魔物狩り大会(14)
「そなたが儂と話したいというヒトか。地竜、ドラゴネットとどのような知り合いだ?」
それは地の底から響いてくるような声だった。並のヒトならこれだけで気が動転することだろうが、トゥワはドラゴネットやその母と直接言葉を交わしたこともある。冷静に答えた。
「ドラゴネットは私の弟のようなものです。時間がないので、早速本題に移らせて頂きます。今、ここには多くのヒトがいます。彼らが無事に地上に帰れるように、ワイバーンを退かせて頂き、地盤を安定化させて下さいませんか。」
「ふむ。思い出したぞ。そなた、さてはトゥワ・エンライトだな。1年前に6層に来て火竜を狩って去っていった。」
ゴーレムは眉間に皺をよせていたが、不意に手を叩いて言った。トゥワは蒼ざめた。確かにそれは自分だ。
「申し訳ございませんでした。緊急事態だったもので。それより、どうにか友達を救って頂けませんか。」
「ドラゴネットを殺す手伝いをしてくれるなら考えてやらんでもない。」
トゥワは溜息を吐いた。このくらいは想定内だ。
「お断りします。それでは最後に質問させて下さい。何のためにワイバーンを1層に送ったのでしょうか。」
「教えてやる義理はない。と言いたいところだが、そなたの勇気に免じて教えよう。邪教徒と取り引きしたのだ。この日にダンジョンに来たものを全て殺せば、ドラゴネットと戦争する時に力を貸そうと言われたものでな。」
トゥワは放心状態になった。邪教徒とは、邪神の信奉者の一団のことだ。既に邪神は勇者によってどこかに封印されているが、その封印を解き、地上を滅ぼしてもらおうと目論むのが邪教徒である。
「邪教徒は何のためにそのような取引を…。」
「知らぬ。この中に誰か殺したい者でもいたのかもな。或いはそなたかもしれぬ。そなたは儂が手を下さねば殺せそうにないからな。」
トゥワは嫌な予感がして飛び上がった。地面が流砂のようになり、倒れていた魔物を呑み込んだ。それだけではない、辺りからゴーレムが無数に生成され始めた。
「土神の力を受け継いだ方が、邪神の信奉者の言いなりになるとは…。」
「心配はいらぬ。そなたたちが死ねば誰にも分からないことだ。」
トゥワはエアブレードでゴーレムを切り裂いた。しかし、後から後から湧いてくる。きりがない。このままだとアミーたちが戻ってきてしまう。
「シルト様、この戦いは不毛です。私は命の危機が迫ったら、いつでもこのダンジョンから逃げ出せます。ドラゴネットを呼んでも構わないのですから。私がここに残っているのは、他のヒトを救いたいからです。その方法がないのであれば、このまま失礼致します。」
トゥワはシルトに鎌をかけた。本当は他のヒトを見捨てるつもりなどないが、シルトは自分を見逃すわけにはいかないはずだからだ。
「逃げられると思っているのか?」
「私だけなら。他のヒトを助けて下さると言うなら、まだ交渉の余地はありますよ。如何です?」
ゴーレムの攻撃が止んだ。その時を見計らったかのように、遠くからクックーの叫び声が微かに聞こえてきた。
「トワアアァァーーーー!」




