初授業(2)
「さて、ここからがようやく大学レベルの本題だ。それでは、魔石はどこから来たのか、という話だ。この星の中心部には非常に高温、高圧の核がある。そこには魔石が液体となって存在している。これを融魔という。これが地表面に行くまでに徐々に冷やされて固まったものが魔石というわけだ。」
フーフは説明しながら空中に魔法でモデルを示した。
「これが光によって分解され、魔素となるという話は既にした通りだ。そして、魔素もまた、光に長時間当たると更に分解されて消え失せる。だからこそ地上においても日照時間の違いによって魔素の濃度に差が出るわけだ。日光が苦手な種族がいるのも、魔素が光に弱いことに関連している。日照時間の短い場所には分解されずに溜まった魔素が存在するため、魔力の高い生き物が生息している。その最たる例が完全に地下に存在するダンジョンだ。」
トゥワとアミーの所に魔石が回ってきた。黒い箱に入っている。暗くてトゥワには色が判別つかないが、有翼の翼に似ている。違いと言えば結晶が針状になっているかどうかだけだ。
「魔素は魔法の源であると同時に、ほとんどのヒトにとって毒でもある。魔物が生息するような、光のないダンジョンは呼吸することもままならないため、防魔マスクを着けなければならない。ダンジョンも地下に行けば行くほど光が当たらないため、危険度が増す。」
フーフはアリの巣のような図を示した。
「1層や2層には低級の魔物が住んでいる。スライムや食人花などだ。3、4層になると熟練者がパーティーを組んで行くくらいの危険度だ。ワイバーン、巨大蜘蛛、ヒュドラなどが生息している。5、6層には軍が派遣されることもある。上級精霊や火竜がいる。7層へはヒトが行くものじゃない。地竜や半神の類がいるとされている。8層へは行った者がない。勇者が行ったのかもしれないが、公式な記録はない。神々は8層に住まうのだと、半神や上級精霊は言う。9層以降は発見されていない。」
トゥワは改めて自分の功績が信じられなくなって苦笑いした。弱っていたとはいえ、地竜を一人で相手したのだ。やはり、帝国の皇子が直々に出てくるだけの危険人物ではあるのだろう。
「諸君も一月後にはパーティーを組んでダンジョンに行くことになる。1層までとはいえ、魔物と戦うことになるのだ。しっかり授業を聞かないと魔物の餌になるだけだからな。」
トゥワが欠伸を噛み殺している横で、アミーが緊張の面持ちになった。
「魔石を回収したら照明をつけるから、周囲に眠っているヒトがいたら起こしなさい。」
その後も講義は延々と続いた。どうやらフーフは初日だからと早く帰らせるタイプではなかったらしい。ようやく授業が終わり、トゥワとアミーは休む間もなく次の教室に向かった。