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黒翼の羽ばたき  作者: 馬之群
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初授業(7)

 二日後の夜に精神の実技の授業があった。トゥワはアミーと一緒に授業を受けることにした。先生は随分と際どい格好のグラマラスな美女だ。サングラスを掛けているが、キラキラと魅力的な瞳がその奥に見えている。男子学生の中には露骨に呆けているものもいる。アルアと名乗ったその女性はサキュバスだった。


「精神の魔法は、多くのヒトに警戒されているわねぇ。無理にヒトの意思を曲げるからよぉ。あたしたちは他の魔法を習う者よりずぅっと、魔法を制御するということを大切にしないといけないわぁ。だから、魔法をヒトに使うことはしないしぃ、みんなには精神系遮断魔法具を着けてもらうわよぉ。」


 ねっとりした口調が気になったが、言っていることはまともだ。ラミアのような学生が手を挙げた。


「あの、魔法をヒトに使わないで、どうやって授業を行うのですか。」

「いい質問ねぇ。最初はこれを使うわぁ。」

『来なさぁい。』


 アルアが支配の魔法を使うと、隣の準備室の扉が開いた。そこからぞろぞろと現れたのは、ただ土を固めて雑多に作ったような、粗末な造りのゴーレムだった。大きさは50㎝程度で、ハニワのような見た目だ。頭の上には布が乗っているようだ。精神系遮断魔法具だろう。


「精神系の魔法に感応しやすいように造ってあるわぁ。これじゃぁ、物足りないヒトもいるでしょうけどねぇ。そのうち、キメラ、ホムンクルスへと段階を上げていくけどぉ、最初からヒトに近いモノに魔法を掛けると精神衛生上良くないのよぉ。」

『一体ずつ学生の所に行きなさぁい。』


 ゴーレムは列をなして歩いていって、机に乗って静止していった。


「まずはぁ、精神系遮断魔法具を被ってねぇ。今日は好きに魔法を掛けて良いわよぉ。追加のゴーレムが欲しければ言ってちょうだいねぇ。」


 トゥワとアミーは頭巾を被った。


『エンチャント。』


 アミーの言葉に反応して、ゴーレムはゆっくりとアミーに近寄ってくる気配を見せたが、途中で止まってしまった。アミーは溜息を吐いた。


『踊れ。』


 トゥワの言葉を受け、ゴーレムはすぐに机上で回り出した。トゥワは手を挙げて、追加のゴーレムを要求した。アルアは新たに四体のゴーレムをトゥワの机に向かわせた。


『マッサージしろ。歌え。ノートを取れ。教室内を偵察して、他の学生の様子を報告しろ。』


 トゥワは全員にバラバラの命令を下した。中には複雑な指令も含まれていたが、ゴーレムはめいめい動いている。トゥワにとっては簡単なことだった。退屈だ。

 自分の意のままに動き回る五体のゴーレムを見て、トゥワは次第に自分の家族を重ね合わせ始めた。父、おば、兄、姉、自分。


『互いに攻撃し合え。』


 ゴーレムは互いに殴り合った。トゥワはその光景を眺めながら頬杖をついていた。一体の頭が欠けた。


「…トゥワ?」


 トゥワにはアミーの言葉が届いていないようだった。濃紺の目に微かな狂気を感じる。支配欲に呑まれているのかもしれない。トゥワは口の中で呟いている。


「私に見立てたゴーレムが真っ先に壊れるとはねえ。フフフ。こんな簡単に片付いたら苦労しないでしょうね、陛下?」


『全員で私を…。』


 アミーが唐突に机を引っ繰り返した。ゴーレムが床に叩きつけられて割れる。トゥワはハッと我に返ったようだ。


「すみません。ゴーレムが机から落ちそうになっていたので、慌てて取ろうとしたら…。」

「良いわよぉ。安物だものぉ。授業も終わりだしねぇ。」

『片付けなさぁい。』


 ゴーレムがゴーレムの破片を片付ける中、トゥワは自分の口元を押さえていたが、ゆっくりとアミーを見た。アミーはにっこりと笑った。


「ごめんね。怪我はない?」

「え、ええ。お気遣いありがとうございます。」

「良かった。帰ろうか。」


 トゥワは立ち上がったが、アミーに付いて行こうとしなかった。


「先に戻って下さいませんか?」

「分かった。またね。」


 トゥワはヒトのいない教室に入った。トゥワは辺りを見渡し、誰もいないことを確認して、遮音魔法をかけた。

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