銀眼に映る悪意(4)
「どうしたの?」
ベルは目を瞑った。
「十二時の方向と、四時の方向、七時、十時の方向にヒトが…。全部で九人。」
「さっきベルさんが仰っていた、ヒト狩りでしょうか。」
ベルは頷いた。さっきまでの表情とは打って変わって、黒い目がぎらついている。
「よっしゃ!俺は向こうの敵を片付けてくるぜ。」
クックーは楽しそうに言った。ベルは矢を番えながらそれを制した。
「必要ありません。」
「囲まれているんだろう?弓矢でちんたら倒すつもりか?」
クックーは不満そうに言った。ベルは集中しているようで、何も反応を示さない。アミーはクックーに向かって首を横に振ってみせた。
「まあ、ここは大人しくしていましょう。これ以上彼女を邪魔するのも申し訳ないですから。」
トゥワは宥めるように言った。クックーは舌打ちをしたが、身体強化を解いている。ベルは真上に向かって弓を引き絞った。
「目と耳を固く塞いで下さい。」
三人がベルの言葉に従う頃には、矢は空高くに上がり、空中で大きな音と閃光を放った。星彩花の光が霞み、真昼よりも眩しく周囲が照らされたかと思うと、次の瞬間には第二の矢が三本放たれた。悲鳴と鈍い物音がした。
「かかれ!」
敵の声がしたかと思うと、三方から六人の人影が迫ってきた。そのうち二人は空中で矢に倒れた。ベルは流れるように、さらなる矢を番える。
「ファイア!」
敵の一人の言葉に合わせて火球がベルに迫ってきた。ベルの矢は火球を裂いたが、矢も敵に届く前に燃え尽きた。ベルの次の矢は敵の短剣を止めるのに間に合いそうもなかった。ベルの黒い瞳に迫りくる短剣が映り込む。
「おら!」
矢の飛ぶ速さより何倍も速くクックーが飛んできたかと思うと、敵に反応の隙すら与えず、その身体を遥か遠くまで殴り飛ばした。ベルは驚きながらも、クックーの背後に迫る敵に気付いて矢を射かけた。倒れた巨体の背後から小さな人影が現れ、クックーの胸元に短刀を突き刺した。
「いやあああー!」
ベルは叫んで蒼ざめた。ノームのような小さな敵はにやりと笑ったが、次の瞬間、その身体はがっしりとした手の中に納まっていた。
「買ったばかりの服を駄目にしやがって。」
「ば、馬鹿な…。確かに心臓を貫いたはず…。」
ノームはクックーの手の中でじたばたと暴れている。
「俺に掠り傷でも付けたけりゃ、最低でもエアブレードくらいは修得してから挑め。これで全員か?ベル。」
「い、いえ。あと一人。」
「動くな!動けばこいつを殺す。」
ムスッとした顔をしているトゥワの喉元にナイフを突き付けているのは、鋭い尻尾を持った小さなヒトだった。小悪魔の類だろう。慌てるアミーとベルをよそに、クックーはにやりと笑った。




