魔界での打ち上げ(5)
帰り道、アミーが少し声を低めてトゥワに質問してきた。
「気になるんだけど、ソロでワイバーンのいる階層まで潜ったの?」
「はい。」
「どうして?そりゃ、トゥワなら危険はなかったんだろうけど、王族がそんなことをする?」
トゥワは返答に詰まった。ドラゴネットの母親が地上で暴れており、理由を問い質すと子どもが重傷を負っていることが分かったため、治療のためにダンジョンに降りたのだ。
「私の故郷での立場はそんなによいものではありませんでしたよ。魔法が使えなければ今頃は修道院で生活するはずでした。ダンジョンに行こうが戦場に行こうが、気に留めるヒトなんていませんでした。」
「ミオネラの王族ってどういう立ち位置なの?」
「ミオネラ王国は魔法をほとんど使わない種族が多いので、国王に強さが求められないのです。寿命が短く勤勉な有翼は、国務を司る者として優秀ですよ。国民も十年ほどで代替わりする国王なんていちいち覚えていませんし、他の国でいう総務大臣くらいの立ち位置でしょうか。少なくとも国王以外の王族に権力なんてないに等しいです。」
ミオネラ王国の王族は権力がない代わりに、かなり好き勝手な行動をしている。国王の妹、ツェラ・エンライトなど一年ほど行方知れずだったし、第一王女のスュグ・エンライトは魔法の研究に没頭して、国外の学会にも積極的に参加しているらしい。
「ソワレじゃ考えられないぜ。実力至上主義の国だから、国王はその時の国内最強のヒトで、当然身内も強いからな。ここ数百年は世襲だけどよ。国内で知らない者はないし、ダンジョンに行くとなったら、軍を引き連れて行くに決まってる。」
クックーが言った。ソワレ王国の国王は、いつでも決闘を申し込まれたら受けなければならない。その決闘で負ければ、挑戦者が国王になる権利を有している。たとえ貧民でも。とは言え、現王家は数百年王座を守るほど強く、今や決闘を申し込む者もない。サテュロスである王族は、粗暴で強欲であり、多くの妃と子がいる。
「セフタ公国は不死者の国だから、世襲制にしてもあまり世代交代が起こらないんだよね。僕も伯爵から吸血鬼にされたけど、爵位を継ぐとは思えないから、特に権力はないよ。オラクル帝国から公爵の位をもらうために数百年から数千年に渡って、同じ貴族たちが謀略を巡らせているんだ。同じヒトが時代によって爵位が違うのも特徴的で、歴史を知らないとよく分からない関係性のヒトが多くて、社交界では頭を使うよ。」
現在セフタ公国を治めているヒトはデュラハンであり、五百年前、魔王が現れた混乱に乗じて公爵となった人物である。後継者はいない。
「国によって色々と異なるのですね。」
「種族や風土が異なると、価値観も暮らしも全て変わるからねえ。実際、オラクル帝国は上手くやってるよ。様々な種族と広大な支配地をよくまとめあげてる。」
「帝国の皇族が絶対的な権力を持つのも頷けるぜ。アレッタと同期でラッキーだったかもな。」
「アレッタ皇女からの覚えがめでたいとは限りませんけどね。」
ワンド大学の敷地内に戻る頃には、夜が白み始めていた。部屋に戻るなり、アミーは泥のように深く眠りについた。
【ヒトに何をしてもいいとしたら、何をするか】
1.トゥワ・エンライト
相手の同意が得られたら、負担にならない程度に支配魔法をかける。
2.ザラ・テーラー
手持ちの毒の効果を試す。後遺症が残ろうが死のうが気にしない。
3.アミー・コート
首筋から直接血を吸う。吸い過ぎには注意する。
4.クックー・ディフォンス
美人なら結婚する。そうでなければ、強ければ戦う。どちらにも当てはまらなければ興味ない。




