第二十一話 作戦1
ある日、突然千紗の心が折れた……のかもしれない。その日から心の声が聞こえなくなった……。全く原因が分からない……。
『ねぇ、千紗は一体どうしたの?』
『分からない……目を合わせてくれないし』
ミイとキズナは、突然過ぎる千紗の様子に戸惑いを隠せない。
ほとんどの時間を締め切った部屋の中で過ごす千紗は、信頼していた猫たちさえも避けて『一人っきりになりたい』と言った。
心を閉ざすほどの何かがあったのか……それとも……何かが入ってしまっているのか……。
『次、千紗が出てくる時に部屋に入って隠れるから協力して』
『OK!バレないように隠れて、よく視てみてくれ』
ミイが侵入して部屋の中の千紗を観察すると決まった。キズナは扉の前にスタンバイし、ミイは物陰に隠れている。
千紗は、部屋の中で何をしているのか……あまりにも静かなので寝息でも聞こえるかと耳をそばだてる……が、寝息は聞こえない。
カタッと小さな音がして、ゆっくりとした足音が閉じられた扉に近づいてきた。キズナは、『もしかしたら踏まれるかもしれないな』と思いながらも、扉の前で手足を大きく伸ばして横たわった。
扉が開いてボーッとした千紗が出てきて、
「あっ、危ない!ごめん、ごめん」
と慌てながら、一歩部屋の方へ後ずさった……扉は、開いたままだ。
素早くキズナが立ち上がり部屋の中に入るフリをして千紗の注意を引きながら、物陰に隠れているミイに合図した。
『そろそろいくぞ』
『いつでもどうぞ』
キズナは、部屋に入るフリをやめて今度は、千紗の足元に体や頭を擦り付けながら行ったり来たりを繰り返し行く手を阻む。
キズナは、強引に力ずくで阻止しながら、少しずつ前に進む。
タイミングを見計らっていたミイは、扉が閉まる数秒前に、サッと近づき音もなくスルリと部屋に侵入した。
もちろん千紗は、キズナに気を取られているので気づいていない……作戦の第一段階は成功だ!
キズナは、ゴロゴロ喉を鳴らして千紗に甘えながら顔を覗き込んだ。やはり目を合わせてくれないが、千紗の目は暗く沈んでいるように見えた。
そして、今度は後ろ側にまわってスリスリして……肩の辺りにユーレイがいないかをチェックしたが……いなかった。
『ミイ、後は頼むぞ……こんな時に、千紗のおばあさん(ユーレイ)は来てくれないのかよ……』
キズナは、頭を切り替えて、次の作戦を考え始めた。
キズナたちのキャットフードと水を補充し、湯気の立つホットコーヒーを片手に千紗は……ミイが隠れている部屋へと戻っていった……。




