魔界での打ち上げ(4)
三人は酒屋に向かった。食用とすることが禁じられている動植物や、ヒトの身体の一部と思われるものが漬け込まれている酒が見える。トゥワは回れ右したい気持ちを抑えて、アミーとクックーに続いた。店主はクックーより大きなミノタウロスだ。
「いらっしゃい、何をお探しで?」
「龍好みの酒がほしい。強くて辛口の。」
「それならこのブランデーはどうだい?五十年熟成させた逸品だよ。人頭果を原料としているから、血のような薫りが特徴で、お客さんのような吸血鬼に好まれる酒だ。」
トゥワはドラゴネットも好むだろうと思いながら聞いていた。
「じゃあ、それを大樽一つ分もらいましょうか。」
「失礼だが、そんな大量に買ってどうなさるんで?」
店主は怪訝そうにトゥワを見ている。転売か何かだと疑っているのだろう。
「知り合いの龍に贈るつもりです。」
「龍の知り合い?お客さん、龍騎士か何かで?」
「いいえ。ダンジョンで偶然出会って、世話を焼いたことがあったのですよ。」
店主はさらに困惑した表情を浮かべる。
「龍の世話を焼くっていう状況が分かんねえよ。」
「彼は幼龍だったのですが、どうもヒトに狩られそうになったようで、深手を負っておりました。私は回復魔法の心得がなかったもので、薬草を用いた簡単な治療と食料の調達を行っただけですが、妙に懐かれましてね。」
嘘は言っていない。母親である地竜が激怒して地上を亡ぼそうとしたのを説得して治療させてもらったということは、また別の話だ。
「へえ、面白いこともあるもんだ。嘘を吐いているようには見えないね。」
「納得していただけましたか?」
「俺の酒がダンジョンの龍の喉を通るとはね。光栄なことだ。」
まだ当分ドラゴネットの所へ行くつもりがなかったトゥワは、酒を取り置きしてもらった。
「その龍って、ワイバーンだろ?この間カヴァーンで初めて乗ったが、案外いい乗り心地だったぜ。酒を届けに行くとき、俺も一緒に行っていいか?」
ワイバーンなら会わせてもいいが、相手は地竜だ。普通のヒトは会うどころかその階層まで降りることもできないだろう。
「申し訳ありません。彼は私以外のヒトには好意的ではないので。」
「嗚呼、ヒトに狩られそうになったんだったか。悪い、無神経だったな。」
「お気遣いなく。」




