魔界での打ち上げ(2)
それからしばらく経ち、トゥワはアミー、クックーと共に魔界に遊びに出掛けた。深夜の魔界はギラギラと輝き、喧騒と咽るような濃い臭いで満ちている。甘ったるい香の薫りが血の臭いを覆い隠している。
「場所はお任せしますよ。」
「おう、俺に任せろ。」
クックーは自信ありげに胸を叩いた。
「まあ待ちなよ。まずは軍資金を増やそう。」
アミーは懐から見覚えのある赤い魔石を取り出した。
「盗ってきたのか?」
「獲ってきたんだよ。これはかなり高値で売れると思うな。」
トゥワはダンジョンの主が遺した魔石を売れる店などあるのかと訝しんだが、魔界の怪しげな店は案外すぐに買い取ってくれた。それもかなり法外な金額で。
「ここまでとは…。これで軍資金は潤沢になったね。」
「何なら余るだろ、これ。」
「余った分は山分けしましょうよ。」
三人は大金を手にウキウキしながら店に向かった。魔界にしてはまともな部類の呑み屋で、オプションをつけなければ合法の範疇で楽しめる。
「それでは、魔物狩り大会の健闘を称えて、乾杯!」
クックーは巨人用の大ジョッキに高級な酒をなみなみと注いでおり、アミーはヒトの生き血の入ったカクテルをずらりと並べ、トゥワは高級茶をちびちびと飲み始めた。
「やはり酒は呑まないのか。」
「私は呑みませんよ。ですが、ちょっとヒトに贈りたいと思っていましてね。お勧めの酒はありますか?」
トゥワはドラゴネットへのお礼に酒を贈ろうと思いながら言った。クックーはぐびりと酒を干した。
「種族は?」
「あー、龍です。」
「龍!?随分と顔が広いね。それならアルコール度数が高くて辛いものが良いかな。一緒に買いに行こうか。」
アミーはすでに空になったグラスをいくつか脇に避けながら言った。
「個人的な用事に皆様を付き合わせるのは流石に申し訳ないですよ。」
「水臭ぇな。ダチなんだから気にすんな。」
クックーは肴として出されたケルピーのレバーを頬張りながら答えた。トゥワは隣にある蜂蜜漬けのナッツを噛んだ。その後は魔物狩り大会の話を中心に雑談に花を咲かせた。
「僕、今丁度求血期なんだよね。これじゃ足りないや。女の子を呼んでいい?」
「どうぞ。」
ほどなくしてゴルゴンが現れた。髪は無数の白蛇で目を固く閉じている。かなり美人の部類に入るだろう。
「アイリス・ケープと申します。本日はどのような趣向でしょうか?」
「血ぃもらっていいかな?」
「かしこまりました。」
アミーはアイリスの首筋に牙を突き立てた。アイリスは一瞬痛そうに顔をしかめる。アミーの銀色の瞳が輝きを増したように見えた。
「御馳走様。ゴルゴンの生き血は初めて呑んだよ。ちょっとラミアの癖を弱くしたような味か。僕は好きだよ。」
「ラミアの血の味が分かんねえよ。」
「あたしも吸血鬼の方に血を呑んで頂いたことは初めてですね。貴重な経験ができて良かったです。」
アイリスは微笑んだ。もう傷は塞がっている。
「他にもご希望があれば、何なりとお申し付けください。」
「何なりとって、どのくらいだ?」
「治らないほどの傷を残すのはNGです。それ以外は大体OKですよ。」
アイリスは平然と説明した。トゥワはたじろいだが、クックーは牙が覗くほど口角を吊り上げた。




