【二四】転換じゃなくて、これは性と制服の交換
「スカートのここ、どうするんだ?」
「まって、きちんとシャツ入れろって。そうそうそこしめて、で、そんで最後に肩ヒモな。これでできた」
シイナとカンヂは美術準備室にしのびこみ、制服を交換した。
二人の体格差があまりなかったのでサイズは大丈夫。
シイナがカンヂの服を着る分には問題なかったけど、カンヂがシイナの服を着るのはちょっとした仕事だった。
それもシイナの手をかりてなんとかなった。
「よし、これでいいか?」
「まじかよ。おまえ、けっこう似合ってる!」
「本当か? どれどれ?」
カンヂが自画像用の姿見に自分の姿をうつす。
どう見ても女生徒用の制服を着たただのカンヂだ。
「ふうむ。似合っているのかどうか、まったくわからん」
カンヂは首をかしげ、
「よしこれで表を歩いてみよう。いく先々で感想を聞けばいいだろう」
「ばっ、おま、本気かよ!」
「いくぞシイナ。ぐずぐずするな」
コイツやる気まんまんだあ~。
シイナが絶叫し、カンヂの後を10歩はなれて歩く。
放課後の校舎には、自習や部活、だべっているだけの者などいがいに多くの生徒の姿がある。
カンヂは知りあいを見つけちゃ声かけて、彼らに感想をきいた。
「どうだ? 似合うか? シイナにかりたんだ。シイナより美人か?」
「カ、カンヂ、意味わかんね、コイツ、最悪!」
腹をかかえて悶絶するものや、
「うわわ、どうしたのその格好! なに? 出しもの? えー自分から着たの? ……それはどうかと思うよー?」
本気で頭の心配をするものもいた。
はじめは遠巻きにしていたシイナも調子づいてきて、そのうちカンヂとならんで歩くようになった。
「シイナ、手をつなごう」
「はあ? なに言って、」
「リハビリだ。この格好ならふれるの大丈夫だろ?」
本気かよ。
シイナは少しためらい、それからそっとカンヂの指先を取った。
二人はすこしのあいだ無言で校舎を歩き、それから美術準備室までもどった。
「なあカンヂ、もう少し、リハビリいいか?」
「ああ、かまわない」
手をさしだすカンヂに、シイナは恥らいながら、
「そうじゃなくて、……して、いいか?」
「うん ?なにをするんだ?」
「だから、キス、してもいいか? その格好なら、俺、できる、と思う」
カンヂは目をみはる。
「俺とでいいのか?」
「……やならいーけど」
それからカンヂは長いこと考えた。
シイナのために、したほうがいいのかしないほうがいいのか。
シイナはカンヂの返事をだまってまっている。
言ったことを引っこめるつもりはないらしい。
「わかった。しよう」
「ちょっ、ちょっとまってよ、お前のが背え高いんだから、こられたらこわいって!」
「む、そうか? じゃあこれならどうだ?」
カンヂはヒザをついた。
そうすると、頭一つぶんちかくシイナより低くなる。
「おいスカート汚れる!」
「ああ、じゃあ手で持つ」
そうすると、女子の制服きてヒザだちでスカートを前でまとめてにぎった、出会って史上最高にさえないカンヂができあがる。
「……ああ、まあ、これでいいや。じゃあ、目えつむってくれよ」
「ああ」
「いい、いくぞ、」
緊張でシイナの声がうらがえる。
「うん」
ゆっくり、ゆっくり、ぎこちなく唇と唇がちかづいてゆく。
そして、ふれたらすぐにシイナはパッとはなれた。
「いま、したか?」
目をつむったままで確信がもてなかったのでカンヂがたずねると、シイナは奥の壁ぎわで背をむけたままうなずいた。
「そうか、できたか。よかった。よくガマンしたな。えらいぞ」
カンヂがほめたりなだめたりしても、シイナはなにも言わなかった。
すこし心配したが、へそを曲げているのではないようなのでそっとしておいた。
シイナにも、心の整理が必要だろう。
「実吉君! シイナ君!」
そこにとびこんできたのは、滑川セラだ。
大あわてで走ってきたらしい、肩で大きく息してる。
「ほ、本当に制服いれかえてる~~~!」
そして大笑いする。
カンヂとシイナも顔を見あわせ、やっぱり笑った。




