魔物討伐(14)
ルーカスは服を着始めた。
「罠だと分かっていて、みすみす乗るつもりはない。何とか大軍を派遣することなく、高位の龍の鱗を狩る手段を探していた所で、君の噂を聞きつけたのだ。一人で地竜と互角に渡り合えたという君の。」
トゥワはルーカスの頼みが何なのか察した。そうでなくてもドラゴネットに会いに行くところだったのだ。鱗の一枚くらい、ドラゴネットに頼めば簡単に貰えるだろう。
「そういうことでしたら、私がお役に立てそうです。」
「本当か?まだその返答をするには早いと思うが。無論、少数とは言え凄腕の戦士を付けるし、成功しようがしまいが報酬は望みのままに用意しよう。」
ルーカスは淀みなく言った。
「一人で充分です。戦闘しなくても交渉で手に入れる当てが御座いますので。これは私からの恩返しです。先程命を救って頂きましたから。」
「あれは此方の落ち度だ。オラクル帝国内において、公人たる騎士団が君に危害を加えた。君はこのことを正式に告発してもよいのだ。」
ルーカスは眉を寄せた。トゥワは今回の件を告発するなどとは、全く考えていなかった。騎士団に深入りされると困るのは自分の方だ。
「それでも、殿下が御自ら危険に身を晒し、私を救いに来てくださる必要はありませんでした。実際、その後攻撃されていたではありませんか。やはり私にとっては命の恩人です。」
「君がそれでいいならこれ以上言うことはないが、俺の気が済まん。ヒトに借りを作りたくない。俺にできる範囲の報酬を要求してくれ。今浮かばないなら、いつでもいい。」
トゥワは考え込んだ。
「…それでは、失礼を承知でご相談したいことが御座います。」
「言ってみろ。」
「私は邪教徒に命を狙われているようなのです。」
「どういうことだ?」
トゥワはカヴァーンの主が邪教徒と取り引きをして自分を殺そうとしたこと、先程のエルフも邪神の名を挙げていたことなどを話した。
「ダンジョンマスターに命を狙われて無事だったのか?」
「あの方は油断しておいででした。私の口車に乗り、無謀な賭けをして負けたのです。とは言え、私も重傷を負いました。アレッタ殿下に治していただかなくては命がなかったでしょう。」
ルーカスは呆れたように肩をすくめた。
「調べておこう。君の性格だと無茶をしそうだから予め言っておくが、仮に鱗が手に入らなくても気にするな。いざとなれば軍隊をダンジョンに派遣するさ。君は単なる保険だ。俺は用心深い性格でね。」
「お気遣いありがとうございます。鱗が手に入りましたら、また。」
「ああ。また会おう。」
トゥワとルーカスは挨拶を交わした。トゥワが去ろうとすると、ルーカスが思い出したように声を掛ける。
「そうだ。忘れていた。理事長、ザラ・テーラーに気を付けろ。」
「え?」
トゥワは詳しく聞き出そうと思ったが、トゥワの目の前でルーカスの姿は消えてしまった。
【今までに討伐したことがある魔物】
1.トゥワ・エンライト
スライム、デスワームなどの低級の魔物は数知れず。ワイバーン、オーガ、グリフォン、火竜などの軍隊で討伐するような中・上級の魔物もソロで討伐している。低級の魔物の大半は軍からの要請で討伐している。中・上級の魔物はできるだけ自分が討伐したことを隠している。
2.リェナ・アーク
実はスライムなどの低級の魔物しか狩っていない。地上に出た魔物の討伐経験があるだけ。
3.ジャック
スライム、ゴブリン、オーク、コボルト、トレントなどの低級の魔物を幅広く。本業なので、討伐した種類も数も多い。
4.ルーカス・エクルー
スケルトン、ゾンビ、ミイラ、吸血鬼、死霊などのアンデッド系の魔物。強力な光魔法を使うので、簡単に祓える。皇帝からの命令で、地上やダンジョンの上層の魔物を討伐している。




