プロローグ
登場人物名前よみ
・海野 輝(うみの てる)
・桜井 陽和(さくらい ひより)
・宮田 明(みやた あきら)
以上3名、名前が読みづらいのでここに書いておきます。本文を読んでいて名前の読み方が分からなくなった場合は、ここを見て確かめてください。
私立誠澄高等学校――それはこの地方都市では知らぬ者のない学校の名だ。
「理想の学び舎」「学校と言う名のテーマパーク」……その呼び方はやや誇張気味だが、それほど事実から外れてはいない。
学生として守るべきルールさえわきまえれば、後は何をやってもいい――ここでは生徒自らが、どんな学校生活を送るのかを自由に選べる。
広い敷地の四辺は森で囲まれている。森といっても人工的に作った小規模なものだが、これが目隠しになって外は見えない。生徒たちは学校という舞台の上で、学生時代という貴重な時間を演じ合う。
俺は昔からこの学校に憧れていた。母さんが中等部時代も合わせて6年間通っていて、その頃の話をよく聞かせてくれたからだ。
母さんは事あるごとに学生時代の話をしてくれた。それはもう、俺が幼稚園児だった頃からずっとだ。
だから、俺は当然その学校に入るんだと思ってきた。
俺がそこに入れないと知った時――あれは小学校3年か4年の頃か、あの時は大泣きに泣いた。1週間くらい駄々をこねて困ったと、後で母さんから聞いだ。
その学校――「澄香高等学校」は女子校だった。
しかし、とっくに諦めをつけていた中3の時になって、転機は突然やってきた。
ちょうど次年度から、そこは「誠澄高等学校」と名を変えて男女共学化されることになったのだ。
入学できる――
母さんが語って聞かせてくれた、あの澄香高校へ――
かくして中3の途中でいきなり志望校を変えた俺は、「澄香高校」改め「誠澄高校」への入学を果たした。
今、母さんがまるでおとぎ話のように語ったその舞台に、俺は立っている――