戴冠式
6月25日。新しくエルトリア王が戴冠式を行うというので、サラマンダーマシロは白狼でポジョニ(プレスブルク 現ブラティスラバ)へ飛んだ。
ひっくり返った寝台型の中庭にきらびやかに着飾った貴族と市民たちが王の聖マルチン大聖堂前で集合している。
「白狼だ!」
「小さくてかわいいなぁ」
貴族たちはマシロの背を触っていた。
「ここにもコーヒー店を出してくださいよ」
「ちょっと経費がなぁ……」
「そうですか。また寄らせてもらいます」
貴族たちは本格トルココーヒーを飲むために、ブダまで来ていたのだ。
店は少し拡張して2人の息子に任せている。
城内から白銀のドレスをまとったうら若き美女が青毛馬に乗っている。
広場の坂場で馬の後ろ足だけで姿勢を保て、サーベルを天へ掲げた。
「女王万歳!」
「我らが国王万歳!」
新たなエルトリア女王に貴族たちは揃って喝采した。
マシロは祝宴の儀式も眺めた。
女王は重い王冠を頭から取り外し、そばのテーブルクロス上に置いた。
彼女のブロンドの髪がぱらりと肩に垂れた。
女王はすぐに騎士たちとお喋りをして笑い興じていた。
エルトリア貴族たちはこらえきれず微笑していた。