魔物狩り大会(13)
「30、いえ、20分下さい。相談したいヒトがいます。その間に作戦の準備を進めていて下さい。」
「分かった。20分後、此処に戻ってくるよ。」
「お願いします。アレッタ皇女のパーティーが近くにいるので、今なら助けてもらえるはずです。」
トゥワは近くのワイバーンにクックーとアミーを乗せて入口まで行くよう命令した。二人がいなくなった後で、トゥワは叫んだ。
『鎮まれ!』
魔物の大部分が大人しくなった気配がするが、既に始まった崩壊は止まらない。トゥワは懐から5センチ四方くらいで純白の鱗を取り出した。トゥワはそれを口元に持っていって話し掛ける。
「ドラゴネット、聞こえますか?」
しばらく返答はない。それでも、トゥワは最後の頼みと思って待ち続けた。
「お久しぶりです、吾が君。何か御用でしょうか。」
数分後に鱗から聞こえてきたのは、まるで弦楽器で和音を響かせているかのような、同時に複数の音色が響いていて、それでいて安心感を与える声だ。
「今、私は『カヴァーン』にいるのですが、1層にワイバーンの群れが上がってきているのです。原因が分かりますか?」
「カヴァーンにいらしたとは…。通路から湧いてきているのでしょうか、岩壁が崩されているのでしょうか。」
「岩壁が崩されました。ダンジョンそのものが崩壊しそうな勢いです。」
トゥワの周囲で、魔物が次々と上から降ってくる岩に潰されている。
「それはダンジョンの主の命令でしょう。カヴァーンの主は、土神の力を分けてもらった半神、シルトです。ただのワイバーンにはダンジョンの岩盤を破壊することなどできませんから、シルトの手助けがあったのかと…。」
トゥワは困ってしまった。半神が相手では交渉のしようもない。
「そうですか…。分かりました。ありがとうございました。」
「もし、吾が君がお困りなら吾が直接シルトに会って話しをつけましょうか。」
ドラゴネットはトゥワの心中を察したのか、ありがたい提案をしてきた。
「ありがたいお話ですが、それには及びません。ドラゴネットもミオネラのダンジョンの主でしょう。大義名分もないのに、下手に動いたらダンジョン同士の全面戦争になりかねません。」
「それでも吾は構いません。シルトは吾が父が亡くなった際に、吾が居城に攻めてきて陥落させようとした者です。機があれば報復しようと思っておりました。」
トゥワは悩んだ。下手すると地上も巻き込んだ大戦が始まる。しかし、手をこまねいていると大勢の犠牲者が出る。
「ドラゴネットはミオネラにいるままで、私がシルト様とお話しすることはできませんか?どちらにせよ、ドラゴネットのような大物がこのダンジョンに来れば、学生の何人かは死んでしまいます。」
「まあ、ダンジョンの主である吾の紹介であれば、吾が君のことをシルトも無視できないでしょう。交渉しましょうか。」
「できるだけ早くお願いします。」
トゥワは焦る気持ちを抑えて待った。少しして、鱗から声が聞こえてきた。
「吾が君のもとに象徴体と声だけ届けるそうです。吾は干渉するなと言われましたので、申し訳ありませんが、ここで失礼致します。何か御身に危険が迫ればすぐにでも馳せ参じます。」
「ありがとう。後でお礼しますね。」
鱗から返答はなかった。程なくして、近くにあった土が盛り上がり、ヒトの姿を模した。その姿に見覚えがあるとトゥワが思いめぐらせる。有名な彫像そっくりの姿だった。




