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六話

村を出発した俺は、運転をマホに任せて車の席で横たわりながら眠っていた。外傷はマホのおかげで一つもないのだが、疲れと言う物はずっと残っている。だから、代わってもらったのだ。

………と言っても、虎が勝手に歩いてくれる為運転手は必要ないのだが………。


「つ、着きましたよ。モモさん」


 マホの呼びかけに俺は目を覚まして身体を置き上げる。まだ気怠さは残っているものの動けないほどではない。

 今いる場所を見渡してみれば目の前に街に続く左の道と何処かへと続く右の道。


「着いた………?」

「あ………。その、あそこの看板………」


 マホに言われるまま、車を降りて看板を見てみれば、どうやら右は目的の遺跡(デミゴス遺跡というらしい)へと続く道らしい。


「先に宿取るか?このまま遺跡に向かってもいいが………」


 虎のその提案に俺は少しだけ頭を悩ませる。

 このまま遺跡の下見に向かって、それから万全の状態で調査をするか、街である程度の準備をしてから向かうべきか………。


「マホ、お前はどっちの方がいい?」

「わ、私ですか!?」


 そうですね………、とマホが二つの道を順番に見て、チラッとこっちを見てくる。


「モモさんはその………身体の方は………」

「ん?それは大丈夫。ちょっと気怠さは残るけどな」

「………なら、先に遺跡に行きましょう」

「だってよ」

「………へいへい」


 マホの答えに俺が車に戻りながら虎に声を掛ければ虎も呆れたように右の道へと進む。

 しばらく進んでいけばそこには人だかりができていた。


「なんだ?」


 人だかりの奥の方を見てみれば、何やら廃れた建物が見える。


「あれが最近見つかったって言う遺跡だな。国が調査のため封鎖はしてるが今じゃデミゴスの観光資源だ」

「なんでお前そんな詳しいの?」


 つい昨日まで檻に入っていた彼女が詳しいのは違和感がある。あの檻の中に新聞か何かが差し入れられているのなら別だが、あの状況だ。それも無いだろう。


「今朝の村で情報を集めた」


 何を当たり前のことを………、と言わんばかりの呆れ顔を覗かせる。どうやらそれはマホも知っていたようで驚いた感じはない。

もしかして………俺ハブられた?


「んで、どうすんだよ?入るのか?衛兵に言えば入れるだろ」

「………そうだな。入ろう。トラップとかもあるって話だし先に解除しても問題はないだろ。解除は頼むぜ、虎」


 そう言えば、今の今まで忘れかけていたがこの虎はトラップ解除要因としてあの団長様に付けてもらったのだった。


「………あ、そう言えばオレってトラップ解除要因として呼ばれたのか。つーことは、この車オレ引かなくてよかったんじゃ………」

「いや、引いてくれないとマジにここまで来るのに時間かかりまくりだから」


 忘れてたのかコイツ………、等と心の中で思いながらも俺は人だかりを押し除けて警備の好青年といった感じの印象を受ける衛兵に声を掛ける。


「すいません。俺達ここの調査の為にセントラルシティから派遣されて来たんですけど」

「では、身分証の提示をお願いします」

「身分証?」


 ………待って。身分証?身分証って何?あれか?車の免許証とか生徒手帳とかマイナンバー的な?俺そんなの持ってないよ?


「どうしたんですか?早く提示をお願いします」


 俺が一向に身分証を出さないのに痺れを切らして来たのか、衛兵が催促する。他の衛兵も流石に怪しいと思ったのかドンドン集まってくる。


「この遺跡の調査は宮廷魔導士団が受け持つと聞いています。もし、貴方が身分証を提示できないと言うならば我々は貴方を貴族を、誇り高き騎士団を騙った罪で捕まえなくてはならない」

「その宮廷魔導士団の依頼を受けて来たんですけど………」

「身分証の提示をお願いします」


 既に周りはいつでも剣を抜けるとばかりに柄に手をかけている。下手なことをすれば一気に斬り捨てられるだろう。何もすることができないが、何かをしなければならないと言うジレンマに苛まれて、もはやお手上げ状態だ。周りの野次馬の視線も痛い。


「そいつは間違いなく、宮廷魔導士団の代わりに調査に来た人間だぜ?」


 そんな中、人混みをかき分けて二人の人間が割って入ってくる。一人は今までずっと一緒に旅をして来たマホ。

 そして、もう一人。今度会ったら文句の一つでも言ってやろうと心の中で決めていた白髪に少し黒髪が混じった女だ。


「テメー、このヤロー!昨日はよくも囮にしやがったな!」

「も、モモさん!今は落ち着いてください!」


 今にも俺が殴り掛かろうと近付けば、マホに羽交締にされて止められる。


「………貴女は?」


 冷静に質問する衛兵に、女は自分の服を引っ張り胸元を見せる。そこには何やら何かの模様の形をした火傷の痕があった。角の生えた馬に先端が丸い棒状の何かが交差している模様だ。


「………確かに、貴女は宮廷魔導士団の関係者の様だ」


 その火傷の痕を見るや否や衛兵隊は散って行き、俺達は中へと通される。


「虎はどうするんだよ?」

「え?」

「お前、マジで言ってんの?」


 呆れた様にため息を吐く女がチラッと俺の方を見る。


「お前、魔法士団の詰め所で何か貰わなかったか?」

「あ?そう言えば貰ったな。虎に言う事を聞かせられる札」


 俺はポケットから札を取り出す。昨日の戦いで既にボロボロの血まみれだ。


「正確に言えば奴隷に、だな。重要なのは札の裏だ」


 女に言われた通り俺は札の裏を見てみる。血で見えにくいが、何やら模様が見える。


「………あれ?この模様………」


 先ほど女な胸元にあった火傷の痕にそっくりだ、なんて思っていると、女が頷いて答える。


「その模様は宮廷魔導士団のエンブレムだ。初代の団長様がユニコーンと一戦を交えたって所から作られてる」

「うん、それは良いんだけどさ。それと虎を置いて来た事の何が関係あるの?」

「お前本当に鈍いヤローだな。つまりオレは宮廷魔導士団の所有物な訳。それを踏まえた上でこの耳と尻尾を見たお前の感想は?」


 感想は?と言われても彼女が亜人で、宮廷魔導士団の関係者くらいにしか分からない。


「本当にわからないんですか、モモさん?」

「マホはわかるのか?」

「流石の私でもわかりますよ………」


 え〜、と俺は女をじっと見つめる。そう言えば、彼女の名前を俺はまだ知らなかったな、なんて別のことを思いながら先へと進んでいく。

 話によればトラップまみれとの事だったのに今現在トラップにあっていない。


「トラップ、全然ないですね………」

「いやあるぞ。あるけどどれもこれも一発限りのトラップだな。辺りに死体がないのを見るに突破されたんだろ」


 マホがそう呟くと、淡々と壁を擦って埃を払い、魔法陣を確認する女。やはり彼女も宮廷魔導士団に居るからなのか、魔法にも詳しいらしい。


「魔法に随分詳しいんですね………。やっぱり宮廷魔導士団の人に教えられたりするんですか?」

「アイツらがんな事する訳ねーだろ?こら完全に独学だ」


 メモに魔法陣を書き写し、女が先へと向かう。俺達もその後について行きながら辺りを見渡してみる。こうみると内装は遺跡と言うよりも何かの研究所と行ってしまった方がいいような内装だ。


「………と、今進めるのはここまでか」


 そうして辿り着いたのは一つのある部屋だった。あちこち埃を被っていたり、雑草が生えたりしていてさながら核戦争が起きた数百年後の都市と言った感じだ。奥にもう一つ扉もある。

 俺は本棚に並べられた本を手に取ろうとしてみたが、掴んだだけで本がボロボロと崩れてしまう。

 本は諦めて近くに並べられたフラスコやビーカーを見る。何やら肉塊のような物がこびり付いている。


「お前等。こっちに来てみろ」


 肉塊から目をそらすように女の声が聞こえてきた方を振り返って見れば壁際にポツンと置かれた机の引き出しを開けっぱなしにして本を開く女な姿があった。


「何ですかそれ?本?にしては本棚の本みたいにボロボロじゃないみたいですけど」

「本の表紙に劣化防止の防御魔法陣が書かれてる。古くなったら困る本らしい。が、コイツは俺じゃあ読めねー文字だな。多分古代文字だろ。あー、これだったら考古学も勉強しとくべきだったか?」


 チラリと本の内容を見てみれば、確かにこの世界で見た文字とは違うようだ。考古学に精通しているような人間でなければ読めないだろう。だが、俺は違う。正確には俺を含む神子は違う。何故かは分からないが、文字は頭の中で自動翻訳される。

 亜人………、モルモット………、実験………、生物兵器………。


「………ダメだ」

「え?」


 だからこそ俺は見開きを読んでこんな言葉が出てしまった。


「それは、今すぐ燃やせ!」

「何言ってんだよ?コイツも貴重な資料だろ。提出だ」

「その本はこの世にあっちゃいけない物だ!」


 俺の喚きに女は怪訝そうな顔を俺に見せる。当たり前だ。突然そんな事を言われれば誰でもそんな顔になるだろう。


「まさかお前………この本が読めるのか!?」

「今はそんなのどうだっていい!早く燃やせ!」

「理由も分からずに燃やせるか!」


 理由。正直俺だってこんなの早く吐き出して楽になりたい。

 でもこれはダメだ。亜人である女にも、骸骨で気分を悪そうにするマホにも、これは教えられない。


「………とにかく、これは資料として持ち帰るからな」


 鞄に丁寧に本を入れる女に俺は何も言い返すことができない。理由を話せない現状ではダメだなんてできる訳がない。

「………マホは何処だ?」


 ふと、辺りを見渡してみればマホの姿がない。この部屋に入るまでは俺の前を歩いていたはずだ。そして入り口の横の本棚にはずっと俺がいた。出て行ったなら気付かない訳がない。

 まさか………、と俺は奥の扉を見る。

 開いている………。


「ッ!」


 俺は扉を壊す勢いで押し開けて長い廊下を突っ切る。そこ等かしかに植物の根や蔓がびっしりと生えていて途中で躓きながら更に奥へと進む。

 廊下の奥に先ほどの部屋よりも大きな部屋があり、見知った背中がポツンと立っている。


「よ、良かった………。今日はこれくらいにしよう。明日は俺とあの女で………」


 安心して部屋を見渡しながら突っ立ている少女の背中に向かって歩く。何にもない凄く荒れた部屋だ。


「マホ………?」


 マホが返事をしないことに不思議に思った俺は再びマホを見る。マホはずっと向こうの壁を見つめている。マホの視線の先を追って行って俺は息を飲んだ。


「お前、勝手に行くんじゃねーよ!って、何だよこれ………」


 そこに怒鳴りながら入って来た女も入ってくるや否や怒鳴るのも忘れて俺達が呆然と眺める壁を見る。それは確かに俺には壁に見えていた。

 氷山の一角とはよく言ったもので俺も壁の全体を見なければ分からなかった。


「でっけー扉!」


 研究者気質なのか、女は半分嬉しそうに大きな扉を触る。この壁自体が扉だったのだ。


「どうやって開くんだ!?」


 押してみたり引いてみたりする女と呆然と扉を見る俺とマホ。


「………ダメだ。開かねーな」

「………一旦帰ろう。ここは嫌な気配がする」


 この何とも言えない悪寒に俺は耐えられなくなって、女に一度街に行こうと提案する。

 結局、俺の提案もあってか、俺達は一度街に戻って宿を取ることになった。


「あの女、一人で先に行っちまいやがった………」


 虎の待つ入り口に向かいながら俺は少しの嫌味と共にそう呟いた。あの部屋を出る直前、女が俺達に資料を渡して出口へと走り去ってしまい俺達も困惑状態だった。


「ま、まぁ、あの人にも何か用事があったんですよ、きっと」

「そうか?………そう言えば、俺あの女の名前知らねーな。マホは知ってる?」

「え!?い、いえ………」

「そっかぁ………」


 何やら焦っているマホを尻目に俺はようやく見えて来た出口の光を手で遮りながら外へと出る。

辺りは既に日が傾いていて見物客の姿も殆どなくなっていた。


「お、遅かったな………お前等。待ちくたびれた、ぜ」


 出てすぐのところで寝転んでいた虎が声を掛けてくる。何やら息も上がっている様子だ。


「大丈夫か?何か疲れてるっぽいけど………」

「あ、あぁ!待ってるついでに筋トレをな!」

「暇だったならお前も入れば良かったのに………」

「いや、入ったって言うかずっとお前等と一緒にいたって言うか………」

「え?」


 眉をひそめながら何やらブツブツ言っている虎に俺が何と言ったのか聞き返そうとすると割って入って来たマホが何も言わずに運転席へと座る。


「ま、マホ………?」

「モモさん。早く宿に行きましょう………」


 彼女も疲れているのだろう。俺は首を縦に振り後ろの席に資料を整えながら座る。その傍らで俺の手に触れる一冊の本に気付いて俺はその本を手に取ってしまった。

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