魔物狩り大会(6)
トゥワは翌朝、理事長室に向かった。相変わらず雑然とした部屋には、横柄な態度のザラが座っている。ザラは紅茶とクッキーを出してきたが、流石のトゥワも手を付けなかった。
「何の用ですか。」
「ダンジョンに行く際のパーティーですが、あの申請は間違いでした。取り下げさせて下さい。」
ザラは鼻で笑った。
「一度決定したことは覆せない。残念でしたね。」
「その申請は私たちではなく、他のヒトがしたことです。無効でしょう?そんな申請が認められたら大混乱です。」
「アレッタ皇女は、君に直接パーティーのメンバーを聞いたのだと言っていました。彼女が嘘を吐いていると?」
トゥワは冷や汗を掻いた。アレッタも嘘は言っていない。
「事情が変わったのです。どの道、アレッタ皇女には他のパーティーの申請をする権利がないはずです。」
ザラは紅茶を啜った。
「失敬。冗談が過ぎたようですね。実はわざと受理したのには理由がある。賭けをしませんか。」
「賭け、ですか。」
「そう。魔物狩り大会で君たち3人が1位になれば、君にデューイ・エンライトの居場所を教えてあげよう。」
トゥワは勢いよく立ち上がった。紅茶が少し零れる。
「どうして、貴方がデューイ殿下のことを…。」
「それは君が知る必要のないことです。」
トゥワは座った。デューイはトゥワの兄で、諸事情があって失踪したのだ。ミオネラ国内でも行方を知っているものがない。
「信じられませんが、話を進めましょう。では、私が1位になれなかった時には?」
「君の力の秘密が知りたい。ただの有翼ではないでしょう。」
トゥワはザラを睨んだ。
「秘密なんてありませんよ。私はそういう体質に生まれついたというだけで…。」
「嘘はよくないよ。生まれつきだと言うなら、きっと両親が特別なのでは?どうもクァリアにも今は亡きトェンダにも似ていないように見える。本当の両親について話してくれれば…。」
ガシャンと音を立ててティーカップが割れた。トゥワを中心として同心球状に風が吹き荒れたことが原因のようだ。
『黙れ。』
ザラは声を出せなくなった。トゥワはザラを睨んでいる。
「薬入りの紅茶を大人しく飲んだことで、私を見くびったのなら、お門違いというものです。横暴が過ぎるのでは?デューイ殿下の居場所くらい、無理やりにでも聞き出せますよ。」
トゥワはザラの怯えた表情を見て、徐々に頭が冷えてきた。やりすぎた。
『発言を許可する。』
「私に何かあったら、デューイは死にますよ。」
「まあ、それは困りますが、人質さえ取ればいいなりになると思われるのも困りますね。」
ザラはトゥワの態度から、デューイが死のうが生きようがどうでも良いと思っていることが分かった。
「手荒な真似はしたくなかったけど、デューイから君の情報を聞き出しましょうか。」
「…考えてみれば、何も悩まずとも、1位になればよいだけの話でしたね。良いでしょう。その賭け、乗りますよ。私が1位になれば、デューイ殿下を私に下さい。その代わり、私が1位を逃したら、私の力の秘密についてお話ししましょう。」
トゥワはザラの思い通りになることが気に入らなかったが、1位を取ることなど容易いだろうという思いもあり、提案を受け入れることにした。
「賭けのことはくれぐれも他言しないように。幸運を祈りますよ。」




