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3 婚約者ができました!

 ◆


 一ヶ月(三十日)で若い女性向けのお守りを作ることになった、マリアーナです。

 これから魔術式の組み合わせを考えて、デザインを考えて、新しいタイプのお守りを製作しなければなりません。

 お守りの術式は既に定型化しているのでそこまで悩まないけど、形を一から作るとなると少々時間がかかる。

 まあ、個別に何々に特化したお守りにすることは可能だけど、今回はそういうのはナシ。

 あくまで試供品なので、術式は能力(バフ)向上のタリスマン型と悪いものを除けるアミュレット型の二種類を、お互い邪魔せず、効果が最大限に発揮できる様に設定。だけど試供品だから、持続期間を通常よりも少し短めに。

 気に入ったら効果を選んでもらって、設定するようにする。

 でも若い女性向けなので、それなりに映える形にはしたい。


 さて、どうするか。


 今までのお守りは、紙に魔力石を溶いたインクで術式を書いた簡易的なもの、小さな金属に術式を彫金して魔力石を埋め込み、それをペンダントトップなどにしたものなどがある。

 ちなみに紙のやつは一回限りの使い捨てだ。

 アクセサリータイプのやつはどうしても形がゴツくなりやすいのだが、私が今まで作ってきたやつはエリアが私から買い取った後、騎士団などで使っているらしくそれでも問題はなかった。

 女性が使用する場合には、メチャクチャ小さな巾着袋(ポーチ)に入れて持ち運んだりする。

 

 しかし、どうもこのデザインは若い女性には不人気らしく、あまり需要がない。

 元々そういった層に受け入れられるデザインのお守りを作る予定ではあったので、一応案はある。


 女性好みのアクセサリーや、扇子など女性が普段身につけたり持ち運ぶような物の形にすれば、それなりの人気は出るだろう。

 とりあえず今回はアクセサリーに絞るか。他のデザインも考えたいけど時間がない。

 それにはまず若い女性に人気のデザインを知らなければならない。


「なら女性に人気のアクセサリーショップへ行くしかないか〜」


 ララを呼んで出かける準備をしようとしていたところで、部屋をノックされた。


「お嬢様、本日の午後にお客様がいらっしゃるとのことで、先触れが届きました」


「え? 誰?」


「エリア・モルダナ様です」


「ええ!?」


 昨日の今日だよ?

 仕事が早いな〜。


「わかったわ。着替えるから準備を手伝ってちょうだい」


「かしこまりました」


 ◇


「エリア・モルダナと申します。本日はマリアーナ嬢にお願いがあって参りました」


「は、はあ。一体どのようなことでございましょう?」


 同席しているお父様の顔が青い。

 なんか緊張してる?


 まあ、私も少し緊張しているけど。


 いつもの魔法使いローブではなく、黒の礼服に身を包んだエリアは普段と違い、イケメン度がマシマシになっている。

 前髪も上げていて、私はこの時初めてエリアの目の色が赤であることを知った。

 立ち居振る舞いも紳士っぽいし!


「はい。私と婚約をしていただきたいのです」


「こ、婚約ですか!? マリアーナとモルダナ公爵様とですか!?」


 ん? お父様、今、公爵って言った?


「ええ。マリアーナ嬢とは仕事で取引をさせていただいておりまして、その、出会った頃から私が惹かれておりまして……」


 そう言って、顔を赤らめるエリアは、本当に私のことが好きみたいだ。

 こっちも少し照れてしまう。

 いや、それより、今、公爵って言われてたよね?


「どうか、私と婚約していただけないだろうか?」


 照れながら上目使いにこちらを見てくるエリア。

 もしかして、エリアって女性にモテるのでは?

 ……なんか、モヤっとするな。なぜだ。


「マリアーナ?」


「あ、は、はい! 喜んでお受けいたします!!」


「良かった。それではこちらの書類にサインを──」


 そんなわけで、エリアとの婚約はあっさりと整った。

 書類はエリアが連れてきた従者が、急いで神殿に提出しに行ったので、私とエリアは二人きりになった。

 お父様はなんか色々限界だったので、退出してもらった。


「エリアあなた、公爵様なの?」


「そうだよ? 知らなかった? 結構長い付き合いだと思ったけど?」


「そ、その、お守り作ることにしか興味がなくって、エリアのことは若くして魔法省に勤めている凄い魔法使いとしか認識していなかったというか……」


 エリアの懐具合にしか興味がなかったから、とは言えない。


「あー、やっぱりそんな感じだったんだ。まあ、それが俺にとっては都合が良かったというか、身分を気にしない君と一緒にいるのは、居心地が良かったから別にいいんだけど」


「そうなの?」


「だって俺、自分で言うのなんだけど、すごい魔法使いで公爵だよ? しかも若くてイケメン。俺の顔と肩書きだけしか見ないで言い寄ってくる輩の多い事! 辟易しちゃうでしょ、そういうの」


「まあ、そうかも?」


 この人、自分でイケメンて言ったな。


「でもマリアーナはそうじゃなかったから」


「私はお得意さまとして、エリアの懐具合しか見ていなかっただけだよ?」


「でも、マリアーナとの会話はとても楽しかった!」


 と、エリアは笑う。

 いつものエリアだ。


「まあ、私もお守りについて熱く語れるのはエリアだけだったものねぇ」


 お守り研究にのめり込みすぎて、学園ではお友達が出来なかったのだ。

 一応、私は本人の魔力量は関係ない魔術科にはいたけど、お守りの事を話し合えたのはエリアだけだった。それぐらいお守りって不人気なのだ。作る方は。

 だから、やり直しの事を真っ先にエリアに相談した。

 

 これって、つまり──。


「エリアって、私にとっても大切な人だったのね」


「なっ──!?」


 エリアは真っ赤になって、顔を両手で覆ってしまった。


「ちょっと、どうしたのよ?」


「そういう不意打ちヤメテ……」


「???」


 何か不意打ちした?


「まあいいわ。そんなことよりエリア、市井に行くの付き合ってよ」


「市井?」


「お守りのデザインは、アクセサリーとか若い女の子が好きそうな形にしようと思うんだけど、流行りのデザインとか調べたいのよ。あいにくそういうのには疎くって」


「ああ、それなら協力しよう。明後日はどうだ?」


「良いわ。決まりね」


「……その、これってデートということでいいか?」


「そうねぇ。いいんじゃない? 私たちは婚約者同士になったんだし」


「そうか、ならしっかりエスコートはさせてもらうよ」


「楽しみにしているわ。あ、せっかくだから人気のカフェにも行きましょう!」


 そういうわけで、デートの日にちが決まった。

 なんだかすごく楽しみだ。

 あ、私友達と一緒に放課後カフェ行ったりとかいう、青春ムーヴした事ないわ。

 

 いや、前回の時は、バルド様と婚約していた時に、何度か行ったか。

 でも、結婚前はバルド様は優しかったけど、一緒にいて楽しいとはならなかったな〜。


 私、本当にバルド様のこと、マジでそこまで好きでは無かったのね……。






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