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第13章 富士スピードウェイ

第13章 富士スピードウェイ


 梅雨の真ん中あたりの筈だが、今日は良い天気でもう夏と言う感じだ。

近所のカフェでハンバーガーのランチを食べて、一緒に食材のお買い物、陽菜は腕を組んで一緒に歩くのが楽しいらしくご機嫌だ。普通のスーパーとイタリア食材のスーパーと両方回る。

 

 帰宅して、食材をしまって、編集作業とか色々を始める。

昨日送ったバン専門のカスタムショップからメールの返事が来ていて。

「国産車だと、バイク二台並列のリフトは無理です、メルセデスのスプリンターなら施工実績があります」との事だ、確かに、どっかでそんなバンを見かけた様な気がする、ただ問題はスプリンターはもう正規のディーラが無いので、並行輸入か中古しか無いと言う事だ。

 なのでどこか在庫ある所を知らないか聞いてみたら、横浜のスプリンター専門の業者を教えてくれた。

連絡すると、今何台か在庫があってカスタムショップとも付き合いが深いとの事なので、急遽見に行くことにした。

「バンの車屋さん行くけど、どうする?」

と陽菜に聞くと

「もちろん行きます」

と即答だった。

 なのでキャラバンのパッセンジャーシートに陽菜を乗せて、横浜の青葉区にある業者の店に向かう、葉山からは1時間位だ。

「眺めが良いんですね」

と初めてキャラバンに乗る陽菜は楽しそうにしている。

 店に着くと、どうやらPorscheやBMW等も扱っている店の様だ。

既にカスタムショップの方から連絡が入っていた様で、在庫を見せてくれた。

 敬純はキャラバンとスプリンターを並べて比較してみた。

 陽菜は

「あれ、このマークベンツですか?」

と言って驚いている、車に疎い陽菜でもベンツは知っているらしい

「確かに、中はキャラバンよりずっと広いんですね、背も高いし」

「バイクを二台積めるリフトを入れるんですよね?」

「そう、今は一台しか積めないので」

「では、これお薦めです『スプリンターL3H2 2.0L 直4ターボ OM654 190PS 9速AT』です、車両本体価格で1000万と値は張るんですが」

「エンジンはディーセルだけなんですね」

「はい、それと、今有るのは欧州仕様の左ハンドルだけです」

「なるほど、うちの……いやもう違うか……『インタースター』とほぼ同じスペックなんですね」

「あれ?自動車関係の方なんですか?てっきりバイクの方かと」

「あ、いや自動車屋の方はもう退職してますから、今は趣味でバイクのレースとかやっているんです」

「そうですか、ではPorscheも一度いかがですか、楽しいですよ」

「はは、僕は今は四輪はR35GT-Rに乗っているんです、足回りの電子制御は僕が設計したので愛着があるんですよ」

「おーそれは凄い、今度足回りのチューニング教えてください」

「はは、良いですよ、では、これ買います」

「ありがとうございます、では手続きをさせていただきます」

と言う感じで、話を聞いていた陽菜が

「敬純さん、値段って交渉しないんですか?」

と不思議そうな顔をしている。

「うん、大体の価格はわかっているし、並行輸入だからその分の手数料も想像つくからね」

「そうなんですね」

「そう言うお客様ばかりだと助かるんですけどね」

と1000万以上するバンが即決で売れたので、店のオーナーは上機嫌だ。

「では、必要書類が届き次第、登録手続きに入らせていただきます、銀行振込はこちらの口座へお願いいたします」

と言う事で契約書にサインをして、手付金を払って終了、その場でカスタムショップに連絡すると、驚いていたが、リフト制作に取り掛かってくれる事になった。

 これでいつ陽菜のPanigale V2Sが来ても大丈夫になるし、Multistrada2台を積んで長距離ツーリングにも行ける様になるだろう。

 そして『ダイネーゼ』の店に行って陽菜のスーツを受け取る、ついでにスーツの下に着る『DRY SUIT LADY』と『DRY LONG SOCKS』も三組購入。

 これでバイクができれば、いつでも陽菜のサーキットデビューが出来る事になる。

帰宅して陽菜は早速スーツ一式を着用、

「これ、こんなに歩きにくいんですか??」

「うん、バイクでサーキットを安全に走る為の装備だからね、慣れればフル装備で走れる様になるよ、それにしても良く似合っているね」

「嬉しいです、早くサーキット走りたい」

 

 夕食の準備は今日は敬純がする、献立は『ミネストローネ』スープ、『ロメインレタス』のサラダ、

『コトレッタ』(ミラノ風カツレツ)がメイン、それにご飯やパンではなく『ポレンタ』を合わせる。

料理を終えて陽菜を二階に呼びに行く、陽菜は真剣な顔でヘッドフォンをして編集作業をしている。

 肩を叩いたら飛び上がって驚いた。

「あ、ごめんごめん、食事だよ」

「もうそんな時間ですか、すぐ行きます」

 敬純は先にダイニングに降りて、今日の料理に合うイタリアの赤ワイン『バローロ・アリオネ

ジャコモ・コンテルノ 2007年』を開ける。

「あ、このワイン美味しいですね」

と陽菜も気に入った様だが、ラベルをスマホでスキャンして驚いている。

「嘘?……、ワインてこんな高いんですか?」

「うん、美味しいワインはそれなりの値段がするよ」

「私、何も知らなかったんですね、あ、このビーフカツ美味しいです、この黄色いのは何ですか?」

「ポレンタと言うトウモロコシのお粥みたいな物かな、イタリアの主食の一つだよ」

「不思議な味ですね、でも美味しい」

「どう、編集は捗っている?」

「はい、納車編は終わりました、今は千葉ツーリングを編集してます」

「そうか、納車のやつはいつ上げるの?」

「もう上がってますよ、後で見てくださいね」

 陽菜が料理を食べ終えたので、今日のデザート自家製『サクランボのジェラート』を出すと

もの凄く喜んでいる。

 陽菜は高いワインよりこっちの方が好きな様だ。


 食事の後陽菜はまた編集に戻り、敬純は片付けをして、自分も書斎で千葉ツーリングの編集を始めた

その合間に陽菜の納車式の動画を見る。

 陽菜はバイクの紹介をして、各部の機能の解説をする。

「あれ?なんか感じ変わった?」

「話し方が前と違う?」

みたいなコメントや、

「残念、あっちの世界の人になってしまった」

「まさか新型、Multistrada V2Sとは」

「え、めっちゃセレブバイク」

「お高いんですよね」

「ヘルメットAGVになっている?」

「Yamahaに乗っていて欲しかった」

「何故にDucati」

みたいなコメントが並んでいる。

 そして陽菜は、何故このバイクにしたかと言う事を、V2をバックに話す。

「前にコラボで一緒に走った三人の方がみんなDucatiだったんですよね、ツーリング用の大型バイクを

探していた時だったので、色々相談して、ついでに試乗もさせてもらったんです。その時に『サバトラ』さんのMultistrada V4が良いなと思ったんですが、私にはちょっと重いかなと、そうしたらこのバイクの事を教えてくれて、試乗したらもう最高だったので、決めました」

と笑顔で締めた。

「ツーリング動画楽しみにしてます」

「頑張ってね」

みたいな好意的なコメントが溢れていたが、。

「サバトラ、余計な事するな」

みたいなコメントがあって笑った。

「Ducatiファミリーにようこそ」 

「Ducatiの事ならなんでも聞いてください」

「オーナーグループでお待ちしてます」

みたいな、Ducati乗り達からは好意的な……下心丸出しな……コメントも多い。


 全部見終わって敬純は

『千葉ツーリング編、どんな編集になるか楽しみだな』

と思いながら、自分の動画のテロップやAIヴォイスに喋らせる内容を考える。

 出だしは、

『新車のMultistrada V2を買った美女から誘われてツーリングに行きます』

と言う感じにしてみた。アイコン画像は『千葉フォルニア』で撮った『ゆかりん』事、陽菜とV2の画像にする事に決める。

 それから『海ほたる』でのランチの様子、あとは走行風景とか途中の景色とか適当に入れて、ホテルの前でバイクを停める所で終わりにする。ホテル内や、夕食のシーンはバッサリとカット。

 アップしたらどれだけのアンチからのコメントが付くのか楽しみになってきた。

モニターの前でニヤついていたら、陽菜が書斎に入ってきた。

 「ジャグジー一緒に入りませんか、冷えたシャンパン飲みたいです」

と誘いにくる。

 丁度キリの良いタイミングだったので、一緒に入る事にする。

温泉気分を味わえる入浴剤を用意してジャグジーにお湯を追加しながら追い焚き機能で適当な温度にして入る、シャンパングラスを合わせて、のんびりと自宅で温泉タイム、これはとても良い気分だ。

 ただホテルの露天風呂と違うのは洗い場が無いので、後で室内の風呂場のシャワーを使う事になるのが

面倒と言えば面倒だ。

「さっきの動画のコメント読んだよ、面白かった」

「オーナーグループって入るのが普通なんですか?」

「そうだね、そう言うのが嫌いな人は入って無いけど、僕も高村夫婦も同じグループだから陽菜もそこにすれば良いかな、そうすればイベントとかに一緒に行けるしね」

「はい、後で入り方教えてください」

と密着してのキス、今夜は夜のお勤めをしないといけない様だ。

 

 7月になった、敬純は土曜日からレースの為に富士に行く予定にしている。

なのでその前にGT-Rを陸送業者さんに取りにきてもらった、しばらく寂しくなるが仕方が無いだろう。

 そして天気予報によると週末は雨の可能性もあるので、全部で3組あるスペアホイールの一組に『Pirelli DIABLO RAIN』を装着して持って行く事にする。残りのホイールセットは予選用のPirelli Diablo SuperbikeSCXと本番用のSC1だ、レースは七周なのでソフト寄りのコンパウンドでも大丈夫なのだ。たかが草レースになんでここまでと言う声も聞くのだが、敬純は真剣に遊んでいるのだ。

 ついでにプリンタで『For Saleキャラバン・バイクリフト付き売ります』の看板を作っておいた。

2020年式だが、レースの関係者なら200万位で、すぐに買いたいと言う人が居るかもしれない。


 そして、陽菜もピットクルーとして登録してあり、例のレースアンバサダーの衣装を用意させる、着るのは日曜日の決勝レースの時だけの予定だ。それと一応盗撮とかの心配があるので、普段着のミニスカは封印させておいた。

 毎日日帰りしても良いのだが、面倒なので『富士スピードウェイホテル』の『グランプリスイート サーキットビュー 』のキングベッドの部屋を確保。土曜日に練習走行をしてから、泊まる事になる。

 ちなみに敬純が出場するのは『オーバー40-レジェンド』と言うクラスで、最年長は67歳、最年少は42歳 と言うオヤジとジジイしか出ないクラスだ。

 それでもラップタイムは敬純や雅彦の様に現役世代の1”46秒台と遜色ないタイムで走る者も居る。

もちろん2分以上かかる人もいるのだが、まぁ仕方が無いだろう。

 

 土曜日は少しゆっくり目に出て、パドックに到着すると、既にいつもの顔ぶれが陣取っている。

敬純もその横にバンを止めて、設営。

 日曜日にはピットが使えるが、今日はここが仮ピットになる、

「遅いぞ、負けるのが嫌で来ないのかと思った」

と言って来るのは雅俊だ、陽菜は雅俊と真理子に頭を下げて挨拶をしている。

 敬純がバンの横に『For Saleキャラバン・バイクリフト付き売ります』の看板を出すと、すぐ雅俊が

食い付いて来た

「お前、これ売るの、リフト付きで? なんで、まさか引退するとか言わないよな?」

「違う新車に買い換え、マニアック過ぎて普通の店には売れないだろうから看板を作った、買わない?」

「うーん、俺は欲しいけどな……」

「真理子さんにブランド物のバックでも買えば、許してくれるんじゃない?」

「その分負けてくれるか?」

「嫌だ」

 なんていつもの会話をして……練習走行が始まるのが15:10なので、その前に受付と車検を終わらせてしまう。

 陽菜は胸に自分で作った名札……配信者名の『ゆかりん』とSNSのアドレス入り』……を付けて、撮影がてらパドックの散歩に言って、早速パドックの人気者になっていて、モトブログの配信をしているサンデーレーサー達に囲まれて困った顔をしている。

 出場者の中には自前でレースアンバサダーを用意している人もいるので、既にセクシーな衣装で歩いている女性も居た様で。

「私も着替えます」

と対抗心を露わにしているので、許可をすると、嬉しそうにバンの中で着替えて出てくる。

 自分で動画を見てアンブレラを持って歩く綺麗な歩き方を練習したとかで、かなり様になっている。

「凄く綺麗になっているじゃない、お世辞じゃなく見違えるとはこの事ね、やっぱり女は男で変わるのねぇ」

「おい、なんでそこで俺の方を見る?」

 相変わらずこの夫婦は面白い。


 そんな訳で、ランチタイムには、レースアンバサダー姿の陽菜を連れて、ランチを食べに『CRANE Garden』に行く羽目になり、雅俊と真理子に冷やかされる。

 陽菜は『駿河湾産桜えびとシラス丼』敬純は『完熟トマトのハンバーグ定食』だ、

雅俊は

「ここは『かつ丼』を食う所だろう」

 と言って、験担ぎをしている所がジジイたる所以だろう、真理子さんは品良く『デミグラスオムライス』を食べていた。

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