魔物討伐(3)
「ジャック、どうだったの?そのヒトたちは誰?」
同乗していた人間はジャックと言うらしい。人間の女性がそう呼んだ。
「中央の役人は駄目だ。自分たちで討伐依頼を出せだとさ。」
「は?何のための騎士団なの?」
「まあまあ。帰りの乗合馬車でたまたま会ったヒトが力を貸してくださるそうだ。」
女性は品定めするようにトゥワとリェナを眺める。あまりお気に召さなかったらしい。
「あたしらに出資してくれるってこと?」
「いいえ。シンプルにオーガを狩るつもりです。」
女性は助けを求めるようにジャックを見た。ジャックはニヤリと笑う。
「このヒトの強さはオレが保証する。」
「信じなくて構いません。どうか夜をお待ちください。」
トゥワはニッコリ笑った。女性は首を横に振った。
「失礼な態度を取ってすまなかった。手伝ってくれるなら大歓迎だよ。大して金は出せなくて申し訳ないけどさ。」
「お金はいりません。ただ、私たちの存在はご内密に。」
「分かった。よろしく頼むよ。」
夜は冒険者たちがパーティーを組んで夜の見回りに当たっているようだ。しかし、全員が束になってもオーガたちを多少足止めできるくらいで、勝てる見込みはないらしい。
オーガは知性が高いため、相手にならないくらい弱いからといってヒトを狩り尽くすような真似はしない。危険度が高いと認識されると、軍隊が押し寄せて手痛い反撃を被ると分かっているのだ。毎夜オーガは数人のヒトを攫うだけ。このくらいなら黙認されるという人数だ。
オーガに攫われた人間は、やつらに喰われているということが分かり切っていても、下手に反撃する手間や金を惜しむのだ。
トゥワが聞き込みを続けていると、妹を目の前でオーガに攫われたという、百齢十四歳前後に見える少年に出会った。少年は泣きながらその時のことを話した。
「オーガが村に侵入してきたから、ボクと妹はクローゼットに隠れていたんだ。周りはやけに騒がしくて、生きた心地がしなかった。そのうち、玄関の方で大きな物音がしたと思うと、あいつらが家の中に入ってくる気配がした。ボクたちは息をひそめてあいつらが出て行くのを待っているしかなかった。あれほど時間を長く感じたことはなかった。そして、ついにボクたちがいるクローゼットの前で足音が止まると、クローゼットの扉が開けられた。」
少年は震えながら、自分の身体を抱えて縮こまった。
「妹が攫われたのに、ボク、動けなかった。妹が助けを求めて泣き叫んでいたのに。…ホッとしてたんだ。選ばれたのがボクじゃなくてよかったって。」
少年は嗚咽を漏らした。トゥワは背中を擦ることしかできなかった。
「誰か、あいつらを皆殺しにしてほしい。ボクは怖くて、戦えないし、何もできない。誰か…。」
「私が戦います。貴方が勇気をもって話してくれたから、おかげで戦えます。ありがとうございます。」
そう告げたトゥワの声は凛としており、少年は両手でトゥワの手を握り締め、感謝の言葉を繰り返した。
そうこうしているうちに日は暮れ、トゥワとリェナはオーガの襲撃に備えるため持ち場についた。




