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第26章 プロポーズ

第26章 プロポーズ


 朝起きて露天風呂に入ってから、朝食の『和洋バイキング』

敬純は基本的に洋食メニューを取ったのだが、陽菜の飲んでいた『特製あら汁』がお美味しそうだったのでそれだけは飲んでみた。


 そしてホテルを出て、30分ほどドライブして、『スポーツランドSUGO』に到着、敬純が最後にここに来たのは、30年以上前の10月のレースだった、このレースで先輩の元全日本チャンピオンと、外国人選手二人にライバルの雅俊と言う強敵四人を制して、敬純は現役最後の勝利を飾った思い出のサーキットだった。

『うわ、前と全く景色が変わっていて別のサーキットみたいだ』

ピットやパドックもコースも全て新しくなっているので、敬純の記憶とは別物になっている。

 明日は地方選手権のレースがあるので、パドックは少しだけ混雑している。端っこにスプリンターを停めて、会場に向かっていると

「渋川さん、おはようございます、来ましたね」

と今日の講師の須走さんが声をかけて来た。

「おはようございます、今日はよろしくお願いします」

と敬純が言うと陽菜も一緒にお辞儀をする。

「ゆかりんさん、広報の方から講習会の動画撮影の許可を出してあると伺ってます、よろしくお願いしますね、渋川さんは退屈でしょうから寝てても良いですよ」

と言われてしまう、寝るつもりは無かったが、今更と言うのも有るので仕方が無い。

 10時からの座学は、須走さんの話術が面白く、敬純も見習わないといけない所が沢山あると思った。

「良く戴く質問にライセンスの更新を忘れるとどうなりますか?と言うのがありますが、そちらに居る渋川さんは元国際A級ライダーで、このサーキットでも何回か優勝されている方です、それでも更新をされないとライセンスは失効しますので、こうして皆さんと一緒に再度講義を受けていただいています、皆様も更新は必ずしてくださいね」

と最後に敬純をネタに笑いを取っているし、そのシーンはしっかり陽菜が撮影している。


 座学の時間が終わって、ランチ休憩の後は、今度は実技になる。レース前と言う事で、須走さん達の先導でコースを数周するだけの様だ。

「渋川さんはコースが変わってから走るのは初めてですか?」

「そうですね、僕が最後に走ったのは30年以上前ですから」

「では怪我の無いように安全運転でお願いしますね」

と言う事で、陽菜と二人でPanigale二台を並べてツーリング気分で走行する。

そしてライセンスを貰って、今日の講義は終了だ、その後、明日のレースの練習走行をしているS T1000クラスのライダー達に混じってフリー走行。

「一人だけ速い奴がいるね」

「あのYAMAHAの人ですね」

「あいつについて行ってみよう」

と陽菜と二台で追走してみる。

 この選手は他の選手より2秒以上速いペースで周回している。

敬純は追走する内に、第一コーナーで彼を抜くとそのままペースを上げて、彼より0.5秒速いタイムで

走行を終えた、陽菜は彼から1秒遅れのタイムだが、これは同じST1000クラスの地方選手権に出場したとしたら、上位に入れるタイムだ。

「さすがですね、これ公式タイムになりますから、記録を添えて申請すれば、A級ライセンス復活できるかもしれませんよ」

 と須走さんに言われたので、今日のラップタイムの証明書を発行して貰って、帰ったら早速MFJの事務局に問い合わせをして見る事にした。

 こうして無事にSUGOのライセンスと、陽菜はMFJのフレッシュマンライセンスを取って帰宅。


 帰宅して翌日には不動産屋から紹介された商業物件専門の業者に依頼して、物件のリフォームと言うか、ほぼ建て直しに近い工事を依頼。看板やサインなども付けてくれるそうだ。


 次は横浜のDUCATI JAPANの本社に挨拶がてら訪問して、レースチームの件で打ち合わせ。

ライダーの選考を動画で公開すると言う案に協力してもらう事になる。

 現在自薦他薦を含めて、現役から元ライダーまで十人以上の応募者がいるが、その中から書類選考で選んだ四人で、富士スピードウェイを市販のV4Rで走らせてライダーを決定すると言う企画だ。

その為に試乗用のV4Rを4台借りたいと言う事を申し入れたら

「さすがですね、面白い事を考えますね」 

喜んで協力してくれる事になった。

「そうだ、あの水神選手が乗っている今年のマシン、あれシーズン終了したらどうなるの?」

「貸与ですから返却して貰って、イタリアに送り返す事になってます、来年型はまた新たに貸与と言う事になりますね、渋川さんのと同じタイミング到着すると思います」

「そのバイク、売ってもらえないかな? そうしたらウチは最新型と型落ちの二台でエントリーできる、

本国から要請のあったデータ取りには最適だと思うんだけど、一度聞いてみてもらえないかな?」

「わかりました、でもご存知だと思いますが、とんでもない値段がしますよ」

「あ、これウチのチームの来年の資金計画です、メインスポンサー一社、サブスポンサー二社で、資金はかなり余裕がありますから、大丈夫です」

「このASXって会社、F1のスポンサーをしてる会社ですよね、凄いなどうやって口説いたんですか?」

「まぁ色々とツテがあるんです」

「わかりました、資金的な事は一番心配になる所ですがそれがクリアできるなら大丈夫だと思いますよ」

「あと、新型の市販のV4Rも一台、最初からサーキット仕様でオーダできませんかね?、こっちは僕が乗る分ですけど、それとお願いばかりで申し訳ないですが、ディーラーにしか提供してない整備機器や専用工具、あれも売っていただけないでしょうか? 今チームファクトリーの整備をしているので、そこに置きたいと思ってます」

「わかりました、それも含めて上と相談して早急にお返事差し上げます」

 と言う事で訪問は無事に終了。

あとは返事を待つばかりとなった。


 それから築地のMFJの事務局を訪問して、国際A級の復帰について相談すると、SUGOの公式ラップタイムが功を奏したか、仮ライセンスの発行を認めて貰った、来年の開幕戦から3レース以内に、予選で決勝進出基準タイム(107%のタイム)を記録できれば『仮』が取れて正式に復帰できると言う事だ。

 この日敬純は銀座『和光』に寄り陽菜の為に特別なリングをオーダした、何故ここにしたかと言うと、敬純の母や祖母が良く利用していた店で、敬純と元妻とのエンゲージリングもここで頼んだからだ、だがその後、ウェディングリングは妻の強い要望で、『ハリーウィンストン』と言う店にオーダーする事になり、エンゲージリングの方は結局妻は一度しか着用せずにどこかに仕舞い込んでいたと言う思い出もある。ちなみに陽菜の指のサイズは先日のパーティの前にアクセサリーを選んだ時に聞いて覚えていた。


 敬純は更に昔YAMAHA時代に世話になった『城南YAMAHA』に行き、MFJのST600仕様のR6を一台オーダーした、これは勿論陽菜が乗るバイクになる。今は引退して居る元会長は

「色々と話は聞こえてきているよ、俺としてはなんでYAMAHAじゃ無いんだって気はするけどな、

速い若いのでも居るのか?ST仕様のR6なんてお前が乗るわけでは無いんだろう?」

「ええ、将来すごく有望な選手を見つけましてね、来年は地方選手権からになりますけど、すぐに全日本に昇格できると思いますよ」

「そうか、まぁ頑張るんだな、その若いの連れて一度挨拶に来い、俺が顔を見てやるよ、それとウチのクラブの名前を汚す様な事はするなよ」

 今とは名称が同じだが全く別のチームの、敬純が所属していた『湘南スポーツライダーズ』の元会長で、YAMAHAやSUZUKIのワークスライダーを歴任した大御所はいまだに健在の様だ。


 そして帰路に『ダイネーゼ』の店に行き、陽菜のMFJのレース仕様のレーシングスーツのオーダーをしておく。指定のタイヤメーカーのロゴを入れたりする独自のルールがあるからだ。

「渋川さん、もうライダーは決まったんですか?」

「いや、まだ近々選考会をするんだ、多分DUCATIの方からもアナウンスがあると思うよ、まぁスーツやヘルメットは個人の趣味だからね、もしスポンサーになってくれるなら僕と『ゆかりん』さんだけは確定だからよろしく」


 と敬純が、色々と忙しくして居る間に、陽菜はおとなしく動画の編集をして、新しい動画を上げている。今は登録者100万人達成の金の盾が送られて来るのを楽しみにして居る様だ。

「最近お忙しい様で、あまり構っていただけないので寂しいです」

「ごめんね、来年のレース体制をしっかりと作りたいから、それで陽菜にも手伝って欲しい事があるんだけど」

「はい、なんですか?」

「新しいチームのWEBと動画チャンネル作りたいんだ、下請け先も含めて陽菜が管理してくれると僕は凄く助かる、勿論陽菜にもチームの広報担当としてギャラを払うよ」

「やります、やらせてください、敬純さんのお役に立てるのなら何でもしますから」

と言う事で、陽菜にも仕事を頼む事にした。


 そうこうしている内に、頼んであったリングも出来て、別荘の方のリフォームも終わったので、

陽菜を連れて、スプリンターにStreetfighter V4 SP2を二台と食材等を積んで別荘に。


 早めの夕食を終えて、夕日を見ながら、デッキの岩風呂に二人で入る。

「シャンパン取って来るね」

そう言ってキッチンに行き、フルートグラスの一つにリングを入れてスプマンテを注いだ。

そして岩風呂に戻って、陽菜に渡して乾杯する。

 少し飲んだ所で陽菜がリングに気がついて固まった。

「陽菜と一緒に過ごす様になって半年、色んな事があったけど、毎日楽しかった、だからこれかもずっと一緒に側にいてくれるかな?」

「あの、敬純さんこれって」

「僕はそのつもりだけど?受け取ってくれる?その前に全部飲まないとダメだけどね」

「はい、勿論です嬉しい、本当に私で良いんですか」

「陽菜じゃ無ければダメなんだ、それが僕も良くわかったからね」

 敬純は色々と悩んだ末に、陽菜にプロポーズする事に決めたのだった。

歳の差35歳、世間的には何を言われるか予想は付くし、今まで陽菜を敬純の娘だと思っていた人達には引かれるだろう、陽菜の方も、登録者が大幅に減少する可能性が高い。

だが色々な事を考慮しても、敬純は陽菜とこれからの人生を一緒に過ごすと言う選択をしたのだった。

 スプマンテを飲み干した陽菜はグラスからリングを取り出して左の薬指に嵌めている。

サイズはぴったりだ。

「こ、これって本物のダイヤモンドですか、なんか凄く高そうなんですけど」

「そう言うのは気にしないの、陽菜に合うデザインを探すのに苦労したけど、気に入ってくれた?」

「はい、本当に嬉しいです、もう外したく無い……あ、そうしたらバイク乗れなくなる」

「前にそんな事言っていたからね、リングをネックレスに出来るチェーンを用意してあるよ、これならずっと付けていられるでしょ」

「はい、ありがとうございます」


 シャワーを浴びてベッドで横になってお話の続き

「式とか披露宴とか陽菜はどうしたい?」

「あの、私我儘言っても良いですか?」

「良いよ」

「式は二人だけでしたいです、披露宴は無しでお願いします」

「そうなの、陽菜がそうしたいならそれで良いけど」

「私、家族って母しか居ないし、母が親戚と色々あった様で絶縁状態なので、それで母も昔から、そういうの嫌いだからって言うので……」

「なるほどね、わかった、じゃ式はどういう風にしたい?」

「あの笑わないでくださいね」

「うん」

「ドレスでは無くて和服の白無垢を着て神社でしたいです」

「白無垢で神社? また思いきり今風じゃないけどなんで?」

「子供の頃に地元の神社で結婚式をしているカップルを見たんです、そのお嫁さんが凄く素敵だったので

私ももし結婚できるならそうしたいとずっと思ってました」

「そうか、家は代々鎌倉の鶴岡八幡宮の氏子だから、調べてみよう、まぁ直ぐには無理だから先に入籍って事になるのかな?」

「はい、それで構いません」

陽菜はそう言うと、ベッドの上で正座して

「末長くよろしくお願いしたします」

と頭を下げた。

「何、時代劇みたいだね」

「もう、せっかく真面目にやったのに」


 翌日は二人でバイクに乗って伊豆の峠を走った、伊豆は暖かいので11月中頃まで快適にツーリングをする事ができるし、11月からは紅葉も始まるので景色が綺麗になる。

 結局別荘には三泊して葉山に戻った、二台のStreetfighterはガレージにフロントとリアのスタンドを掛けて置かれてバッテリー充電器を繋ぎ、カバーをかけて次に来る時まで保管される事になる。

当然陽菜はこのツーリングも全て動画を撮影していて、編集が終わりしただいアップする事になる。

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