第三十四話 あなたも?
客人(琴子)のバッグをクンクンしたり、片手でチョイチョイ感触を確かめたり……玄関に行き、琴子の靴を確かめたり……猫たちは、代わる代わるチェックをしている。
真夜中という事でシーンとした家の中で、音もなく猫たちが忙しそうに動き回って確認作業に性を出していた。
『ねぇ、キズナ。あの琴子っていう人間……何となくだけど、千紗の力になってくれるような気がするの……』
『えっ!?力を貸しているのは千紗のほうだろ?』
ミイは、記憶を持ったまま生き返る先輩でもあり、神様か仏様に願いを叶えてもらったからか……時々不思議な事を言う。だからキズナは、後々このミイの言葉の意味が分かる日がくるのかもしれないと思っていた。
『ミイ、それよりも、黒猫の話を千紗にしたかったが……あの人間がいる間は無理だよな』
『……そうかもね。でも、今度また黒猫さんが来るまで時間があるだろうし、私たちで出来る事をしようよ』
『まぁ、そうだな』
ようやくいつも通りの静かな時間が流れ始めた頃、ゆっくりとした足音と共に寝室のドアが開く音がした。
その足音が千紗のものではないと分かる猫たちは、身を固くして動きを止めた。
ミイだけが、すっと立ち上がり、ゆっくりと音もなく近づいていく……。一人と一匹が見つめ合う。
「あっ、猫ちゃん!?」
「にゃーん(こんばんは)」
「こんばんは、猫ちゃん」
「にゃ?(話が通じるの?)」
「……内緒だけどね」
琴子は、ミイが感じていた通り何が違う人間だったようだ。リビングで待機してミイの様子を伺っていた猫たちの中から、キズナが立ち上がって琴子に近づく。
『おい、ミイ。どういう事だ。なんて言ってる?』
『キズナ、この人は千紗とは違うけど、私たちと話せるみたい……』
どうやら、千紗のようにお互いに話が出来るのではなく、琴子は猫の言葉は分かるが話すのは人間の言葉なのだという。人間との付き合いが長いミイは、人間の言葉をある程度理解できるが、野良猫だった他の猫たちには音の響きにしか聞こえなかった。ただ琴子が発する音(声)は、静かで心地よい響きだったから、動きを止めていた猫たちの緊張を少し緩めたようだ。
「あら、あなたも来てくれたの?」
「にゃん(俺はキズナと言います)」
「……知らない人が来てびっくりしたでしょ?ごめんなさいね」
『ミイ、なんて言ってる?』
『……びっくり……ごめん……って意味だと思うよ』
『何か変な感じだけど、こっちの言葉は通じてるんだよな』
『うん、そうね』
『……よし、それなら作戦を練り直すぞ!』
キズナの中では、琴子がやって来た事で新たな可能性を閃いたようだ。果たして、明日はどんな一日になるのだろうか……。




