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第15章 メンヘラ女子は可愛い

第15章 メンヘラ女子は可愛い


 楽しいランチの後は二人でジムに行った。体を鍛えるのは大事だから。

そして帰りに鮮魚店を覗いたら、新鮮な真鯵がパックで売っていたのでそれを買って帰宅、

戻ってきてまた編集作業、とにかく北海道の分が多いので終わる気がしない。

 しばらくしたら、陽菜が書斎に入ってきて

「あの、編集作業一人でするの嫌です、この部屋で一緒にしても良いですか?」

と言い出した、敬純の書斎は、本来は家の南西の角にあるベッドルームの一つだ。

窓は、西側の海側にあり、部屋の入り口は北側、敬純のデスクとチェアは南側で南側の壁には書棚を兼ねている棚がある、東側の壁は「サイドボード」が有って、昔の大型の優勝トロフィーや最近の小さな盾等が飾られている。

 デスクは結構大型なので二人並んで座る事はできるが、二人でモニターを並べて作業は無理だ。

つまり、この部屋に陽菜の編集用PCを置く様にするには、サイドボードをどこかに移動して、そこに新たにPC用のデスクとチェアを置くしか無い。

……さてどうするか、と考えていると、返事が返ってこない事で、断られたと思ったらしい陽菜がだんだん涙目になってきた。

「あ、ごめんごめん、部屋のレイアウトをどうしたら陽菜の作業スペースが確保できるか考えていたんだ」

ちょっとリビングへ行こう。

 リビングルームにも同じ様なサイドボードがあり、こちらはインテリア装飾を兼ねた敬純の昔のヘルメット、DucatiやGT-Rの写真集、それに植栽の鉢などが置かれている。

「ここを整理して、書斎のトロフィーなんかをこっちに運んで、あのサイドボードを処分すれば、陽菜が

作業するPCデスクとが置けるね、それで良い?」

「はい、我儘を言って申し訳ありません、でもなんか本当に一人で作業してると寂しくなっておかしくなりそうなんです」

「じゃぁ最初に、僕のデスクと同じティストのPC用デスクを探さないとね、一緒にネットで探す?」

「はい、敬純さん、大好きです」


 敬純が使用しているのはイタリア製の『Quadrifoglio e-10』と言うモダンでお洒落なちょっとお高いデスクだ、これに『Ergohuman』の『PRO2 Ottoman』と言うチェアを合わせている。

 つまり同じ様なモダン系の白を基調としたデスクなら部屋の雰囲気に合う事になる。

陽菜が選んだのは、『CYBER--GROUND』と言うゲーミングデスクのブランドで、160cmの幅のホワイトのデスクだった。

「これ可愛いです、ヘッドホンフックやドリンクホルダーとか付いているし……」

と言う事で敬純のと同じチェアと合わせてオンラインで購入。

 二人でリビングのサイドボードーを片付けで、書斎の荷物を移動する。

「このトロフィー全部、敬純さんのなんですよね?」

「そうだよ、人のを飾っても意味無いでしょ」

「すごいですね、優勝、優勝、優勝ばかり」

「いや、優勝のしか飾ってないから」

 そして、書斎のサイドボードは分解してガレージに運んだ、そして掃除機をかけて、スィーパーで床を拭いて準備は終了、あとは、明日か明後日位に荷物が届くのを待つばかりだ。

「編集はここでするとして、配信はどうする、Liveとかあるから向こうの部屋の方が良いよね?」

「あ、そうですね、どうしよう」

「ノートPCでもライブ配信はできるから、向こうにはそれを置いてファイルを共用するって感じでどう?、この家にはNASが有るから、それを使える様にしてあげる」

「えっと、意味は良くわかりませんけどお願いします」

っと言う事で、Live配信用のスタジオに置くノートPCもオンラインで購入、敬純も愛用しているMSIの製品で『Stealth 16 AI Studio A1V』と言うモデルにした。


 ちょと前まで涙ぐんでいた陽菜は今は満面の笑顔になっている。

「これで安心して編集できる?」

「はい、ありがとうございます」

「でも、今日はどうするの、届くまで編集はお休みする?」

「うー、どうしよう」

「僕がMac Book持ってスタジオに行くよ、側に居てあげる」

「本当ですか、ありがとうございます」

と陽菜はしがみついて来て、キスをしてくる。

 敬純はそんな陽菜が可愛くて堪らなくなって、お姫様抱っこで抱き抱えて、二階のスタジオまで運んだ。途中でベッドルームに運びたい欲望が頭を過ったが、後の事を考えて思いとどまった。

 

 リビングのソファから、シートを取り外して、スタジオの床に並べて、その上で横になって

自分の作業をする事にする、簡単な作業程度ならMac Bookでも可能だ、陽菜はたまにこっちを振り返って、敬純が要るかを確認して、また編集作業を続けると言う感じを繰り返している。

「思い切りデジャブーだなぁ……」

まだ、会社員だった頃に、新人の女子社員の相談に乗っていたら、こんな状況になった事を思い出した。結局、その子がリスカ等色々をして精神病院行きになってしまったが、その時の経験があるので、

 適度に相手をしてあげるのが精神的に安定させる唯一の方法だと学習している。

そして自己評価が異常に低いので、些細な事でも褒めると言う事も大事だ、実はメンヘラ系女子は対処法さえ誤らなければ、尽くしてくれるし、何より態度が可愛いのだ。

 陽菜は集中して編集作業をしている、そして次にこっちを向いた時に

「夜の食事はどうする、僕が作ろうか?」

と言うと

「私が作ります、待っていてください」

と陽菜は、編集を中断して、キッチンへ向かった。

なので敬純もキッチンへ移動して、カウンターのスツールに座って、料理をする陽菜を見ながら作業。

『本当に嬉しそうな顔するなぁ、可愛いい』

と鯵を器用に下処理している陽菜を見ている。

「もう、あんまり見ないでください、恥ずかしいです」

と陽菜は言うが可愛いので仕方は無い

「いや、可愛いなぁと思ってね」

「バカぁ」

 どうやら今夜のメインディッシュは真鯵の塩焼きの様だ、敬純が自分では絶対に作らない料理だ。

「今夜は日本酒が良いよね、ワインセラーから持ってくるね」

「はい、お願いします」

 ワインセラーには日本酒の四合瓶が各種保存してある、その中から『純米大吟醸 洗心』をチョイス

冷蔵庫に入れて冷やしておく。

 『鯵のなめろう』『鯵の塩焼き』『豚汁』にご飯と言うのが今夜のメニューだった。

「うーん、このお酒とっても美味しいですね」

「僕の一番好きな日本酒、いつか新潟の蔵元に行ってみたいと思っているんだ」

「良いですね、新潟もツーリングで行きたいですね」

「でもね、新潟の魚が美味しいのは冬なんだよね寒鰤とかね、冬の新潟をバイクで走るのは無理があるからねぇ、普通に新幹線で旅行に行くしか無いんだよね、冬になったら行こうか?」

「ツーリングじゃ無くても一緒に旅行に行って良いんですか?」

「なんで、ダメだと思うの?」

「私、取り柄がバイクに乗れる事しか無いかなって……お洒落な女の子っぽい服とか持ってないし」

「確かにそう言う陽菜が特別可愛いって所はあるね、でもメイド服もレースクィーンの姿も凄く可愛かったよ」

「ありがとうございます」

「あ、豚汁お代わり、美味しいね」

「はい!」

この笑顔に完全に嵌ったと思う敬純だった。

 お酒が少し余ったので、それを持ってジャグジーに入る。

「極楽とはこの事だね」

「はい、そうですね」

 今夜は静かに寝る事ができた。


 結局デスクやチェアが届くのに二日掛かり、その間は敬純がスタジオの方に行って作業をする羽目になった。そして陽菜はその間、ドンキで新たに購入した更に際どいメイド衣装を着て編集をしている。

「敬純さん、これも可愛いですか?」

と言われて可愛くないなどと言えない敬純だったが、

『今度は褒め方を考えよう』

と心の中で思った、露出度が高すぎて全然自分の作業に集中できなかったからだ。

 

 そうこうして居る間に、頼んでいたスプリンターの改造が終わって、カスタムショップから連絡が入った、なので受け取りに行く事になるのだが

「キャラバン・トランスポータ、どうされるんですか?」

「ああ、レース仲間に声をかけたけど、値段の折り合いがつかなくてね」

「ウチで下取りしましょうか? 180万でどうでしょう?」

「悪く無いね、じゃ書類持ってキャラバンで行くよ、よろしく」

と言う事で、キャラバンと入れ替える形でスプリンターを持って来られる事になった。

 今回はホワイト一色だったスプリンターをフルラッピングする事で、赤いDucatiカラーに『Ducati Corse』の文字とロゴ、その下に『Shonan Sports Riders』と白で書かれているデザインになっている。

以前のキャラバンより数段階グレードアップしたトランスポーターとなった。

 少し派手かなと思ったが、

「わぁ、前よりずっと格好良いですね」

と陽菜が言ってくれたので、OKと言う事にした。

 そして、陽菜の為にオーダーしたPanigale V2Sのサーキット専用車も完成したので引き取りに行く。

「え? もしかしてこれ私が乗って良いんですか?」

と一緒に行った陽菜は、涙ぐんで喜んでいる。

「これでサーキット一緒に走れるね、17日は晴れると良いね」

「はい、本当に嬉しいです」


 家に帰ってバイクを降ろして、ガレージで陽菜に合わせてハンドルやステップ等のポジションを変更

それから、サーキット用の各種スイッチ類を教えて、一番大事な『グランプリシフト』シフトパターンが公道用と違う事を忘れない様に覚えてもらう。通常の公道用バイクはシフトペダルを上げてギアを上げるが、サーキット仕様は踏み込んでギアを上げる様になっている、これはコーナーバンク時にシフトアップしやすくする為だ。そしてPanigale V2Sにもクラッチを握らないでシフトアップ、シフトダウンができるクイックシフトが搭載されている、まぁこの辺は実際に走って感覚で覚えないといけないのでサーキットを何周かすれば自然に覚えるだろう。

 敬純のバイクと唯一違うのは、陽菜用のバイクの車載カメラは2台で、後方テール部分に360°カメラの『Insta360』を装着できる様にした事だ。これで配信用の動画撮影の幅を広げる事ができる。

 土曜日にタイヤも交換して全ての準備が終わった。陽菜も木曜日が来るのを楽しみにしている。天気だけが心配だ。

 そして、例のマーケティング担当の役員から、富士スピードウェイで行われている『GT World Challenge Asia Powered by AWS & Japan Cup』の会場に展示されて居る、敬純のGT-Rの画像が送られて来た、カーボンの綺麗な模様のホイールは美しいが、なんとカーボン製のフロントフードに、このホイール会社の特大ステッカーが貼られていた。まぁ綺麗にして返してくれるなら問題は無いが、そのままだと恥ずかしくて乗れなくなる。


 陽菜がアップした千葉のツーリング動画はかなりの反響だった。

新しいAGVのカーボン製のシステムヘルメット、Ducati純正のツーリングスーツ、ダイネーゼのブーツとグローブと今までと全然違う『ゆかりん』の装備にコメント欄は

「すげぇ、これもしかして全部案件?」

「うわ、バイク含めて総額幾らだよ」

「一緒に走っている人居るよね、もう一台のDucatiの人誰?」

「目撃情報があったお父さんじゃないの?」

「ゆかりんがキラキラ系に落ちてしまった」

みたいな感じで、やはり今までの素朴な清純派というイメージの方が良いのかとも思うが、

「今の方がずっと可愛いい」

「ヘアスタイル、ショートにしたのが素敵」

みたいな女子らしきアイコンのコメントもある。

「この間の富士のクラブマンでゆかりんレースクィーンしていたって動画上がってる」

「え、それどこ?」

「自称モデル系の動画、この人」

「見てきた、マジだった」

なんて言うコメントもあったので、敬純はそのチャンネルに行ってみた。

 「今日はレースクィーンのお仕事で富士に来てます、なんか有名なバイク女子がいるらしく、私のサポートするチームの人とみんなで見に来てます、あ、あの娘だ、えーうそ、めちゃ綺麗やん、本当にバイク女子?」

みたいなコメントで、グリッドから戻ってくる陽菜が少しだけ映っていた。

 確かにこの娘よりは陽菜の方が遥かに可愛いのは確かだ。


 そして、陽菜の動画は最後に

「今日はこのホテルに泊まります」

と『三日月シーパークホテル安房鴨川』の前で終わると、

「前はライダーズハウスに泊まってなかった?」

「そこお高いホテル」

みたいなコメントもあった。

 やはりイメージチェンジした事での戸惑いみたいなコメントが多かったと思う。

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