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黒翼の羽ばたき  作者: 馬之群
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魔物狩り大会(18)

「何?」

「半径500m…に他のヒトの侵入を…許しましたね。戦うにあたっての条件を…お忘れ…。」


 トゥワは派手に血を噴いた。折れた肋骨が肺に突き刺さっているようだ。


「こいつらが勝手に侵入してきたのだ!認めない、認めないぞ!」

「それでも貴方が…ドームの強度を維持していれば、ヒトの力で破られることは…。」


 ヒューヒューという息の音に混じって、微かにトゥワの声がする。その言葉は途中で完全に消え、身体が力を失ってぐったりとアミーにもたれかかった。


「クックー、戦うな。これはただのゴーレムでは…。」

「分かっている!」


 アミーとクックーは動けずにいた。一刻も早く処置が必要なトゥワを抱え、アミーは目の前の化物をどうにかする策を練っていた。どうシミュレーションしても全滅する未来しか視えない。


「行け。二度とこのダンジョンには戻ってくるな。」


 黒いアレッタは横柄な態度でアミーとクックーに告げた。クックーは警戒するように黒いアレッタを見ていたが、黒いアレッタは3人に背を向け、黒い塵になって消えていった。後には赤い魔石が残った。土のドームも崩壊しているが、逆に足元に積もった瓦礫は元に戻っていく。


「取り敢えずトゥワを連れてここから出よう。」

「嗚呼。俺の背に乗せろ。」


 アミーはクックーの背にトゥワを固定し、クックーが走り去るのを見送った。アミーも精一杯急いで入口に向かう。


「ヒーラー!助けてくれ!」


 クックーは入口に避難していた学生たちに叫んだ。駆け寄ってきたのはアレッタだった。


「エンライト…。」


 アレッタはトゥワをそっと抱き締めた。トゥワの全身が光り始める。


「ダンジョンを崩壊させていた魔物はトゥワが討伐した。今なら外に出られるはずだ。」


 クックーは学生たちに呼びかけた。学生たちは顔を見合わせる。


「どうやって脱出しろと言うんだ?いつまた崩壊が始まるか分からないのに。」

「もう崩壊は止まっている。怪我人を優先的にゆっくり運べばいい。俺がしんがりを務めよう。」

「怪我人を連れて長距離を上れる奴なんていねーよ。」


 その後もしばらく議論が続いた。トゥワの治療は一旦済んだようだ。アミーが息を切らしながらやってきた。


「アム!」


 ベルがアミーに駆け寄った。アミーは状況を把握するために、何人かに質問した。


「大体分かった。僕が指示を出す。君たちは従って欲しい。」

「ふざけんな!何でテメーの言うことを聞かないと…。」

「理論一位の僕が考えた策より合理的なアイディアがあるなら、30秒以内に説明してもらえるかな?」


 誰も何も言わなかった。アミーはてきぱきと指示を出し、学生たちもそれに従った。

 まず自力で岩壁をよじ登れるものが所々岩壁を切り出しながら上まで登る。その間、動けるものはダンジョンの素材などでハンモックを作り、飛行可能なものが怪我人を乗せて運ぶ。途中の休憩ポイントで一度ハンモックを下ろし、担ぎ手を交代する。その後のプランもあったのだが、怪我人が上り切る頃には、先生方が異常に気付いて救出に向かっていた。


「これは酷い…。」


 結局、今回の騒動では死者こそ出なかったものの、負傷者は多数出て、魔物狩り大会そのものが中止となった。トゥワはアレッタの熱心な看病のかいがあって、一週間ほどで完治した。問題のダンジョン、カヴァーンには後日調査団が送られたが、そこでヒトビトが見たのは、無秩序で荒廃した世界で荒れ狂う魔物たちだった。ダンジョンの主、シルトが殺されていたことをヒトビトが知るのは、かなり先のことだった。

【自分より弱い敵が一番大切なヒトの姿に擬態したら】


1.トゥワ・エンライト

戦わずに済む方法を探す。それが無理なら泣きながら倒す。


2.アミー・コート

攻撃態勢を解き、殺された瞬間に止めを刺す。


3.クックー・ディフォンス

カッとなって殺してしまう。しばらく苛々している。


4.アレッタ・エクルー

表情を変えずに戦う。本人が敵対したとしても同じ行動を取る。


5.ザラ・テーラー

特に気にすることはなく殺す。所詮偽物なので、他の敵と同じ扱い。


6.ドラゴネット

一瞬で消滅させる。大切なヒトを侮辱するような存在は見たくもない。

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