第4章 ハウスシェア或いは同棲
第4章 ハウスシェア或いは同棲
翌朝はまた豪華な朝食を食べて……敬純は流石にこの二日食べ過ぎなので半分位しか食べていない……
そして宿を出発して、小田原を通り江ノ島付近で陽菜と別れて帰宅、荷物を片付けて、軽くシャワーを浴びると、一応使っていなかった子供達の部屋の掃除をする。
まぁ、一夜のお伽話と言う事で、この後陽菜からの連絡が絶える事になる可能性もあるし、敬純は何も
期待しないで、掃除だけはしておいた。
ツーリングから戻った日は当然、バイクの洗車と整備だ。
作業自体はいつもと何も変わらないが、これをしないと落ち着かないのだ。
そして、撮影した動画のデータを全てMacに移していつでも編集できる様にしておく。
ヘルメットも外装は綺麗にして、シールドの交換、着脱式の内装は取り外して洗い、スペアと交換する。
本当に効果があるのか良くわからないが、ヘルメット専用の『脱臭器』と言うのがあって、その上に置いてスイッチを入れた。グローブとブーツも専用の乾燥機にセットする。
そして最後に汚れ物を洗濯機に放り込んで、ツーリング後の儀式は終了、リビングで、水出しのアイスコーヒを飲みながら、見逃したSBKのレースをオンラインの録画で見る。
夜の食事は外食も作るのも面倒だったので、Uberで頼む事にした。
ふと見ると、陽菜からメッセージが入っていて。
「ありがとうございました、楽しかったです本当にお宅にお邪魔しても良いですか、もしよろしければ
明日、荷物を持って伺います」
と書いてある。
昨日の今日なので敬純は
『へぇ、本気なんだな』
と少し驚いた、むしろ一夜を共にしたからと言っても
「もう少し考えさせてください」
みたいなメールが来ると予想していたからだ。
空き部屋になっている、二階の元子供達の部屋二部屋のうち、どちらかが陽菜の部屋になり、もう一部屋は陽菜が配信や編集用のスタジオに使うと良いだろうと敬純は思っている。
二階には洗面所とトイレが別にあるので、プライバシーの面でも問題無いだろう。
翌日、のんびりと編集作業をしていると、バイクの音がして陽奈がR25に結構な荷物を積んでやってきた。
「うわぁ動画で見るよりずっと素敵な家なんですね、ガレージも広くて、日本の家じゃないみたい」
と言う陽菜を二階に案内して、どっちの部屋をメインに使うか決めさせた。
数日分の着替えと、ネットにアクセスする為のノートパソコン、それに化粧品だの日用品が少しと言う感んじの荷物だそうだ、また部屋に戻って荷物を取りに行くとの事なので、一緒にバンで彼女のアパートに行き、残りの荷物をバンに積み込んだ
当然だがベッドやテーブルなどは一度解体してから積み込む、敬純が知っている若い女の娘の部屋には
バッグやら靴やら服にアクセサリーが山の様にあった筈だが、陽菜のアパートには呆れるほど荷物がなかった。陽菜はこの光景も動画で撮影していた。
家に帰って、陽菜のベッドやら、チェスト、ドレッサーを部屋に運んで組み立てる。
まぁこの程度は全然問題無い。
そして他の荷物も運び込み、ベッドルームーは終了
アパートのリビングで使っていたテーブルと座椅子などは、ステジオにする方の部屋に運んで、事務所からの貸与品の配信用PCのセットアップをした。
ちなみにこの家は光ファイバーの高速回線が来ているし、各部屋にはスイッチングハブからLAN配線がしてあるので、部屋のコンセントにケーブル繋げば直ぐにネットが使える様になる。
「このPCは返却しないといけないんだよね?」
「はい、そうです」
「じゃ、今の内にこのPCの複製を作っちゃおう」
「え?そんな事できるんですか?」
「任せておいて、PC買いに行こう、あ、もしかしてMacの方が良い?、僕は、普段はMacを使っているんだ」
「うーん、Macの方が可愛いですよね、でも使った事ないので」
「じゃ普通のPCね、支度して」
向かったのは車で一時間ほどの所にある、PCショップだ、以前は色々な場所に沢山の電器店やPCショップがあったのだが、今は近所ではここ位しか残っていない。なんでもネットで買うのが主流になっているから仕方が無いが、直ぐに商品が欲しい時にはネットは不便だと敬純は思っている。
選んだのはShop buildのIntel Core ULTRA 9 285K&GeForce RTX5090、64GBメモリ、2TB SSDと言う感じの一番スペックの高い物で、ケースだけお洒落なホワイトの物に変えてもらった。
ついでに、動画編集用モニターも4K32”の物を購入。後はキーボードやマイク、ヘッドフォン、マウスなども纏めて購入、これで軽く150万円越えだ、昔良く女の娘にねだられたヴィトンのバックの方が安いかもしれない。
「うん、こうやって一緒に買い物してると、大学に行く娘にPCを買う、ちょっとオタクの父親って感じだね」
「えーそんな事無いです、イケオジは本当ですから」
『昔、キャバクラにこんな感じの娘いたよなぁ、当時の部下が引っ掛かって大変だった』
などと思いながら帰宅。
古い方のPCから全てのデータとソフトを移行して、ついでに動画編集用のソフトと配信用ソフトはアップグレードしておいた。
陽菜はそういう系の専門学校に行っていたと言う事だから、問題なく使えるだろうし、ダメなら敬純が教えれば良いだけだ。
そして動画撮影用のアクションカメラとマイクも支給品と言う事なのでこれは『DJI Osmo Action 5 Pro』と『DJI Mic 3』をAmazonで購入。案件で使っていたモデルと同じなので問題無い筈だ、ちなみに敬純はGoProを使っている。
それから、リビングルームでこれからのタイムスケジュールの確認。
1. いつもの様に事務所から送られて来る配信用動画原稿を待つ、これは陽菜が敬純と遭った日の昼間の動画だそうだ、そして、到着後アフレコとかテロップ起こしとかする。
2. 動画を公開して、最後にLive配信のお知らせ、それと当時に動画配信サイトのパスワード他を変更。3. Live配信で今月の契約終了を持って事務所からの退所表明と、今後陽菜がどうしたいかの発表。
4. 事務所と話し合いの日時を決めて、弁護士同伴で事務所に行き、バイクやヘルメットその他配信用の貸与機材を全部返品と、こんな流れになる。
「こんな感じかな、弁護士は、企業案件が専門の弁護士と民事専門の弁護士の二人が同行するって事で良いよね」
「その弁護士さんはどうやって探すんですか?」
「もう逢ってるよ、一緒にツーリング行ったでしょ、高村さんは夫婦で弁護士なんだよ」
「えー?うそ?」
「雅俊は凄腕の企業案件の専門家、真理子さんは民事、まぁ本当は離婚とかが専門だけど大丈夫、実は僕が六年前に離婚した時にも頼んでいるからね」
「そうなんですね、凄いご夫婦だったんですね、ただのモトブロガーだと思ってました、チャンネルも夫婦で『お笑い』してますよね」
「まあね、二人ともスーツ姿の時は別人だから、じゃ荷物の整理とかしててね、僕は返すバイクの洗車をして来るから」
「あ、それ私がやります、やらせてください動画も撮らないと」
そんな訳で二人でバイクの洗車、海沿いを走ると知らないうちに塩分が付いていて錆になる、ガレージから陽菜のバイクを出して、敬純流の洗車方法を教えながら、陽菜が洗車をする、バイク用の高圧洗浄機で汚れを落として洗剤を入れて泡だらけにして、スポンジで軽く洗ってまた水で流して、あとはマイクロファイバーのタオルで水気を取って、バイク用ワックスでボディを綺麗にして、チェーン等にルブを塗って終了。
最初に冗談で
「あ、水着でやれば、みんな喜ぶんじゃない?」
言ってみたら、陽菜は本当にセパレーツの水着に着替えて洗い始めたのは少し驚いた。
撮影には敬純も協力した、何より若い女の娘の水着姿は目の保養になって良いものだ。
それから、夜の食事兼引越し祝いに地元の回らない寿司を食べに行く。
この店は当日予約は受け付けていないが、ここも父の時代から愛用している店なので問題は無い
夜はお任せコースのみで、季節の美味しい魚の寿司や料理がお勧めの店だ。
「毎度、いらっしゃいませ……」
『うん、そのリアクションもうわかってます』
「あ、大将この女性は動画配信者なんだけど、撮影しても大丈夫?」
と聞くと訝しげだった大将の態度が変わった。
「いやぁ、こんな店に綺麗な若い女の子が来てくれて動画を取ってくれるのかい、そりゃ嬉しいね」
と喜んでいる、基本的に顧客は昔からのお得意様ばかりなので、今は年寄りばかりになってしまっているからだ。そんな訳で、いつもよりずっと丁寧に握った寿司が出てきて、ご機嫌な夕食になった。
「美味しかったですね、でもいつもこんな美味しい物食べられているんですか?」
「いや、そんな事無いよ、最初に会ったのガストだったでしょ」
「あ、そうか」
タクシーで家に戻り、風呂の用意をして陽菜には先に入ってもらった。
その間にのんびりと自分の動画の編集をする、どんな内容にするかはちょっと悩む所だ、でも基本的には
ただの四人でのコラボと言う形にして、二人きりの部分は編集でなんとかする。
「お風呂先にいただきました、あ編集しているんですね」
「うん、僕はそんなに凝らないからね、音声もAIだし、テロップを打つのが少し面倒なだけ、一応ライディングの解説は入れておいたよ、最初と後の方だと見違える位上手くなっていたからね」
「ありがとうございます、これ、いつ見れますか?」
「うーん、まだしばらく先かな、先に高村さん夫婦が出して、次に陽菜で最後が僕ってのが良いかなと思っているんだ」
「はい、私も頑張ります」
そう言って陽菜はスタジオで作業を始めた。
「うわなにこれ?超速」
と言う声が聞こえてくる、編集用のPCの性能が大幅に上がったので、今まで30分かかっていた作業が
10分ちょっとで終わるからだ。それでも最後ににアフレコや文字入力をすれば、その分の時間は変わらないので、それなりに大変な作業になる。
彼女が今編集しているのは、事務所の方から送られてきた先週のタイヤがパンクするまでの動画原稿だ。
敬純は作業を終えると、キッチンでナイトキャップのバーボンのロックを作り、そのグラスを持って
自分のベッドルームに行き、それを舐めながら、バイク系の動画を眠くなるまで見ていた。
しばらくすると陽菜がベッドルームに入ってきた
「あの、私隣で寝ても良いですか?」
敬純のベッドは、ワイドキングサイズのベッドなので二人で寝るのは別に問題は無い……と言う問題では無いのだが……なので、
「良いよおいで」
と言うと陽菜は嬉しそうに隣に来た、パジャマとかの寝巻きではなく、オーバーサイズTシャツ一枚で
その下は何も着ていなかった、その格好で敬純に抱きついてくる。
と言う事で、この夜も敬純は頑張る事になる、そしてこれ以降陽菜はずっと敬純のベッドで一緒に寝る事になり、せっかく運んだ、陽菜のベッドは洗濯物置き場になって行った。
翌朝、敬純が目覚めると、陽菜はもう起きていて、キッチンで色々と頑張っている様だ。
『そういえば、料理をしている動画あげていたな』
と思って
「おはよう」
と声を掛けると、和食の朝食、それも冷蔵庫にある物で頑張って作った用で、ご飯に豆腐の味噌汁、目玉焼きと言うシンプルな朝食が用意されていた。
「ごめんなさい、もう少しちゃんとした物を作りたかったんですけど、材料がこれしか無くて」
「ああ、僕は自炊していたけど、それは気分の乗った時だけだからね、食材の買い置き殆どしてないからね、でも偉いじゃない」
二人でキッチンのアイランドのカウンター席に並んで座って食べてみる。
味噌汁は……合格だけど、出汁はこの家には無かった筈だと思ったら、陽菜のアパートから持ってきた荷物の中に、出汁入り味噌が会った様だ。
ご飯は……まぁ今時の炊飯器は失敗する方が難しいので問題なし。
目玉焼き……これも普通にサニーサイドアップでできている。
「普段は朝食は何を食べていたんですか?」
「ああ、僕は昔からミルクを掛けてドライフルーツを入れたシリアル(コーンフレーク)にラテだね、うちは昔からそうだったから、あ、子供の頃はそれにスクランブルエッグか目玉焼きにベーコンやウィンナーにオレンジジュースが付いていたね」
「わぁ、なんかそれを聞いただけで別の世界の人って感じですね、格好良いです」
「格好良いかどうかはわからないけど、朝食は僕の分は、無理して作らなくて良いから自分の好きな物を食べてね」
「はい、でも作ったら食べていただけますか?」
「もちろん、そうだ前は買い物はどうしていたの?」
「アパートの側にスーパーが会ったのでそこで買ってました」
「そうか、この辺は車で行かないとスーパーもコンビニも無いんだよね、オンラインで頼めば食材の配達をしてくれるから、必要な物はそこで頼んで、翌日配送になるけど」
「はい、一緒にお買い物とか行っていただけますか?」
「良いよ、あとでスーパー行こうか、あれ車の免許は持っているの?」
「はい、でもAT限定で……あのバンは運転するの無理だと思います」
「そうか、じゃ落ち着いたら、バイク見に行くついでに車も見に行こうか、小さい方が良い?」
「はい、あとお洗濯するので洗濯機の使い方を教えてください」
とそんな感じで、敬純としてはハウスシェア的な気持ちで始めた暮らしだが、陽菜の方は既に同棲状態だと思っている様な感じだ。
朝食を終えて、すべて食洗機に放り込んで……陽菜は自分で洗おうとしたが……、 風呂場の脱衣所に有る洗濯機の使い方を教えた……と言ってもAI搭載の洗濯乾燥機なので、洗濯物を入れてコースを決めてスタートボタンを押すだけだ、ずっと一人なのでこの家には物干しも無い。
と言う事を話すと、陽菜は
「これからお洗濯は毎日私がしますね」
ときっぱりと言う。
「えーっとね、一応言っておくと週に二回メイドサービスの人が来て掃除と洗濯はしてくれているんだ、
だから僕も洗濯は下着くらいしかして無いんだ、まぁその辺は好きな様にして良いよ、こっちの白い方のランドリー袋はそのメイドサービス用だから」
「メイドサービスなんて本当にあるんですね、私そっちでも雇ってもらおうかな」
『あ、これメイド服着せてみたら萌えるかもしれないなぁ』
などと不埒な事を想像したのは内緒だ。




