魔物狩り大会(16)
トゥワの放った高威力の風の刃は、ゴーレムの前に現れた土壁に当たったかと思うと、轟音を響かせながらそれを粉砕した。二つの魔法が衝突した衝撃で、崩壊しかけていた地盤が激しく揺れ動く。
「こんな馬鹿な…。ヒトの分際で…。」
ゴーレムの動揺する声が聞こえる。トゥワは冷ややかにシルトの反応を見ていた。トゥワは別のダンジョンの主である、ドラゴネットの母親と直接対峙して勝っている。この条件では負けないという自負があるからこそ、命懸けで戦いを挑んでいるのだ。
「シムーン。」
トゥワはぼそりと呟いた。ゴーレムは警戒したが、何も起こらない。トゥワは間髪を容れずに叫んだ。
「エアブレット!」
「アースシールド!」
トゥワは土壁ができた一瞬のうちに黒いゴーレムの背後に回り込んだ。普通のゴーレムの何体かがトゥワを攻撃するが、トゥワはそれを躱しながら叫んだ。
「トルネード!」
無数の竜巻がゴーレムを吹き飛ばした。竜巻が砂塵を巻き上げる。その砂を微かに吸ってしまったトゥワは眩暈を覚え、慌てて自分の周りに空気の層をつくった。
「ガイア!」
ゴーレムが叫ぶと、四方八方から土がうねるように押し寄せてきた。ドームが丸ごと土で埋め尽くされ、中にいる全てを呑み込もうとしているようだった。トゥワは圧死させられる前に魔法を繰り出した。
「パズズ…。」
トゥワの一言で生じた熱風は、黒いゴーレムに襲い掛かって、その左腕をもぎ取った。その途端、周囲の土塊が消え失せた。トゥワが咳き込んでいる前で、黒いゴーレムの腕が本体の所に飛んで行って繋がった。
「そなた、本当にヒトか?」
黒いゴーレムは初めて警戒する素振りを見せた。トゥワは無視して呟いた。
『爆ぜろ。』
トゥワが言うと、黒いゴーレムは内側から爆発した。胸の辺りに、赤々と輝く魔石が露わになる。
「どう…して…。」
「私が毒風を使った直後に、大声で魔法を唱えたでしょう。ゴーレムと痛覚まで共有していないでしょうから、毒を吸ってしまったことにも気付かなかったはずです。あの時からずっとシムーンは、その身体を蝕んでいたのです。」
トゥワは大技を準備している間に、シルトに解説した。黒いゴーレムは少しずつ再生しているが、まだ魔石は剥き出しになったままだ。魔法の応酬が止んだことで、トゥワはようやく、外の喧騒に気が付いた。
「健気だなあ。そなたの心配をして、このドームを破壊しようとしているヒトがいるぞ。」
「言っておきますが、彼らに掠り傷でも付けたら、シルト様の負けですからね。」
トゥワの指先に空気が集まり始めた。黒いゴーレムの前に数体のゴーレムが出現したが、トゥワは構わず魔法を撃とうとした。このくらいでは盾にもならない。
「セクメ…ト…。」
トゥワは魔法を撃ちかけて止めた。黒いゴーレムを庇うようにトゥワを睨んでいるそのゴーレムの顔は、アミーそっくりだった。
「どうした?お得意の魔法はもう撃たないのか?」
黒いゴーレムは馬鹿にするような響きで言いながら、トゥワに向かって金槌で殴りかかってきた。トゥワはそれらを風魔法で破壊しながら、再びゴーレムに狙いを定めた。




