第16章 ライセンス講習会
第16章 ライセンス講習会
今日は富士のライセンス講習会の日だ、朝7時前にスプリンターで家を出る、もちろんバイクはV4RとV2の二台を搭載している、あいにく天気はあまり良く無いようで朝方は雨も降っていた。
ゲートを通って、コントロールセンター1Fのライセンス受付窓口で手続き、事前にオンラインアカウントは作成してあるし、書類も全て用意してあるので簡単に済んだ。
後は10時からの講習を二時間ほど陽菜が受ければ良いだけだ。
講習会場のメディアセンター横のラウンジでコーヒーを入手して、敬純は講習会場には入れないので、陽菜に手を降ってスプリンターまで戻る、天気が回復すれば、陽菜用のV2で午前中の20分の走行枠を軽く走り、バイクの動作チェックをするつもりだ。
今日は平日なのバイクの枠は空いているが、週末に四輪のレースがある様で、ピットは全て使用不可になって居る。Bパドックの方にスプリンターを移動して、そこで設営だけして置く、V2を下ろす、V4の方はまだ積んだままだ。 幸い雨も上がりコースは一部濡れている様だが、その前に四輪車の走行時間があったので、かなり路面状況は良くなって居る。
敬純は、着替えてV2でコースインして、軽く慣らし走行を始める。慣らし走行だと周囲にわかる様にコースで貸してくれるビブスをスーツの上から着て走る事になる、格好悪いが後ろから追突されるよりはマシだ。
V2はエンジン、サスペンション、ブレーキと全て問題無く、最終的には1'59"台で走っていたら
ピットインサインを出されてしまった、周囲のバイクと比較して速すぎるので危ないから、ゆっくりと走れと言う事だ。
まぁ、慣らしとバイクのチェックは終えたので、走行を終えてパドックに戻る、サスペンションの設定はかなり柔か目にしてあるが、陽菜の方がずっと体重が軽いので、これで大丈夫だと思う。
講習会は二時間と言う話だったが、15分位早く終わったので、陽菜を迎えに行く、この後
陽菜は下見走行と言うバイクでコースをゆっくりと走る体験走行タイムがあるので、すぐに用意して
戻って行く。
レーシングスーツを着るのか大変そうだったが敬純が手伝った。
バイクを押して、コースに行くと、他の受講者達が並んでいたが、みんな普通の市販車で、純サーキット仕様は陽菜だけの様だ。
「え、マジかあの女の子何者?」
「知らないのか、動画配信者だよ」
「そうかぁ良いなあ、俺もああいうバイクに乗りたい」
なんて声が聞こえてくる。
「無理しないでのんびり走れば良いからね、今日はそういう日だから」
「はい」
と言う陽菜だが、初めてのサーキット走行で緊張している様だ。
先導車が居て、その後ろを車間を開けて追い越し禁止で走るので、特に問題は無いと思う
三周して戻って来た陽菜は
「すごい、気持ち良かったです、楽しい!!」
と興奮している。
そして、その場でライセンスを発行してもらって、同じ講習に参加したライダー達と一緒に記念撮影をしている、どうやら新たな視聴者を獲得した様だ。
「お疲れ様、じゃバイクしまって食事して帰ろうか、また次の走行枠がある時に来ようね」
と言う事で、今日は終了、V4は積んだままで終わってしまった。午後の走行枠が無いと言う事を敬純が
確認し忘れただけだが。
次の7月の二輪の走行枠は、26日の土曜日なので、すぐに陽菜の分と自分の分の予約をする
今度は敬純が先導をするので、とりあえずS-2Nクラスになる。土曜日は午後に二回の合計40分の走行枠の様だ。
だがこれだけだと、全然上達しないだろうと敬純はカレンダーを見て空きがある8月9日に二時間コースを貸切で陽菜を走らせようと思った。コントロールタワーで聞いて見ると、大丈夫と言う事なので
直ぐに予約をして手続きをしてもらう事にした、流石に二人だけで貸切と言うのは、アレなので、Ducatiのオーナークラブに告知を出して参加者を集めて見る事にした、料金は一人10000円、50人ほど集まってくれれば問題無いだろう。
サーキットの方は全く問題が無く午前と午後に一時間ずつ、それにピットを10ピット確保できた。
まぁ、これで軽く200万近い金額が掛かるのだが、可愛いい陽菜の為だと思えば安い物だろう。
帰宅してバイクを下ろして、陽菜のバイクを整備、まぁ特に問題は全然無いし、オイル交換だけで終了
タイヤはまたオーダーしておいたので、届いたらホイールを外して持って行けば良い。
そんな感じで編集したり、ジムに通ったりして過ごしていたら翌週の金曜日になる。
敬純は冷凍状態で数日前に届いていた仔牛のリブの骨付きの塊肉、二個を解凍して、下拵えをして
特性スパイス(イタリアンハーブを多用した敬純オリジナル)を良く刷り込んで、寝かせておく。
毎回もっと肉を食わせろと言う奴が居るので、和牛のTボーンステーキも数枚用意してある。
これらを庭のアメリカンスタイルの大型ガスBBQグリルで焼くのだ、リブは昼前に焼き始めて夕方に丁度食べられる感じになる。
その他の食べ物は一応ポットラックになって居るので参加者が持ってきてくれる事になって居る。
そして陽菜は宣言通り、キッチンでスポンジケーキの生地から作っている。
「この道具、全部使用されてますけど、どなたがケーキを作っていたんですか?」
「もちろん僕だよ、上の子供がまだ小学生の低学年位の時にね、苺が嫌いで食べられなくて、
でもショートケーキは食べたいって事で、僕がキウイやオレンジでショートケーキを作ったんだ」
それから、子供の誕生日とかには色々なケーキを作ってあげた」
「優しい良いお父さんだったんですね、羨ましいなぁ、じゃあ今日のケーキのデデコレーションはキウイを入れて作りますね、今朝美味しそうなイチジクを買ったので、イチジクとキウイのケーキになります」
「お、それは美味しそうだ、ちょっと小さいのを別に作ってくれない?明日まで待てない」
「ダメです、何子供みたいな事を言っているんですか」
とあっさり却下されてしまった。
敬純は庭のプールサイドのアウトドアリビングエリアの、テーブルやチェアを掃除して、グリルのガスを量を再確認しておく、焼いている途中でLPガスのボンベが空になったら目も当てられないからだ。
そして倉庫から出して来た『ハイネケン5Lケグ』二個はBBQ グリルに併設されている冷蔵庫にしまって置く、今からしっかり冷やして置けば、明日には美味いビールが飲める。
それからガレージのバイク達を整理して並べて、GT-Rの横に陽菜のMINI、そして一番端にスプリンターを止めて、明日は広々とカーポートが使える様にしておく。
これで準備は完了だ。
夕食はUberで寿司を頼んで、二人で食べて、そして最近の定番、ジャグジーに使ってのんびとする。
そして例によってリビングでMoto GP チェコグランプリのPracticeを観戦、
「雨かぁ」
「雨でも93のお兄さん早いですね」
「まぁね天才って言うのはマルクの事を言うんだと思うよ、今年はもう無敵って感じだからね」
「5番の人2位ですね、あ23番の人も8位」
「ザルコ選手は雨には強いからね、明日の予選の天気はどうなるかな?」
「晴れると良いですね、その方が見ていて面白いです」
「そうだね、さてでは寝ようか」
「はい、あの今夜は」
「うん、わかっているから大丈夫」
敬純は鼻が良いので、体臭の変化でわかってしまう、陽菜はお月様が出た様だ。
土曜日は朝から、家の掃除、まぁ余計な荷物を片付けて、入って欲しくない部屋はドアを閉めて、みたいな普通の事、トイレにはゲスト用のハンドタオルを沢山用意したり、基本的には外でのパーティになる
ので、リビングの掃き出し窓にスリッパを用意して置く。大量のプラスチュック皿とプラスチック製のナイフやフォーク、プラスチックのカップなども準備、庭のテーブルに使い捨てのテーブルクロスを敷いて……まぁ、この辺は毎年の事なので、特に問題は無し。メインのリブの下拵えは済んでいるので、焼く前に室温に戻す為にキッチンに出して置く、空いた冷蔵庫のスペースは陽菜は朝のうちに仕上げたケーキを入れた。
昼前敬純は肉の調理を開始する、140°にセットしたBBQオーブンにリブを二枚並べて、蓋を閉める
このまま三時間、30分毎にアップルジュースを霧吹きで吹き付ける。
こんな風にしていると最初に来たのは、バイクでは無く車で来た横須賀や湘南在住のDuati仲間四人だ、女性が二人と男性が二人、夫婦でもカップルでも無いただのバイク仲間の四人だ。
「焼きおにぎりです」町山嬢「ごめん俺ポテチ」岡田氏「ポテトサラダだよん」上村嬢「シャトールミエール 2014 マグナムボトル、美味いぞこれ」広岡氏、そして高村夫妻も到着、「いつものレモネーズオードブル、毎年同じですまん」
最後に一際五月蝿い排気音の車が到着『Lamborghini Urus』の上の息子翔とその新彼女真希、それにサプライズでなんと下の息子の翼とその妻まゆみ……結婚したとは聞いていないだった。
「あの、お口に合うか」と真希が持参したのは「カプレーゼ」
「ありがとう、好物だ、まぁ座って」
「親父誕生日おめでとう、先月結婚したまゆみだ、まゆみは日系のクオーターだけど日本語は殆どダメなんだ、これテキサス土産のBBQソース」
「お前、結婚する前に報告するものだぞ、まぁもうどうでも良いけど」
陽菜を除いて、息子達のパートナ以外は全員顔見知りだ。
「所で、渋川さん、その女の子は誰?」
「初めまして、ハウスメイトの佐伯陽菜です、モトブログ『ゆかりんちゃんねる』やってます、よろしくお願いします」
と陽菜もあいさつする。
「何ぃ、ハウスメイト、けしからん」
とDucati組の男性陣が叫ぶ。
「オヤジ、後で話がある」
と言うのは長男だ。
次男は会話をまゆみに通訳している。
「よし、では取りビーで乾杯ね、みんな席についてビール持って」
「音頭は俺が取る、敬純還暦おめでとう」
「馬鹿野郎、まだ10年早い」
「乾杯!!」
とこんな感じで、ガヤガヤと持ち寄った料理や肉を食べながら、パーティは進んでいく。
「ステーキ食う奴は?」
四人ほど手が上がったので第二陣のTボーンステーキを焼く、陽菜は皿を片付けたりビールを注いだりして甲斐甲斐しく働いている。
「所で、お前いつ日本に来たの?」
「一昨日、兄貴の部屋に泊めてもらっている、仕事場が近いんだ」
「そうか、仕事の方はどうだ?」
「彼女と新しく作った会社が好調でね、IPOしたんだ、親父の名義の株あるから好きにしてくれ」
とそこにまゆみが来て英語で
「結婚の挨拶が遅れて」
と言ってから日本語で
「すみませんでした」
と言う
「うちはそういう堅苦しい関係じゃないから気にするなって言ってくれ、所で今はどこに住んでいるんだ?」
「ああオースチンだよ、その内に遊びにきてくれ」
「何、オースチン? おお行くぞ、来年5月に行くから泊めてくれ」
「良いけどなんで5月、あ……親父は変わらないな」
翼に通訳されたまゆみは
「ぜひ来てください、私の両親も紹介したいです」
と言ってくれた。
陽菜は、翔とその彼女と話している、翔も金融系の動画のチャンネルを持っていて、人気がある、真希の方は、典型的な港区女子のSNSインフルエンサーの様で、陽菜の登録者数25万以上と言う所に食いついた様だ。
翔が敬純の横に来て
「親父、そう言う事なのか?」
「そう言う事だ」
「この間、別枠で運用してくれって送金された1000万って彼女の分?」
「そうだ、頼むな」
「しかしあの人が知ったら、また怒り狂うだろうなぁ」
「お前まだ連絡取り合っているのか?」
「いや全然、ほらあの広告屋の間男、なんか大きなミスして左遷させられたみたいで、金に困っているみたいだ、俺の所に何回も金の無心があった、親父がこの家買った時も怒り狂って大変だったのに、今度は若い彼女と住んでるなんて知ったら大変だろうな」
「もう俺には関係ないからどうでも良いな」
「敬純さん、ケーキ出しますか?」
「あ、そうだねお願い」
「俺が手伝うよ」
と言う事で陽菜謹製のイチジクとキウイのショートケーキが登場して、55の蝋燭がたてられて
「歌はやめろ」
と言う敬純の意思を雅俊以下全員が無視してハッピバースディを合唱して、敬純が火を吹き消した。
これでお前の方が年上になったな、ジジイおめでとう。
「意味わからん、二ヶ月しか違わないじゃないか」
「こう言うのを『五十歩百歩』って言うのね」
と真理子さんは笑っている。




