魔物討伐(7)
「もしかして、口に合わなかったか?」
「いえ、とてもおいしかったですよ。私の種族にしては大量に食べた方です。」
「少食だねえ。そちらの女性も食べられないのかい?」
男性はリェナに言った。リェナの種族、三眼は大食いだ。悪食としても知られる三眼は、毒性のある魔物を食べることが多いが、動物の肉なら何でも食べる。
「私は何もしていませんから。」
「いえ、貴女が村を守ってくれていると思ったからこそ、全力で戦えたのです。折角のご厚意ですし、皆様がいいと言うのでしたら、頂いていってはいかがです?」
「おう、遠慮なく食ってくれ。このまま余っても捨てられるだけの料理だ。」
「では…。」
リェナは食前の祈りを捧げた後、鳥を丸ごと取った。顔の前にある紙を少しだけ捲り、豪快に頬張る。バリバリと骨まで噛み砕く音が響いたかと思うと、鳥は瞬く間に姿を消した。
「これは虫食鳥ですね。ローズマリーとタイムで臭みを消している。脂がのっていて、それでいてしつこくない。魔物に比べて淡白な味わいですが、ブラックベリーのソースが旨味を引き立てています。魔物でもないただの鳥が、ここまでおいしくなるとは。」
「よく分かるねえ、お客人。それでこそ作り甲斐があるってもんよ。さあ、どんどん食べてくれ!」
リェナはその後も料理を大量に平らげ、律儀にコメントしていった。リェナも聖教徒だが、食に関してはトゥワより更に厳格ではない。酒こそ飲まないものの、肉も魚もどんどん食べる。種族特性だから当たり前と言えばそれまでだ。トゥワは特産品だという、やたらと苦いお茶に大量の砂糖を入れて飲んでいた。
いつの間にか日が暮れていた。あれだけあった御馳走も姿を消している。主にリェナのために三回ほど追加されていたのに。
宴は終わりの時を迎えているようだった。重そうな麻袋を持った大柄な男性がトゥワとリェナに近付いてきた。
「お客人、オーガたちの魔石を取り出してきた。その数、なんと53個。全て持っていってくれ。」
「皆様でお使いにならないのですか?」
「加工できる技術者はいないし、オーガは唐突に姿を消したんだ。魔石を売り捌くわけにもいかない。お客人が持っていった方が役立てられるはずだ。」
男性の言葉に頷き、トゥワはお礼を言って魔石を受け取った。ミオネラ王国に着いてから売れば足がつかないだろう。
「そろそろお暇しましょうか。」
「もう夜になる。オーガがいなくなったとはいえ、魔物が出ないとは限らない。出発は明日にしてはどうかね?」
トゥワはその言葉に甘えることにした。村に魔物が現れることを恐れたためだ。トゥワは一睡もせずに警戒を続けたが、朝まで何も起きなかった。トゥワとリェナは朝食を摂り、出発の準備を進める。




