アナタと雨
「...午後には止むでしょう、、、」
雨、
こんな朝はいつも憂鬱だ。
雨は外に干渉するだけでなく僕の中にも入ってくる。
せめて心のなかだけは晴らそうといつも雨の日はカフェに行く、雨に包まれようとも。
せっかく外に出るというのに、今日もどうせ外は僕を受け入れてくれない。玄関のドアを開けた瞬間モワッとした土の匂いが鼻に入ってくる。雨じゃなかったら鳥の出迎えがあるに、傘の周りには「///」とした罵りが自分を包み込み、僕の足下では「;;:;;」と水溜りで雨の子供達が僕を嘲笑っている。どんなに歩こうとも彼らは僕を追って飲み込んでくる。きっと農家には外からの贈り物で、遠足当日の子供達には処刑宣告でもあるだろう。いつも僕はカフェへの道を歩きながらそんなことを考える。そう、僕の知らないアナタなら「///」や「;;:;;」はまた違って聞こえるということを。
そんなしょうもないことを考えている内にカフェの姿が見えてくる。安らぎを授けてくれる。
そんなカフェからも「///」や「;;:;;」が聞こえてくる。
「ガチャ」
少し暖かい空気に流れが僕を包み込む。内装は少し古く小洒落た感じで、マスターは紳士なおじさまがやっていそうと言えば想像しやすいと思う。(まぁマスターは紳士かもしれないがおじさまではないがな)
「いらっしゃいませ」
雨の日の朝は、いくら休みでも空いている。僕は外とは打って変わり軽快な足取りでマイポジション、カウンター席へ向かう。
「お久しぶりです、いつものでよろしいでしょか」
少し驚いたが、僕は軽く頷いた。
最近は雨な日は少なくあまり行ってなかったが、それでも覚えておいてくれているなんて嬉しいものだ。
「////」
カウンターの奥からは香ばしい良い匂いが漂ってた。
「そう言えば、今日は雨が早く止むそうですね。」
そう言いながらマスターはコーヒーを入れてくれた。
僕はあまりコーヒーの味とかはよく分からないがここで飲むモノは家より良いと感じる。
それはなぜか?ここのカフェだから?それとも………だから?
コーヒーを飲みながら、目をカウンター近くの窓にやると子供が一人、歩いているのが見えた。
笑っている。
「///」 「;;:;;」 「///」 「;;:;;」 「///」 「;;:;;」
雨は、外は、自分を罵り、嫌味を言う。そしていつも大切なものを嘲笑うように現れ、さもそれを洗い流し別れを手伝ってあげたかのようにそのまま消えてゆくはずなのに…
目を奪われた
何故こんなにもその子供を雨が祝福しているよう見えるのか。
彼らはアナタを優しく包み込みそして、アナタの道では彼らの美しい歌声が鳴り響きダンスパーティーが開かれている。
何故だ、いや、まだ農家が嬉しがっているならよくわかる。自分のためだし、理由もよくわかる。でもアナタは何故喜ぶ、笑っていられる?
そりゃぁ、もし今日が平日で、大雨で警報が出ていれば嬉しいでしょうが。でも、今日は休日だ。しかも土曜日、一週間の疲れを癒したいはずなのに。何故わざわざこの雨の中、身を外に晒しているのだ。
「なんか楽しそうですね」
マスターの声に意識を戻された。
こんなことに向きになってもしょうがないな…
「そうですねぇ、僕は雨が嫌いなのであの子みたく気分を晴らす事ができたらいいんだけ...っですけれどもね。」
「確かにどんよりしますもんね、気分も。」
気分が悪くなるのは天候のせいでもあるが、あの日を、あの日を雨は思い出させるからだ。
「っ、すいませんね失言でした」
顔を上げるとマスターが何か物を壊してしまった子供の様な顔をしている。
そんなにも僕の顔は悪かったのだろうか、そう思いながらコーヒーを口に運ぶ。
やはり美味い。
ふと窓を見ると、青ざめた様な僕の顔が浮かび上がりあの子供は消えていた。彼らはそこで、まだ音を鳴らしている。
「///」 「;;:;;」 「///」 「;;:;;」 「///」 「;;:;;」
彼らは何を伝えたいのだろうか、何を言いたいのだろうか、雨とは何なのか?
「マスター、マスターにとって雨って何ですか?」
僕にとっては........だ。