魔物狩り大会(3)
アレッタが声を掛けてきた。後ろには三人のヒトがいる。暗緑色の長髪に、水のマスクをしている美女としなやかな体つきの黒豹の獣人、巨大なサソリの尾を持ち、黒いマスクをしている青年が品定めするようにトゥワを見ている。まだ授業は終わったばかりで、教室には多くのヒトがいる。
「ええ。どうなさいましたか、殿下。」
「私とパーティーを組まないか?」
「え…。」
トゥワは言葉を失った。アレッタに誘われるのは全くの予想外だった。
「アレッタ殿下が直々にお声掛け下さったのだぞ。すぐに応じないか、愚か者。」
黒豹は低い声で言った。トゥワは眉をひそめた。
「貴方がたは殿下のパーティーのメンバーでしょうか?」
「そうだ。説明がまだだったな。まずは自己紹介をしてもらおうか。」
アレッタが言うと、三人は素直に応じた。
「サップル・ノワールだ。カヴァーン国王の甥にあたる。念動魔法が得意で、ガーディアンとして参加する。見ての通り黒豹の獣人だ。」
黒豹が名乗った。鋭い眼光でトゥワを睨んでいる。
「アジトキシン・スコーピオンと申す。フォグ大公国の侯爵家出身でござる。蠍人で、サーチャー。罠魔法の使い手でござる。」
サソリの尾を持つ青年が言った。独特な言い回しが気にかかる。
「フォーミーも名乗れ。」
アレッタが促すと、暗緑色の髪の女性は口を開いた。
「リード・フォーミー。」
トゥワは一瞬、リードの言った内容が入ってこなかった。脳を揺さぶるほど美しい声だ。小さな声で言って黙ってしまったため、アジトキシンが補足した。
「失礼。フォーミー殿はセイレーンで、声に魅惑の効果があるゆえ。海中王国、トリトンの王女でござる。サポーターとして魅惑魔法を使って下さるそうじゃ。」
「最後に私、アレッタ・エクルーはヒーラーとして参加するつもりだ。エンライトにはアタッカーとして加わってほしい。」
トゥワは考え込んだ。このパーティーが優秀であることは、世間知らずなトゥワにも分かる。しかし、トゥワの心の奥底で警告が鳴り響いている。
「トゥワ・エンライトです。カヴァーン国の隣国、ミオネラ王国の王子で、有翼です。得意魔法は精神系の魔法と風魔法ですが、錬成や火なども少しはできます。ただ…。」
アレッタは黙り込んだトゥワに声を掛けた。
「どうした?」
「…少し考えさせて頂けませんか?即答は致し兼ねます。」
「お前なあ!」
サップルは牙を剥いた。アレッタはサップルを制した。
「分かった。明日の昼12時に食堂で返事を聞かせてくれ。」
「承知しました。ではまた明日。」
トゥワたちは急いで次の授業に向かった。
「遅刻だよ、君たち。」
「申し訳ありません。」
ハンディは不機嫌な様子だった。無理もないかもしれない。学生の意識はすっかりダンジョンに向かって浮足立っており、授業に集中してくれそうにない。
「授業に集中しなさい。ダンジョンでは平常心が大切だ。今のままじゃ、全員仲良く魔物の腹の中だよ。」
トゥワはこの授業が苦手だったため、真面目に聞いていた。最後まで授業中の私語は止まなかったが、無事に授業は終わった。




