星の涙
世界で一番大きな大木、世界樹に、古びたロボットが寄りかかっていました。
ロボットは動きません。
そんなロボットには、胸に涙の形をした窪みがありました。
ある時、旅をしていたおじいさんと小さなこどもが、世界樹を通りかかりました。
そこで小さなこどもは古びたロボットを見つけたのでした。
「おじいちゃん、あそこにロボットがあるよ!」
「おや?本当だね、見てみようか」
そうして、おじいさんと小さなこどもはロボットに近づいていくのでした。
ロボットをよく見てみると、とても古びていました。触ると今にも崩れてしまいそうでした。
小さなこどもはロボットの胸のあたりを見て気付きます。
「おじいちゃん、このロボットの胸に何かをはめる窪みがあるよ!」
そう言われて、おじいさんも胸のくぼみを見てみます。
「ふむ、この形はなんだろうね、もしうまくハマれば動き出すかもしれないよ」
それを聞いた小さな子供は大喜び。さっそく当てはまるものを探します。
おじいさんと小さな子供はここに辿り着くまでに沢山の冒険をしていました。
その時に二人は沢山の困った人を助け、沢山のお礼の品を貰っていたのでした。
小さな子供は今まで受け取ってきたお礼の品を当てはめていきます。
「これも違うなぁ、残念!これも違う」
ひし形、ほし型やいろんな形を持っていましたが、どれも当てはまりませんでした。
「見つからないなぁ、ないのかなぁ」
「あれを使ってはどうだい?」
おじいさんは、小さいこどもにそう問いかけます。あれとは何なのでしょう。
「うん、そうするよ!」
小さいこどもは返事をすると目をつむります。
しばらくするとあたりがシーンと静まりました。
そして小さな子供が唱えます。
「真実の姿を我に示せ」
そう叫ぶと、すべてのお礼の品が空に浮き輝いています
さらに輝くと礼の品たちはどんどんひとつに集まっていきます。
そうして重なりいろんな形に変わっていきます。
そうして最後は涙の形の宝石に変わったのでした。
「上手くいったね」
そうおじいさんは言って微笑みます。
小さなこどもは一つだけ魔法を使うことができました。
それは、沢山の形を重ねて一つの宝石にする魔法です。
この魔法は沢山ないと出来ません。
おじいさんと小さなこどもの二人が旅をして、沢山の人を助けて、沢山のお礼を貰ったからこそ使えた魔法なのでした。
「さあ、はめてご覧」
そうおじいさんに言われて、小さなこどもはドキドキしながら涙の宝石をロボットにはめ込みます。
カチ!
涙の宝石は見事にロボットにハマったのでした。
「ヴィーン、キドウカクニン」
「動いた!」
小さいこどもは大喜びです。おじいさんもそれを見て優しく微笑んでいました。
「ザヒョウカクニン、ゴサナシ」
「ミッションヲ、カイシシマス」
そう言ったロボットは、ボロボロの体を起き上がらせて、後ろについたブースターが点火します。
「そんなボロボロの姿じゃ、動いたら危ないよ!」
小さな子供は慌ててロボットを止めようとします。
「モンダイアリマセン」
ロボットはそう言って空へ飛び立っていきました。
飛び立ったロボットはどこに行ったのでしょう。
その場所は世界樹が知っていました。
ロボットはボロボロになりながら世界樹のてっぺんまで登って来たのでした。
てっぺんから見る景色は壮大でした。
下を見れば大地の様子が、上を見れば星々の様子を見ることができました
けれども下を見ると赤い海が流れていました。
それが何故か悲しそうに見えるのでした。
「すごい景色だ」
その声はロボットから聞こえてきました。
そう、あの小さな子どもです。
ロボットが飛び立った時にしがみついていたのです。
小さな子供はどうしても、このロボットが何をするのかが気になって、ついてきたのでした。
「これから何をするの?」
「ツタエタイコトガ、アルノデス」
そう言ってボロボロのロボットは言うのです。
「アリガトウ」
それは星への感謝の言葉でした。
その瞬間世界に大きな変化が起きました。
星は瞬きをするように一瞬だけ闇が覆います。
まるで涙を流したように星は瞬きをするのでした。
明るくなると小さな子供は驚きます。
「海の色が変わってる!」
そう、海の色が青色に変わっていたのです。
それだけではありません。
世界樹からはそれはそれは美しい花が咲いてゆくのです。
「モドリマショウ」
そうロボットが言いました。
小さなこどもは頷いてロボットにしがみつきます。
ロボットが再び空を飛びゆっくりと大地へと降りてゆきます。
「綺麗だね」
ゆっくりと降りながら小さなこどもは世界樹に咲いた花や青い空を眺めているのでした。
大地に戻るとおじいさんが優しく迎えてくれました。
おじいさんに、
「どうだった?」
と聞かれ小さなこどもは、
「とっても素敵だった」
そう答えました。
二人はボロボロのロボットを見ます。
ロボットは元いた場所に戻るとゆっくりと腰掛けました。
そして、
「マタイツカオアイシマショウ」
そう言うと静かに眠りについたのでした。
涙の形の宝石もいつの間にか、なくなっていました。
二人はその姿に手を合わせ黙祷を捧げました。
「また見れるといいね」
「うん、がんばるよ」
二人は世界樹の花を見ながらそう言ったのでした。
おしまい。