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廃業します
「えー、このままだと廃業です」
いつも無表情な彼女が言った一言は、人生における分岐点となった。
「ちょっと待て。確かに依頼は全く最近来ないし、ライバルのアトリエがすぐ近くに出来たけど、そんなに!?」
「はい。もう、私も辞めたいです」
「そんな、セベリアが居ないと僕死んじゃうよ!?」
「はい、死ねばいいと思います」
「辛辣すぎないかな!?」
「まあ、頑張って」
セベリアはそう言い残してアトリエを出ていってしまった。
カラン。
「あ、言い忘れてました。夕飯には帰ります」
どこかへ出かけるだけだったみたいだ。
私は考えた。アートの父親がまだ存命だった頃、このアトリエは繁盛していた。アートの父親が優秀な錬金術士だったからだ。しかし、アートも才能の片鱗を見せるが如何せんやる気がない。
アートの父親が亡き後アトリエを守るのはアート自身なのに、その自覚が全くありません。
「困ったわ」
「なるほどね、それでおねーちゃんに泣きつきに来たのね?可愛いなぁ。そんなにアート君が好きなら付き合っちゃえばいいのに」
セベリアは王都の受付で働く姉の元に来ていた。
元は姉が「アート君のアトリエ潰れるかも」と言ったのが現況で、それに大いに焦ったセベリアがアトリエで言った言葉が冒頭になる。




