魔界での打ち上げ(3)
「精神系の魔法もいいってことか?」
「大丈夫です!種族特性もあって、精神的に丈夫なんですよ。」
クックーはトゥワの方を見た。
「確か、二人とも精神の授業を取っていたよな。」
「ヒトに使いたくはないのですが…。」
「本人がいいって言っているし、よくない?抑制剤を飲むくらい支配欲が強いんでしょ?」
「支配魔法ですか!かけて頂いて大丈夫ですよ。蛇の髪があるので、普通のヒトより効きが弱いんです。少々強めにかけても壊れません。ご安心を!」
トゥワは口元を押さえた。笑みが抑えられていない。
『座れ。』
アイリスはぺたりと座り込んだ。
「せっかく強めにかけていいと言って頂いたので、遠慮なく強めにかけますね。魔法は使えますか?」
「石化は得意です。種族特性ですけど。あと、水魔法も少し使えます。」
「それはいいですね。どなたか、魔素回復薬を持っていますか?」
アミーとクックーはトゥワが何をしたいのか分からず、顔を見合わせた。
「何をさせる気?」
「これから説明します。この辺りで魔素回復薬は売っていますか?」
「この店で売っていますよ。注文しておきますね。」
アイリスは手際よく魔素回復薬を注文した。
「で?説明しろよ、トワ。これから何をするんだ?」
「アイリスさん、水魔法を強化したいと思いませんか?」
アイリスの頬が緩んだ。
「そんなことができるんですか?」
「精神的に負担がかかる練習方法ですけどね。どうです?」
「お願いします!師匠!」
トゥワは立ち上がった。
『立て。』
アイリスがスッと立ち上がる。
『全力で水魔法を撃て。』
「アクアショット!」
「ウィンド。」
アイリスの右手の平に水球が出現したかと思うと、トゥワに向けて高圧の水が放たれた。トゥワは身動きもせずに風を出して水を弾いた。威力はあまり強くなかったが、日常で使う分には支障がないだろう。
「これなら強化できると思いますよ。」
「本当ですか?」
丁度その時、魔素回復薬が届いた。
『私は全力で水魔法を撃てと言った。どうして魔法を撃った直後に話せる?』
「え?」
『全力を出せ。使える魔素を全て放出しろ。』
トゥワはアイリスの目をじっと見つめている。アイリスは恍惚としているが、アミーとクックーは焦っている。
「そんなことをしたら死んじまうぜ。」
トゥワは無視した。アイリスに近付き、静かな口調で言った。
『もう一度撃て。今度こそ全力で。』
「アクアショット!」
「エアシールド。」
先ほどの数倍の水量が数倍の速さで打ち出された。衝撃でテーブルの上のグラスが倒れる。トゥワは相変わらず難なく防ぐ。アイリスは魔法を撃つと同時に倒れてしまった。トゥワはすかさず魔素回復薬を飲ませる。
「これはマズくねえか?」
「大丈夫ですよ。本当に全力を出させるほどの支配はしていません。そんなことをしたら即死するので。急性魔素欠乏症にはなったかもしれませんけどね。」
「いや、それも十分マズいでしょ。」
アイリスはすぐ起き上がった。確かに大したことはなさそうだ。
「これで限界を超えた魔法の感覚を掴んだと思いますので、多少は水魔法の威力が上がったと思いますよ。試してみますか?」
「ア、アクアショット!」
「ウィンド。」
二回目に撃った魔法よりは威力が弱いが、一回目と比べると格段に強い魔法が放たれた。アイリスは自分の右手を見ている。
「これ、あたしが?」
「そうですよ。」
「ありがとうございます!」
トゥワはクスクス笑った。
「まさかお礼を言われるとは。怨まれても仕方ないかと思っていました。倒れるくらいの全力を出すことができたのは、アイリスさんに強めの支配魔法を掛けることができたからです。私も久々にヒトに対して強めの支配魔法を使えて楽しかったですよ。」
直後に倒れるほど強い威力で魔法を放つことは、支配魔法を使わないと不可能だ。そして、それほど強い支配魔法を掛けられると、精神にダメージを負うヒトがほとんどだ。
「その練習方法、僕もできないかな?」
「精神に異常をきたしますよ。」
「不死でも駄目?」
「不死でも精神的なダメージは消えなくねえか?」
アミーは残念そうに肩を落とした。
「そろそろ帰ろうか。」
「そうですね。十分楽しめましたから。」
「後は土産を買うだけだな。」




