銀眼に映る悪意(3)
次の瞬間、トゥワは心臓が跳ね上がるような感覚を覚えた。まず、アミーはゆっくりと帽子を取った。藤色の髪の毛はしっかりセットしてあって、いつもよりあか抜けて見えた。そして、アミーが眼鏡を外した瞬間、トゥワはその瞳に釘付けになった。角度によって色合いが複雑に変化して見える瞳は、ヒトの目ではなくダイヤモンドか何か、いや、それ以上の美しさに見えた。
「目を瞑って、ベル。」
ベルと呼ばれたエルフはうっとりと目を瞑った。アミーはベルの耳のすぐ下に唇を寄せた。トゥワはこれ以上覗くのは良くないと思って、クックーの袖を引っ張った。
「伏せて、アム!」
ベルは突然叫んだ。アミーがポケットから何かを投げると、アミーとベルのいた場所に煙幕が立ち込めた。トゥワが驚いていると、ベルとアミーのいた辺りから矢が飛んできた。クックーは素手で飛んできた矢を掴んだ。
「何か誤解が…。」
トゥワが言う暇もなく、クックーの手の中で矢が爆発した。身体強化したクックーも至近距離で爆発に巻き込まれ、手から血を流している。
「動かないで。」
煙がなくなり、ベルが小弓を構えてトゥワとクックーを睨んでいる様子が露わになった。アミーは銀の目でトゥワとクックーを見て、大声を上げた。
「何だ、君たちか。弓を下ろして、ベル。」
アミーに言われ、ベルはゆっくりと弓を下ろした。アミーは二人に駆け寄った。
「尾行なんて随分無粋な真似をしてくれるね。」
「いきなり矢を射かけるヒトに言われたくねえよ。」
「すみませんでした、アミーさん。」
アミーの態度は朗らかで、怒っているようには見えなかった。
「え、えっと、申し訳ないです…。あの…アムは以前からヒト狩りに狙われていて、誰かが尾行する気配を感じたから、てっきり、その、ヒト狩りだと思って、あたし…。」
ベルは先程の威勢とは打って変わって、おどおどした態度で謝ってきた。
「よく気付いたな。尾行には自信があったんだが。」
クックーは言ったが、どうして自信があるのかとは誰も尋ねなかった。
「えっと…あ、あたし、探知魔法が得意で…。」
「嗚呼、それでさっきアミーさんの耳元で囁いたというわけですか。」
「そのちょっと前にベルが『誰かいる』と知らせてくれたから、作戦会議を、ね。」
トゥワは訝しんだ。そんなことを言っていただろうかと思ったが、遠くて聞き取れなかっただけかもしれない。
「改めて紹介しよう。僕の恋人のベル・ルピナスだ。ベル、彼らはクックー・ディフォンスとトゥワ・エンライト。先日知り合ったばかりなのに、もうデートを追い回すようなヒトたちだよ。」
「悪かったって。」
クックーが唸るように言った。ベルは口元を隠して笑っている。
「探知魔法と言っても、普通は常時発動させないでしょう。いつから気付いていたのですか?」
トゥワはベルに尋ねた。ベルはアミーの陰に隠れた。
「広間…を回っていたら嫌な予感がしたから…。つけられていることに気付いて、す、すぐに広間を抜けました。」
不意にベルが遠くを見つめた。アミーの表情が変わる。




