第四十五話 整う?
立春を過ぎ、冷たい風は相変わらずだが、太陽は少しずつ力強く照らし始めた……そんなある日のこと。
いつものように、窓辺では、猫たちが一つの大きな塊のようになって……暖かく柔らかな日差しを掛布団代わりにしている。
白い塊の中から、白黒ぶちの頭が……ひょこっと出てきた。
その子の名前は、モー。牛……たぶんホルスタインの白黒模様をイメージした名前だ。
モーは、ボス(キズナ)の仲間だったんだ。ボスたちと違って、モーは最初の生まれ変わりに失敗して、今回やっと合流できたんだ。
だからかな……千紗に撫でられる時、手の動きに合わせてビクって毎回なる。きっと……まだ野生が強いんだ。だから、みんなと違って、窓の外を眺めるのが気楽でいいんだよね。
『ん……どうしたの?』
モーの横で眠っていたキンが声をかけた。
あっ、覚えてないかな……キンは、白猫で目が金色。ボスと同じで、生まれ変わり2回目で千紗の所に来たから……モーよりは、野良猫の野生が抜けてるみたい……。
モーは、塊から抜け出すと、あくびをしながら大きく手足を伸ばして……窓辺に向かった。そして、ガラス越しに外の世界を見つめ始めた。
ちょこんと座って、長い尻尾の先だけが時々チョロチョロと動いていた。
『モーは、外の世界が懐かしいの?』
いつの間にか、キンがモーの横に並んで座り、話しかけてきた。
『そうだな……外の世界は、変化の連続だったからな。今みたいに、安定した安全って……まだ慣れないんだよ』
『そっか、モーは飼い猫一回目だもんね』
『うん……』
『……』
『……あ、うん……整った……』
『えっ、なに?……整う?』
『僕さ、景色を切り取ってるんだ。変だろ?』
『変とか言うより、なんで?どういう事……』
モーが景色を切り取るのは……自然の中で生きるのは、いつも危険と隣り合わせだったから。
一瞬の平和な時間、安心できる空間を切り取っていた……それが、かつてのモーの日常だったから……。
『そうだな……これはどう?』
理解が追いつかないキンを置き去りにして、モーが詠んだのは……。
薄氷の 春の訪れ まだ見えず
梅と桜も 蕾膨らむ (初春の句)
花が咲き 次は蝶々と 待ち合わせ
蜂と一緒に 蜜を分け合う(花の友達)
『……どう?』
『全然わかんない……私、お昼寝してくる』
『うん……おやすみ……』
キンが猫たちの塊に戻って行っても、やっぱりモーは、この平和な時間と風景を残しておきたいんだ。
……それがモーの日常だから……今も……。
モーが感じる季節と風景……あなたには見えますか?




