魔物討伐(8)
「村長、中央から騎士団の連中が来ました。」
「今更何の用だ?」
村長は騎士団に会いに行った。トゥワとリェナは顔を見合わせた。こんなに早く騎士団が到着するとは思っていなかったが、オーガの一件だろう。村長の部屋で話しがされているようなので、そこに呼ばれて出てきたジャックにトゥワは話し掛けた。
「騎士団が来たのはオーガに関する用件ですか?」
「それもあるが、グリフォンとオーガの群れに関する話だった。街道沿いにあるグリフォンの死体はそのままにしてしまったから、見つけたヒトが騎士団に通報したらしい。昨晩、騎士団が派遣されていたそうだ。騎士団がグリフォンを調査しているうちに、オーガの群れの気配が消えたことにも気付いたらしい。村長は尋問されているが、安心してくれ。恩人を売るような真似はしないさ。」
トゥワとリェナの顔色が変わった。騎士団というものは、そんな甘い連中ではない。オーガの群れが壊滅したことが確認されたのに、村を挙げて倒したヒトを隠すなんて怪しすぎる。
「リェナさんはまだ隠れていてください。何かあったら助けて頂きたいので。」
「承知しました。ご無理はなさらないでください。」
トゥワは村人の制止を振り切り、村長の部屋に入った。村長がライオン頭の騎士に詰められていたであろうことが容易に見て取れた。
「お前は何だ。」
「グリフォンとオーガの群れを討伐した者です。」
「何!?」
騎士は怪訝そうにトゥワを見つめる。トゥワは手の平にそよ風を起こした。
「証明が必要なら、外に出てください。」
「お前は何者だ?」
「通りすがりのヒト、では不十分ですか?」
「ふざけているのか?」
騎士は怒っているようだ。
「大真面目ですよ。身元を明かしたくはないのです。村人たちを脅して私のことを口外しないように言ったのもそのためです。」
「種族と本名、出身を述べ、顔を見せろ。」
トゥワは溜息を吐いた。
「せめて続きは騎士団の本部でお願いします。」
「よかろう。来い。」
村長が立ち上がった。
「それが魔物を討伐してくれた恩人に対する礼儀ですか。」
「黙れ。グリフォンとオーガの群れを一人で同じ日に討伐することの問題点が分からないほど弱い人間どもめ。これだから下等種族の相手は疲れるんだ。」
「何を…。」
『訂正しろ。』
トゥワが静かな声で言った。
『今の種族差別発言を訂正して謝罪しろ。』
「人間を弱いと一括りにして下等種族と呼ぶのは過ちでした。申し訳ありません。」
騎士団は村長に深々と頭を下げた。トゥワはしまったというように口を押さえている。騎士は素早く横にあった兜を被り、トゥワの首筋に剣の切っ先を向けた。トゥワは抵抗しなかった。トゥワは騎士の兜には魔法を遮断する効果があることを知っていた。
「ヒトに対して精神系の魔法を掛けることは禁じられている。特定危険魔法禁止法違反の罪で、お前を逮捕する。」
「はい。申し訳ありませんでした。」
「騎士殿、この方は我が名誉のために…。」
騎士は鋭い眼光で村長を睨みつけた。村長は押し黙ってしまう。
「支配魔法を使ったのは、完全に私の落ち度です。処罰は受けます。行きましょう。」
トゥワは大人しく騎士団に囲まれ、魔力封じの手枷を嵌められた状態で連行された。村中から抗議の声が上がっているのを無視して、騎士団は引き上げた。




