魔物狩り大会(12)
ワイバーンが何頭かうろうろしている。目が見えない個体もいるようで、辺りを出鱈目に攻撃している。トゥワはアジトキシンの姿を探して、その周囲を飛び回った。飛んでいる最中に何かに当たった感覚を覚えた。嫌な予感がして風魔法で防御すると、大量の毒液が飛んできた。防がなかったら危なかった。
「アジトキシンさん!トゥワです!」
「エンライト殿、後ろ!」
ワイバーンがトゥワ目掛けて襲い掛かってきた。
「トルネード!」
複数の竜巻が巻き起こり、ワイバーンを薙ぎ倒した。地響きを立てて何体ものワイバーンが墜ちてくる。ワイバーンの攻撃で脆くなっていた頭上の岩盤まで崩れ始めた。
「これ、倒さない方がいいですね。逃げましょう。」
トゥワはアジトキシンと一緒に飛び立った。アジトキシンは腕から血を流しているが、ワイバーンの毒で弱っている様子はなかった。本人が毒の能力を持っているからだろうか。アレッタの所に合流したが、そこでも岩が降り続けている。
「良かった。生きていたか。」
「されど、此処も危険が迫っておるように見受けられる。離れましょうぞ。」
アレッタはアジトキシンの怪我を治した。
「私は他の方々も助けたいので、ここでお暇しても構いませんか?」
「後は吾輩が引き受けた。」
サップルの言葉を受け、トゥワは崩落している岩場の中心地に進んでいった。
「どなたか逃げ遅れた方はいらっしゃいませんか!」
周囲には無数のワイバーンと魔物の群れが、狂ったように暴れている。1層はどんどん崩壊しているが、ワイバーンは上がってくる一方で、状況はより混沌としていく。
「トゥワ!」
アミーの声がしたので、トゥワは急降下した。二人とも怪我はないようだが、服は少し破けている。トゥワが周囲にいるワイバーンを攻撃しようとすると、アミーが止めた。
「駄目だよ。崩壊が速まるから。できれば支配魔法で大人しくさせて。」
『鎮まれ!』
トゥワの声が届いた範囲にいた魔物は大人しくなったが、後から後からやってくる。きりがない。
「早く脱出しましょう。」
「それなんだけど、難しそうだね。この中を無事に上がっていくのは、はっきり言って無理だ。」
アミーは冷静に言った。
「私が障害を薙ぎ倒します。行きましょう!」
「聞いて。他のヒトはほとんど飛べない。いくらトゥワでも全員を一度に運べはしないだろう?他のパーティーは、きっとワイバーンを倒すことすらままならないからね。」
クックーは黙って考え込んでいる。
「どうしたら…。」
「見たところ、入口付近の地形はしっかりしているようだ。魔物を此処に集めてわざと崩落させれば、何もしないよりは大勢が脱出する時間を稼げるかもね。死者は出るだろうけど。」
トゥワとクックーは咄嗟に反応できなかった。
「崩落させるヒトが危険じゃないか?生き埋めになるかもしれねえ。」
「僕がやるよ。僕は生き埋めになろうが死なないからね。」
トゥワは歯噛みした。地竜にさえ勝ったのに、1層でこんな事態に陥るとは思わなかった。トゥワの使う風魔法は威力が大きすぎて危険だし、支配魔法は全ての魔物に効くわけではない。翼を出した状態でもない限り。
「どうしてこんなことに…。」
「何か陰謀を感じるけど、時間がなさすぎる。ダンジョンの主でも話を聞かないと無理だ。悩んでいる暇はない。」
トゥワはハッとした。そうだ。ダンジョンの主と話せばいい。




