第三十五話 雑談
淹れたてのコーヒーとトーストが焼ける香ばしい香りの中、千紗と琴子はテーブルに向かい合って楽しそうに話をしている。
今朝は、曇り空で少し冷たい風が吹いて肌寒く、ミイとキズナ以外は一塊にまとまっていた。
「千紗さんのおうち、素敵ね。猫ちゃんたちも可愛いし」
「中古の家だからか、私は居心地がいいの……私が古い人間だからかな。猫たちは、私を支えてくれる大切な存在なの……フフ変でしょ」
「そうなんだ……全然変じゃないよ。いい子たちみたいだよね。私も猫と一緒に暮らしたいけど、アパートだから……」
「そうよね、私もそれで、ここに引っ越したのよ。琴子さんさえ良かったら、うちでゆっくりしてくれると私も嬉しいな」
テーブルの下では、ミイとキズナが座り、こちらも話をしている。
『なぁ、ミイ。前から気になっていた事があるんだが……』
『えぇ、何かしら?』
『生まれ変わりの事さ。俺たちが千紗の所にやって来た頃、ミイはどうしてたんだ?』
『それは、千紗の事をキズナが見守っているって分かったから……千紗のパパを私が見守っていただけよ。心配でなかなかパパの元を離れられなかったけどね』
『そっか。パパって俺をみると追いかけてきたあの元気な人間だよな……懐かしいな』
『そうね、あの時はキズナが見守ってくれたわね……ありがとう』
『あ、いや。今は、誰が見守っているんだ?』
『人間よ……とても優しい人が。安心して』
千紗の家の近くの草むらでも……灰色に汚れたアオが黒猫と話をしていた。
『黒猫さん、今日は千紗の家に行く気分になりましたか?』
『今日か……。今日は、やめとこう。お前さんから聞く話のほうが面白いからの』
『分かりました、どんな話をしましょうか……』
それぞれが話し合い、それぞれの時間を過ごしていた。テーブルの下の千紗の足に、キズナが頭や体を擦り付け始めた。
琴子との話に夢中になっていた千紗が、椅子に座ったまま腰を曲げて手を伸ばし、優しくキズナの体を撫でている。
『おい、千紗、こっちを見ろ。話がしたいんだ……』
ミイは、座ったままで、キズナの様子と千紗の顔がこちらに向くのか見ていた。そして、あきれたように首を振って一言……。
「にゃーん(千紗、こっちを見て!)」
千紗も琴子も、ミイの鳴き声で一斉にテーブルの下をのぞき込んできた。
千紗と琴子、ミイがキズナを見つめる。
『……あ、あの……話が、話をしないか……?』




