第十三話 その時 孤独?
かつての仲間たちは、みんな白猫で母猫はミドリ、姉妹はアオとキン……みんな白猫だから瞳の色で区別するしかなかったのかもしれない。名付けてくれたのは、千紗の娘の千夏だが、俺の名前だけは千紗が考えてくれてキズナになった……初めての名前だが、結構気に入っている。
生まれ変わる前は、みんな野良猫だったから正直言って、人間との距離感に戸惑った。触れられる度についビクッとしてしまいそうになるし、抱き上げられた時には落ち着かない……すぐに腕の中から飛び出て自由を求めてしまった。仲間たちも同じで、遊びで戯れていたはずなのに、いつしか本気モードになって……つい深く爪を立ててしまったり、噛み付く力加減を間違えたりしていた。それでも千紗は、俺たちの野良だったが故の行動を認め、無理強いする事は決してなかった。
ある日千紗が打ちひしがれたように様子がおかしくなった。もしかして、ミイが言っていたその時が来てしまったのではないかと思った。千紗は、ほとんど眠らず一人で何かを考え続けていた。そして、それと同時に千紗の夫が帰宅する事もほとんどなくなった。
俺たちにすれば、千紗の夫が帰って来る度に、一目散にダァーッと走り物陰に隠れて気配を消す心配がなくなって嬉しかったが、どうも千紗は違ったらしい。数年後に俺が理解出来た言葉は……ベッキョというものだったらしい。猫の世界では結婚ってものがないから自由に恋愛できるが、人間の世界には小難しい決まりがあるらしい……人間も大変なんだろうな。
ともかく、千紗は千夏や俺たちの面倒を一人でこなしてくれた。千夏が学校に行ったり遊びに行くと、それまで以上に千紗は孤独を感じているみたいだった。猫と違って人間社会は複雑だから、一人で頑張るっていうのも千紗にとって大きなプレッシャーだったのかもしれない。
だから、俺たちは代わる代わる千紗の話し相手になったり、夜中にみんなで走り回って運動会をしたりしたんだ……千紗に元気を出して欲しかったからね。
そして俺は、とにかく千紗を一人にしないって事を徹底したんだ。今の俺たちは外に出してもらえないから家の中に限定するが、千紗が料理を作る時はキッチンの特等席(食器棚の上)、風呂の時はバスマットの上、観葉植物に水をあげる時は千紗の足元に纏わりつきながら一緒に歩く。寝る時は当然千紗の頭の近くや布団の上だ。夏場は俺だけだが、寒くなると仲間たちも一緒に……猫まみれになって千紗は寝ている。寝返りを打つと寝ている俺たちを起こしてしまうからって、できるだけ動かないようにしていたみたいだった。
毎朝目が覚めると、
『よく眠れた?今日も一日頑張ろうね』
と優しく俺の頭を撫でてくれる千紗……俺は千紗の事を大切な存在だと感じるようになった……。ミイに頼まれたからじゃない……俺が守りたい……そう思ったんだ……。




