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カクヨムにて同時に投稿中。そちらの方が数話先行投稿しています。
→https://kakuyomu.jp/works/16816927860273874320
こちらはコピペになりますので,ルビや傍点など崩れてしまっています。
読みやすさや先の話が気になる方は,カクヨムがオススメです
世界中の学術書を保管していると言われる,この学園の図書館はとても大きいが,
前世で何度か利用した地域の図書館とは比べ物にならないだろう。
あの図書館だって,決して小さかったわけではない。
蔵書量だって古今東西の専門書から,娯楽系の読み物まで様々あり
近年ではマンガやCD,DVDの視聴もできて
マットの敷かれた一角には,子供や親子連れで読み聞かせできる一角もあった。
小中学生の頃は,夏休みの読書感想文の題材を探しに,親に連れられたり
自由研究の資料探しに行ったりしたし
高校,大学生になってからは,新しい目のラノベや
好きになった作家のハードカバーを探しに通った時期もあった。
しかし,そんな程度の規模ではない…比べるのが無謀な広さがある。
大きな大きな,それこそ公爵家本邸ぐらいはありそうな家屋のなか,
いくつもある大きな部屋ごとに分類され
高い天井の目一杯まで,背の高い本棚が並ぶ空間は,圧倒されて眩暈がしそうだ。
天井付近の本が欲しい場合はどうするのかとも思ったが,
忘れてはいけない。この世界には『魔法』があることを。
魔術や魔道具でいくらでも対応可能なのだ。あー便利
しかし,司書や案内の道具に頼って探せるのはあくまで本だけなので
『探し人』は自分で見つけなければならない。
ただでさえ広い図書館の中。
ひしめく本棚で視界も悪ければ,テスト前だけあってどこもかしこも人!!
放課後に訪ねたい,と告げるだけなのに
探すだけで放課後に…いや,翌日になってしまいそうだ。
大変困ったけれど,何事も最初の一歩を踏み出さなければ始まらない!!と意を決し
1年生のテスト範囲で利用しそうな分野の部屋に,片っ端から入ってみる。
勉強中の生徒は邪魔しないよう,
何かの拍子に立ち上がった同級生にヒロインサラのことを聞いて行く。
自分でも探しはするが,時間が押しているので早足で,しかし令嬢らしく優雅に…
かつ!!図書館なので静かに歩くと言うのは,思いのほか,と言うか普通に疲れる。
『いっそ,大声で呼びながら練り歩きたい…』とヤケクソにもなろうものだ。
しないけれどね。できないけどね!!
一応,優等生で大人しい公爵令嬢してますから。
こんな時に前世のスマホがあれば手っ取り早いのに。
別段,友人でなくとも『クラスの仲間』とか薄ら寒いSNSグループで声かけたり
とりあえずで繋がってたりとかしてただろうから。
この世界でも遠方と連絡を取り合う手段はあるけれど
前世の電話やメール,チャット形式の交流ほどに手軽で気安いものではない。
リアルタイムでやりとりできるのは,対になっている魔道具だけで
番号で識別して誰にでも連絡できる,電話…ましてや小型の携帯電話の類はない。
使い魔や魔道具を使った文通は,一般の鳥類を使ったやりとりよりは早いが
遠方になればそれだけ時間がかかる。
どんなことも『魔法』で解決して現代に近いか,それ以上に便利な時もあるのに
変なところでこだわりを出してくる…本当に厄介な世界観だ。
地道な聞き込みと,そこからのクチコミのおかげか
『もう,午後の授業直前あたりに声かければ確実じゃね?』と
心が折れかけていた,3部屋目に向かう途中でヒロインサラの方から声をかけてくれた。
『ストロベリーブロンドの可愛い女子生徒』
『新入生なのにこの時期から上級制服の可愛い女の子』はとても目立つ。
学生だけでなく一般にも解放され,利用者の数はとんでもなく多いが
検索条件が限定されているため,意外と目撃情報は集まる。
ただ,行き違って巡り会えないだけ。
さらに,そんな目立つ子を探しているのが『公爵令嬢』と言うのもあるのだろう。
学生らしく年功序列の概念もあるが,根底にあるのは爵位と身分制度。
爵位はゲイルバード公爵父のものだけどね。
とにかく,昼休みが終わる前に巡り会えたのは僥倖だったけれど
振り向き,顔を見た瞬間に予鈴が鳴り響いた。
まぁ,同じクラスだし教室に向かいながら
『放課後尋ねたい』と伺うことはできたから問題はないけれど。
要件のみだと流石に教室まで無言になってしまい気まずいので
当たり障りのない話をしながら,連れ立って歩いていく
その合間もヒロインサラは明後日の方を向いたり意識が外れたりしている。
おそらくは,ヒロインサラ意外には見えないナビキャラと会話しているのだろう。
『見えない何か』と会話する人間は実際目の当たりにすると,
普通に失礼な人にしか見えない。
ゲーム中は特に何も思わなかったけれど,
実際に目の前でされると感じ方も変わるものだ。
急に,会話している相手とは反対側を向いたり,
上の空で歩いたり,話しかけても返事しなかったり…。
ゲーム知識のあるわたしは良いけど,
何も知らない人間には不愉快でしかない態度だ。
放課後に近況を聞くときに,それとなく注意もしておこう,とここまで考えて
自分が,当初から思っていた以上に関わることになりそうで,
今からでも引き返したい気持ちでいっぱいになる。
臆病で保守的…と言うか,
『どこかの誰かがなんとかしてはくらないだろうか』
『わたしはわたしで手一杯だから』
と,嫌な感じの事なかれ主義が顔を出してくる。
そうしたいのは山々だけど,この世界のシナリオを知っているのは
暫定ではわたし1人な今。
下手したらバッドエンドで世界が滅ぶ可能性もある以上,
ヒロインの放置は危険だ。
毒を食わらば皿まで…ドクサラ,ドクサラと自分に言い聞かせ,
中空に向かって独り言を言う不思議ちゃんの横を,令嬢スマイルで歩いた。




