかこの場面見たことがある気がする。
学校で授業中に活発な男の子たちが騒いでいると、それを見ていた先生が板書をする手を止める。それから、こう言うんだ。
「そんなに喋りたいなら、お前が授業するか? ほら先生は見ているから前に立って授業始めてくれ」
そう言うと男の子たちは急に黙っちゃって、塩をかけられたほうれん草みたいになる。
今まさにそんな感じ。
ジャンケンの話をそろそろしたほうがいいかな。
私たちは昼食をどこで食べるか決めあぐねていて、4つの候補を出した。
ファストフード、ファミレス、パスタ、ラーメン屋。
それぞれ担当する店を決めて、ジャンケンで勝った人の担当する店に全員で行こうということになった。
私が担当したのはラーメン屋。
正直、誰も彼も彼女もラーメン屋に行きたいとは思っていなかった。けれど、候補は4つ出さなければいけない掟があったから、仕方なく出した。本番のジャンケンをする前に担当する店を決めるジャンケンをして、負けた私はラーメン屋担になった。
次の試合、本番ってやつですね、時間が止まったような気がした。
なぜかって。右上方からバスケットボールが飛んで来たからだ。
つまり、私は身の危険を感じて脳が普段よりも何倍もの速さで回転して、危機回避しようとした。そして時間が止まったと錯覚した。実際には止まっていないけど、止まっているかも、と思った瞬間、一旦変顔しちゃったんだ。それがいけないことだってのは私が一番よく分かってるし反省してるんだから、あんまり責めないでよ。
そんなことをして時間を無駄にしている間にみんなの手の形が見えた。3人ともチョキを出そうとしてるのが明らかだった。
だからパーを出して負ければ良かったんだ。
だけど、私は運動神経が悪いからそんなに冷静になれなかった。
当事者じゃないあなたには分からないよ。
それにバスケットボールをかわす余力と時間だって残しとかないといけなかった。
私は呪った。ジャンケンは勝ったほうがいい、という幼き頃に植え付けられた固定概念を。
恨んだってもう遅いのにね。
私はグーを出していた。ギュッとね。私のはグーっていう力強いものじゃなくてクーって感じの未熟で自立できてないみたいな拳だったけど。でもクーでもチョキには勝てる。
結局、バスケットボールは避けられなかった。私に当たったバスケットボールは数回バウンドして、近くにあったブラックホールに吸い込まれた。
バスケットボールは罰を甘んじて受ける覚悟だったみたいだ。何にも言い訳しないから冤罪だったんじゃないかなんて考えた。残ったのは顔面に傷を負った私と顔面に傷を負っていない3人と1つのクーと3つのチョキだけだった。残ってるもの多い。
私は勝負に勝って、勝負に負けた。やべっ。試合に勝って、勝負に負けただった。
ラーメン屋に行くことは別にいいんだ。明日から食事量を減らして調節すれば太ることはないんだから。
気がかりがあるとすれば、バスケットボールを投げた人が心を病んでいないか、だ。
「ボールに当たる奴が悪い」と言ってしまえるほど、相手が幼ければそれでいい。私は引き続き笑っていられる。けれど、大変申し訳ないと、その日の夜に考え込んでしまうような人だったら、私は何をしていいか分からない。心の絆創膏の具体物を用意しようか。
ボールを投げたまだ見ぬその人を想った。
「そんな人の心配ばっかりして、優しいんだね」
あなたがそう思ったなら、優しいのはあなただよ。
今までの語りは、人の優しさに憧れてしまうあなたの優しさを肯定するためだけの作り物。




