表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日の猫  作者: 星乃夢


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/42

第三十三話 客人


 その日は、朝からいつもと様子が違った千紗が、やっと帰ってきた……今度こそ、お帰りの儀式ができるのかと思っていた。猫たちは、期待を裏切られてふてくされている……そう、もちろん物陰に隠れながらだが。


「大変だったわね。私の服、あなたの方が似合うかも」

「いえいえ、本当に助かりました。その上図々しくお邪魔してしまって……」

「何言ってるの、水くさい。困った時はお互い様って……昭和のノリだわね」

 千紗の服を着た女の人は、疲れ切った顔で申し訳なさそうに肩を丸めていた。二人は、笑い合ったり、時には深刻そうに小声になったりしながら、しばらく話し合っていた。話の間も、小さなスマホがうるさい音を立てたり、板に向かって話しかけたりしていた。

 先ずは、キズナ……続いてミイが音もなく物陰から出てきた。その他の猫たちは、暗くて狭い物陰に安心感を覚えて、眠り始めた。

『誰かな?知ってる?』

『……ん、間違っているかもしれないけど……ここに引っ越す前のアパートに住んでいた人に似てるような気がする……』

 人間の言葉を少し理解できるミイがキズナに伝える。やはり、その女の人はアパートの住人……上の部屋が火事……消し止められた……全部が水浸し……ということらしい。


 キズナは、ミイの言葉から、今朝の千紗の様子に納得した。

『千紗は、俺たち猫だけじゃなくて、人間でも……困っているのを見過ごせないんだな』

『そうね、自分の事は後回しだもんね』

『でも、困ったなぁ。せっかく黒猫さんが来てくれたから千紗と話したかったな』

『しょうがないよ……千紗は、人間だもの。人間を優先しなきゃ……』

 どうやら、その女の人は、琴子というらしい。俺らには人間の年は分からないが、千紗と同じくらいに見えた。千紗と同じように静かにゆっくり話す人だ。……自信なさげなのが気になるが……


 千紗が、使ってない部屋から布団のセットを出してきて、寝室に持っていった。その後、寝室に二人で入っていった。しばらくの間は、ボソボソと二人の話し声が聞こえていたが……やっと静かになった。

 キズナとミイは、既に物陰から出て部屋の隅にいたが、他の猫たちがそろそろと様子を伺いながら物陰から出てきた。みんな大きく伸びをして、あくびもしている。

 ボスを先頭にフードと水の場所に行列だ。順番に食べるので、後のものは近くで座って待機だ。ひと通りの流れをこなして落ち着いた猫たちだった。

 今度は、部屋に戻って琴子の荷物やら、座っていた場所をチェックし始めた。

 ……人間と違って、猫も大変なんだよ……

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ