【二一】オンナのシイナ
手術の翌日、シイナから電話があった。
「なんか、スッゲー体重い。動くと痛い。寝るのにも疲れた」
「無理するな。母親はきたか?」
「いんや、きてない」
「連絡は?」
「取ってない。きてほしくないし」
「そうか。ところで何か食いたいものとかあるか? 好きなもの、言っていいぞ。作らせるから」
「んー、そんじゃカレー。それと、ハンバーグ」
「子供だ」
「うっせー子供いうな。なんかそういうのに飢えるわけよ。ビョーイン食まじ味気ねー」
「分かった。カレーにハンバーグだな。まかせろ」
「カレー、あんま辛くしないでくれ」
「本当に子供だな」
「うっせー。子供いうな」
シイナは力なく笑っていた。
だけど術後の回復がおくれて、その夏シイナがカンヂの家をおとずれることはついになかった。
新学期が始まって学校にかようのもタクシーで、本調子でないシイナはいつも辛そうだった。
美術部にでてくることもなく、カンヂとの接点も遠のいた。
都筑イサナもまた受験勉強で足が遠のき、カンヂの部活動はさびしいものとなっていた。
「なんか俺、年内冬休みねーみたい。追試とか補習で」
廊下でばったり会って、シイナは言った。
「ありがたいことじゃないか。教師たちにも感謝しろよ。休みにわざわざきてもらってるんだから」
「勉強させられてありがたいとか、ありえねーし」
オンナになったというが、制服も男子のままで、体育は見学、シイナは一見何も変わってないように見えた。
でもそれはカンヂの思いちがいだった。
三学期に修学旅行があった。京都奈良五日間。
シイナは今度も参加しなかった。
補習を受けていたそうだ。
そして二人は最高学年、三年生になった。
カンヂとシイナはまた同じクラスになった。
一年のときとちがったのは、シイナがこの学年から女生徒の制服を着ていたことだった。




