初授業(4)
アレッタの番が来た。アレッタはウィンドを使い、放出した魔素の大部分が風に変わるのが見えた。変換率は70%くらいだろう。
「素晴らしい。」
「ありがとうございます、先生。」
アレッタは堂々と教室を出て行った。その後も列はどんどん進んでいき、遂に教室にはアミーとトゥワとハンディしかいなくなった。
「君たちで最後か。早くしなさい。どちらが先?」
「では、僕が。」
アミーが立ち上がった。
「アミー・コートです。魅惑魔法で良いですか?」
「相手が百齢100歳を超えたおばあちゃんでも良ければどうぞ。」
アミーは失笑したが、すぐに魔法の準備をした。
『エンチャント。』
アミーの身体から発せられた魔素の量はとても少なく、そのうちの30%ほどは魔法に変換されたようだったが、相手を魅惑するのに十分には見えなかった。
「…伸びしろがありますね。」
アミーは苦笑いした。
「じゃあ、先に帰るね。」
「はい。また後で。」
アミーは教室を出て行き、トゥワは前に進み出た。手が小刻みに震えている。
「緊張しないで。名前と魔法を言いなさい。」
「トゥワ・エンライトです。風魔法、ウィンドを使います。」
トゥワは目を閉じた。ゆっくりと手を前に出す。
「ウィンド。」
ハンディの目の前を一陣の風が吹き抜けた。ハンディは動きを止め、トゥワの顔を見ている。
「これはこれは…。」
「すみません。実は魔法変換率という概念を知らなかったもので…。」
「そのようだね。変換率が20%にも満たないということは、根本的に魔素を魔法に変換するという感覚がないようだ。大量の魔素を放出すれば、変換率がいくら低くても取り敢えず魔法を使えるから、無意識のうちにただ魔素を放出しているのだろう。魔素制御の基礎から教えるつもりではいるが、ついていけないようだったら言いなさい。個別に対応しよう。」
トゥワは顔を伏せた。
「はい…。ありがとうございます。」
アミーはトゥワに結果を尋ねなかった。アミーが休むのに合わせてトゥワも休むことにした。まだ課題も出ていないので、時間に余裕がある。