魔物討伐(6)
村に戻り、オーガの群れが全滅したことを伝えると、村中が歓喜の渦に包まれた。誰もトゥワが倒したとは言わなかったが、余所者二人が助っ人に現れた日に、今まで退けることすらできなかったオーガが壊滅したのだ。誰の功績なのか分からない村人はいなかった。
「あちがとうございます!本当にありがとうございます!」
「もう襲撃に怯えて震えながら夜明けを待たなくてもいいんだ。」
「嗚呼、これで死んだみんなも浮かばれる。」
「どうお礼をしていいか…。」
トゥワは降り注ぐ感謝の言葉に面食らった。これは口止めしないと大変なことになると思い、声を上げた。
「あの、そのことなんですけど…。」
急に場が静まった。トゥワは気後れしながらも言葉を継ぐ。
「諸事情があって、私のことは伏せて頂きたいのです。オーガの群れは、今日を境に襲撃しに来なくなっただけということにしてください。私たちはこれで去りますので、後始末はよろしくお願いします。」
「待ってください!せめてお礼をさせてください!」
「そうだよ。村を挙げて宴を開くから、もてなしくらい受けていってくれ。」
トゥワはその申し出を受けることにした。どの道、想定外の寄り道をしてしまったのだ。一日くらい遅くなっても同じことだ。
広場で宴の用意が進められている。余所者であるトゥワとリェナは手伝うこともなく、暇だったので子どもたちと遊んでいた。風魔法を見せてあげると大喜びだった。あの少年も近付いてきた。
「貴方も一緒に遊びませんか?」
「うん。」
風魔法を使って遊んでいると、少年の表情が少しずつ和らいできた。
「楽しいですか?」
「うん。あの…。」
少年はトゥワに頭を下げた。
「…ありがとう。」
「どういたしまして。」
「宴の準備が整いましたよ、客人様!」
村人に呼ばれ、トゥワとリェナは広場に向かった。そこには豪華な料理が並んでいた。鳥の丸焼き、香ばしいパイ、魚のムニエル、野菜がふんだんに入ったスープ、大量のビスケット、フルーツたっぷりのケーキ、様々な種類の酒など、トゥワが見ただけでお腹いっぱいになるような御馳走が並んでいる。
「お口に合うとよいのですけど。」
「こんな御馳走を目にするのは初めてです。目移りしてしまいます。」
トゥワは聖教徒なので、清貧が美徳とされる環境で生きてきた。酒はもちろん、肉や魚を食べることは禁じられていた。そうでなくても、有翼はカロリーの高い食べ物を少量食べる種族なので、こんな御馳走は滅多に見ない。
「食べ尽くしてくれても構わない。心置きなく召し上がれ。」
「ありがとうございます。」
トゥワは真っ先にケーキを一切れ取った。しばらく食前の祈りを捧げた後、上品な所作で一口食べた。
「おいしいです。」
「よかった。ケーキから食べるとは思わなかったよ。これは村一番の菓子屋が焼いたんだ。」
「もしかして、ビスケットもその方が?」
「そうさ。遠慮なく食べてくれ。クリームとジャムもあるぞ。」
トゥワは大量のクリームを塗り、ビスケットを齧った。その表情を見ただけで、トゥワがいかにビスケットを気に入ったか分かった。トゥワは二つ目のビスケットを取り、ジャムを分厚く塗って食べた。
「おいしかったです。御馳走様でした。」
トゥワは匙を置いた。




