入学と決闘(2)
「昨夜はどちらに?」
「…少し気分が優れなかったので、リェナさんに介抱してもらっていました。」
「嗚呼、そうですか。」
アミーはそれ以上追求しなかった。トゥワの体調が優れないと言うなら、このまま寝かせておいた方が良いのだろうか。
「もしお邪魔でなければ、もう少しお話をして下さいませんか。あと、私に敬語を使う必要はありませんよ。私は誰に対しても敬語を使うので、お気になさらず。」
「だったら僕は普通に話すよ。ミオネラ王国には行ったことがないんだ。どういう所なの?」
アミーはソファにどかりと座って足を組んだ。
「ただの小島ですよ。弱い者が寄り集まって暮らす国です。自然だけは豊かで平穏な地です。」
アミーは指を鳴らした。
「思い出した。人口の殆どが聖教徒だろう?」
「ええ。私はそれほど熱心ではありませんが。」
「いやあ、尊敬するよ。聖神はかなり厳しい神だという話じゃないか。酒や煙草、争いごとが禁じられているだけでなく、徹底した禁欲と奉仕が求められると聞いた。特に異性関係は厳しく、聖教徒でありながら教会の認めない形で結婚したら重い神罰が下るとか。流石に今はそこまででもないのかな。」
トゥワの暗い瞳から完全に光が消えた。それでも口元だけは笑っている。
「アミーさん、ヒトを裁くのはいつだってヒトです。神ではない。その厳しい戒律は人々を従わせるために、ヒトが裁きの神に求めたものです。聖神は赦しと慈愛の神ですから。」
アミーはこの話はあまりしない方が良さそうだと察して話題を変えた。
「そうだ。時間割は組んだ?きっと風を受講するだろうから、基盤科目しか被らないかもしれないけど。」
「風、精神、錬成を取ろうと思っています。」
アミーは驚きのあまり立ち上がった。
「3つも入れるの?実技だけでなく理論も入れないと単位が出ないよ。」
トゥワは時間割を引っ張り出した。アミーはそれを覗き込んで絶句した。
「いつ眠るの?」
「水曜日と土日に数時間眠って、あとは徹夜します。」
「死んじゃうよ。僕なんか日に16時間は寝ないと駄目だ。」
トゥワはクスクス笑った。
「有翼からすればこのくらいのスケジュール、大変なうちに入りませんよ。短い寿命を聖神に全て捧げて死んでいく種族ですから。」
アミーは自分が有翼に生まれなかったことを感謝した。
「精神は僕も受講するけど、夜間の部だから結局被らないや。僕は夜行性だからさ。」
「それなら、精神は夜間の部で取って、代わりに錬成を昼間の部で取りますよ。」
「良いの?僕は実技最下位だから、一緒に受講したって意味ないけど。」
「構いませんよ。その代わり、理論で分からない所は質問させて下さいね。」
トゥワは朗らかに笑った。アミーはトゥワの人当たりの良さにホッとした。




