四話
『この日は本当にすごいよね。みんな故郷へ帰るし、おまわりたちも大変だって言ってた』
国民なら知ってて当然の日だが、二人は改めて教師が説明しているのを聞いた。
教科書で建国の日だと習ったのはもっと前だ。
今の先生はよく世間話と絡めて授業を進める先生だったため、二人は話の流れでまた、国慶節のことを聞いていた。
帰宅した二人は夕飯を食べながら、授業の記憶を思い返す。
『そうだな〜。俺も親元にいた頃は、ただお祭り騒ぎを見てたなぁ。父親が「お前のために祝ってるんだよ」なんて適当なこと言うもんだから、しばらく騙されてた』
『ふざけた父ちゃんだな。でも信じるジャンボも純粋すぎない?』
『いや、たまたま俺の誕生日でもあったから。京劇の学校に入ってからは、それはそれで客が増えるし、演目も変わるし、特別な日だったけどな』
サラッと言われた情報に、チョコとバニラは驚いた。
『ジャンボ、10月生まれだったの?』
『ん?まぁ……』
ジャンボは二人から無意識に視線を逸らして、夕飯へ箸を伸ばす。
チョコとバニラはその様子が、わりかし見慣れたものであり「これ以上追及して欲しくない」というサインであることも、もうとっくに知っていた。
だから、二人は今年の誕生日祝いについても、ずいぶん悩んたのだ。
それでも日が近づくごとに「なにかしたい」という気持ちはハッキリとしていった。
帰宅した時に見たジャンボの背中は、その全てを拒絶しているような、そんなふうにも見えていたけれど。
それでも二人は、決断を変えなかった。