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創作史上最強の勇者の物語は『短編読み切り』で十分!な物語

作者: 皇南輝

 太古、人類世界には神と悪魔が共存した時代があった。しかし、光と闇が人類世界で併存するには、あまりにも不調和であり混沌を極めた。そこで、神々と悪魔たちは人類世界の支配権をめぐって戦争を引き起こした。


 人類世界に住まう人間、エルフ、ドワーフ、ホビット、ノームなど各種族は神と悪魔のそれぞれの陣営に属し、戦いを繰り広げた。それは剣と弓、魔力による戦いだった。


 数百年に及ぶ激しい戦争により、神々と悪魔たちは肉体を失い、それぞれの世界である神界と魔界へと帰還していった。

 神々と悪魔たちが去ったあとに残されたのは、人間やエルフたちといった種族、それらの混血種、そして神々や悪魔たちが創造した精霊や魔族、モンスターたちだった。


 神々や悪魔たちが人類世界を去ったあと、人間たちの中から勇者アドムライハルが現れた。

 勇者アドムライハルは、エルフやドワーフたちと協力して人類世界を混沌と無秩序から解放し、世界に平和を築きあげた。やがて、勇者アドムライハルは王位に就き、その王国は千年続いたのだった。



 アドムライハル歴1205年。


 世界は平和を謳歌していた。人類世界では人間やエルフ、ホビットなど各種族が平和的に暮らし、モンスターたちは絶滅こそ免れてはいるが、人々が立ち入ることがない辺境で静かに暮らしていた。


 そんなある日、魔界から悪魔が異世界転移によって人類世界に現れた。その悪魔は「ルシエル」と名乗り、魔王を称した。


 魔王ルシエルは配下の魔族を使ってモンスターを世界中に放った。その暗黒の力は世界中を覆い、やがて地上にもモンスターが溢れるようになる。


 しかし、人類世界も魔王の支配に甘んじることはなかった。世界中から「勇者」と称して剣士や魔術師たちが魔王討伐に出立したが、誰ひとりとして生きて帰る者はいなかった。



 王都から離れた城塞都市レビンも例外ではなかった。


 城塞都市レビンからも多くの「勇者」が魔王討伐に出立したが、生きて帰る者は、いない。


 城塞都市レビンのメインストリートには、多くの商店が並んでいた。しかし、魔王ルシエルによる暗黒支配のため、平和の時代のような活気は見られない。


 活気を失ったメインストリートには、多くのホームレスが転がっていた。その中のひとりに、大きなお腹をした中年男性テンバレロンがいた。


 テンバレロンは見た目がドワーフと間違えそうなほど毛深いのに、なぜか頭髪だけ極めて薄い。お腹だけ大きく突き出し、数年間も身体を洗っていないため悪臭を放っている。

 ホームレスのテンバレロンは働くことをせず、ゴミを漁りながら路上で暮らしていた。


 ある日、城塞都市レビンは、ゴブリンやリザードマンらによって編成された魔王軍の侵攻を受けた。すぐにメインストリートは虐殺の舞台となり、市民たちの悲鳴と血しぶきが街の至るところであがった。


 その頃、ホームレスのテンバレロンは石造りの廃屋で昼寝をしていた。屋外からは悲鳴が絶え間なく聞こえてくる。


 ああ、ついにモンスターたちが、この街を襲ったか······。


 テンバレロンは他人事のように思い、とくに気にしなかった。


 それにしても、悲鳴やら唸り声でうるさいわ。


 テンバレロンは眠りを妨げる雑音にイラついた。


 テンバレロンは思った。


 (うるさいからモンスターどもは消えろ)


 街から悲鳴や唸り声が消えた。


 テンバレロンは思った。


(ついでに、魔王ルシエルとその配下は全部消えろ)


 魔王ルシエルとその配下は、人類世界からフッと消えた。


 世界は平和になった。


 テンバレロンは、昼寝から目覚めると、ゴミ漁りに出かけた。




 おわり




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