魔物討伐(1)
【主な登場人物】
・トゥワ・エンライト…本作の主人公。有翼でワンド大学の学生。ミオネラ王国の第二王子である。精神系魔法である支配魔法、風魔法が得意。
・リェナ・アーク…トゥワの従者。三眼で、ミオネラ王国の出身。魔法を無効化することができる。
・ルーカス・エクルー…オラクル帝国の第一皇子で、天使。アレッタ・エクルーの兄。回復魔法と光魔法が得意。
トゥワは酒の大樽を運ぶために大型の乗合馬車に乗って帰ることにした。トゥワは顔を見られたくないため、黒ローブを羽織り、リェナは紙で顔を隠している。乗合馬車に乗っている他のヒトはトゥワとリェナを見てひそひそと言葉を交わしている。
外の景色を眺めて過ごしたい所ではあったが、生憎天気が悪く、暗雲が立ち込めていた。
「こんにちは。これから長旅になるので、ご挨拶でもと思ったのですが、いかがですか?」
若い男性の人間が声を掛けてきた。革製の防具を身に纏っていることから、騎士か冒険者だと思われる。周りのヒトもトゥワたちを見ている。
「ご丁寧にありがとうございます。確かに先は長いですからね。私はミオネラ王国に向かうのですが、皆さんはどちらまで?」
人間は緊張を解いたようだった。
「我々はオラクル帝国の外れ、カルムの者で、今帰るところでした。随分と遠くからいらしたのですね。」
「ええ。私は学生でして、長期休みに帰省するところです。」
「そちらの方も学生さんですか?」
「いいえ。私は…保護者のようなものでしょうか。」
リェナが言うと、トゥワは頷いた。
「失礼でなければ、お二人とも種族は何ですか?私は人間です。」
「しがない少数種族です。申し訳ありませんが、それ以上は…。」
「すみません。初対面なのに不躾な質問でしたね。」
「いいえ。こちらこそ申し訳ありません。」
トゥワは自分のことを話したがらなかったが、相手の人間は色々と話をしてくれた。最近カルムは夜になるとオーガの群れが現れるそうで、地元の冒険者では対処できないため、応援を要請したが、色よい返事が得られなかったそうだ。もう多数の死傷者が出ているが、自分たちでどうにかしろという一点張りだったと。
「カルムの予算で賞金を出して討伐依頼をすればいいなんて言うもので、思わず殴りそうになりましたよ。そんな予算があったら、魔道具を揃えて自分たちで討伐するっつーの!」
人間は苛々した様子で語気を荒げた。トゥワとリェナは黙って聞いている。
「すみません。初対面なのに愚痴を零してしまって…。」
「お気になさらず。ヒトと話すとよい知恵が浮かぶかもしれませんし。唐突にすみませんが、少しこちらで話しをしてもよいでしょうか?」
「ええどうぞ。長時間話してしまってすみません。」
「いいえ。旅の退屈しのぎになりました。ありがとうございました。」
人間たちが端に移動したのを見て、トゥワはリェナに囁いた。
「少し寄り道しても構いませんか?」
「言うと思いました。目立ちたくないのではなかったのですか?」
「まだ顔も名前も明かしていないでしょう?これも聖神のお導きと思って行きましょうよ。」
リェナはトゥワの説得が無理だと分かっているので、あっさり引き下がった。トゥワは人間たちの方に歩み寄った。
「どうしました?」
「あの、実は…。」
続きは大きな馬車の揺れに呑み込まれた。真っ先に外を確認したのはリェナだった。
「グリフォンです!」




