銀眼に映る悪意(5)
「好きにすればいい。」
「何?」
「お前の好きにしろ。何をしても止めねえよ。」
小悪魔は眉を吊り上げ、トゥワの首にナイフを強く押し当てた。血が一筋滲む。
「全員武器を捨てて…。」
『黙れ。』
トゥワが一言呟くと、小悪魔は口をパクパクさせた。驚いたようにナイフを握る力を強めた小悪魔だったが、反撃することはできなかった。トゥワが次の命令をしたためだ。
『動くな。私の質問に対して、速やかに知っていることの全てを答えろ。それ以外の一切の行動を禁止する。』
小悪魔は彫像のように動かなくなった。アミーとベルも驚いたようにトゥワを見つめている。
『どうして私たちを襲った?目的は?』
「銀眼の吸血鬼から眼球を抉り取るため。」
小悪魔は見事に口だけを動かして答えた。アミーは嫌悪感を露わにしている。
『眼球を奪ってどうするつもりだった?』
「眼球愛好家に売るつもりだった。」
『眼球愛好家とは何だ?』
「美しい眼球を買い取ってコレクションにするヒトのことだ。」
クックーは顔をしかめた。あまり気持ちのいい話ではない。
『つまり、眼球愛好家の誰かから、アミーさんの眼球を持ってくるように依頼されていたのか?』
「違う。」
「売れると思ったのだろう、僕の眼が。」
アミーは愁いを帯びた銀の瞳で小悪魔を見ている。その眼は魔性の美しさを湛えている。
『そうなのか?』
「そうだ。」
「あ、あの…もう充分ではありませんか。騎士団につ、突き出しましょう。」
ベルがおずおずと言った。
「そうですね。後は騎士団に任せるとして、他のヒトも拘束しましょう。」
「あ…他のヒトはもう…死んだみたいです。」
トゥワは胸に手を当てて目を閉じた。
『自他に危害を加える行為は一切行わず、騎士団に出頭し、自分の犯した罪の全てを具に説明せよ。もう動いて構わない。』
トゥワが言い終わるや否や、小悪魔はナイフを振りかざしたが、トゥワに振り下ろすことはできなかった。小悪魔は地面に膝を付いて泣き出した。
「この悪魔!お前が最初からこうしていれば、オレの仲間は…死なずにすんだのに!わざと力を隠して、安全圏から戦いを眺めて楽しんでいたのか?この悪趣味なヒト殺し!」
トゥワが動きを止めた。顔から血の気が引いていく。
「違う…。私は殺すつもりなんて…。」
その途端、小悪魔はナイフをトゥワに向かって再度振りかざした。今度は止まりそうな気配もなく、トゥワの頭を目掛けて加速していく。大きな音が響いたかと思うと、小悪魔の身体は宙を舞っていた。ぐしゃりと嫌な音が響き、クックーが血塗れの拳をハンカチで拭う。
「しっかりしろよ。魔法が解けているぞ。こんな安っぽい挑発で心を乱すな。」
トゥワが少なからず動揺したのは、小悪魔の発言がある意味核心を突くものだったためだ。トゥワが最初静観していたことには、もっと言えばアミーを尾行することにしたことには理由がある。




